4話 (こいつっ……直接脳内に……っ)


 4話 (こいつっ……直接脳内に……っ)


「――ん?」


 ふいに、直観としか言えない『胸騒ぎ』がセンの脳裏を走った。


「……なんだ……なにかが……」


 心がザワザワする。

 重たい『不安』が全身を包み込む。


 急に足を止めたセンを不審に思う美少女たち。

 ――ゾーヤが、


「陛下、いかがいたしました?」


「……なにかが来る……たぶん……知らんけど……たぶん……」


 胸のザワザワが秒を飲み込んで加速していく。

 頭がおかしくなりそうなほどの不安の中で、

 センは、ついに、その正体を知る。




『――目を閉じろ』




 脳内に、声が響いた。

 ヨグシャドーではない。


 キンと響く声だった。

 美声ではあるのだが、

 脳の中で反響してキンキンと刺さる。


(……誰だ? なんだ?)


 心の中で疑問符をさらけ出していると、

 隣にいるゾーヤが、


「へ、陛下……頭の中に、誰かの声が……」


 ゾーヤだけではなく、

 K5の面々も同様のようで、

 みな、同時に、『キンキン声が響く頭』を抱えて、顔をゆがませている。


 その様子を尻目に、センは、


(……ここにいる全員の脳内にテレパシー……シャレたことをするじゃねぇか……なんの意味があるのか知らんが)


 などと心の中で思いつつ、目を閉じてみると、




(……おぉ、『いる』ねぇ……目を閉じると、そこに……)




 まぶたの裏に、

 『声の主』は存在していた。


 まぶたの裏にひっついているわけではなく、

 『目を閉じた時だけ見えるようになる美女』が、目の前に立っている感じ。


 裸の上に、深緑のロングコートだけを羽織った長身の美女。

 コウモリの翼と爆乳が特徴的な公然わいせつ物。


 センは、そこで、

 目を閉じたまま、他のメンバーに確認をとってみる。


「目を閉じたら変態みたいな女が見えるのって俺だけ?」


 その問いに、ゾーヤが、いち早く、


「陛下。私の目にも、イカれた露出狂の姿が見えております」


 どうやら、トコたちにも見えているようで、

 全員が警戒心マックスで現状と向き合っている。


 センが『お前は誰だ?』と問おうとする直前で、

 その変態みたいな女は、彼・彼女らのまぶたの裏で、口を開いた。




『まだ目を閉じていない愚か者がいるな。私の命令に背くとは無礼千万』




 そう言いながら、

 変態みたいな女は、強めに、指をパチンッと鳴らした。


 しかし、特に、何かが起こったわけではない。


「……ん? どういうこと? え、誰か、目を開けてた?」


 その質問に対し、イエスで応える者は存在しなかった。

 ここにいる者は、みな、キチンと目を閉じて、

 変態みたいな女と向き合っていたから。


「……え? どういうこと?」


 センが困惑していると、

 ゾーヤのスマホが鳴り響いた。


 センの許可を得た上で、ゾーヤがスマホに出ると、




「なんだ? え? ぁ、ああ……え……全員……? それはどういう……せ……世界中……だと……このイカれた状況が全世界に広がっているというのか? ま、間違いないのか? わ……わかった。陛下には私から知らせる」




 そう言って通話を終了させたゾーヤは、センに、


「陛下。部下の話によりますと……どうやら、現状、世界中に存在するすべての人間が、この露出狂の声と姿を認識できている様子です」


「おぉ……マジすか」

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