73話 バトルメイド。

 73話 バトルメイド。


「え、だれ? どちら様の集団?」


「300人委員会から派遣されたバトルメイドたちや。この人ら、全員、武道の達人。携帯ドラゴンなしやったら、あたしが10人おっても、この中の一人にかすり傷を負わすことすら難しい」



「……すげぇな。戦うメイドさんって実在するんだ……」



「S級のGOOすら瞬殺してしまったあんたの手にかかれば、この人らを皆殺しにするんもワケないかもしれんけど、彼女らは『死んでも、閃壱番をここから逃がすな』という命令を受けとる。つまり、あんたは、ここから脱出しようと思うと、罪のない彼女たちを皆殺しにせなアカンというわけや」


「……エッジの効き方がハンパねぇな。さすが、金持ちは、やることが違う」


「バトルメイドをナメたらあかんで。手を抜いて制圧できるほど甘い存在やない。かといって、本気を出したら、殺してしまうかも」


「……わかってないな、薬宮。俺クラスになると、どんな達人が相手だろうと『コンマ数秒の鮮やかな首トーン』で、後遺症なく気絶させることが可能」


 そんなことは『やったことがない』ので、

 実際に、『完璧な首トーン』が出来るかどうかは不明だが、

 相手のペースに巻き込まれないためには、

 ハッタリをかましていくことも重要――

 そう判断したセンは、続けて、


「俺の手刀(しゅとう)には、神が宿っている。このセンエースさんが相手ともなると、『命を盾にした脅し』すら無意味ということ。誰一人、俺の孤高を阻害することは出来ない。それが世界の摂理」


「なるほど。となると『あんたが、ここから逃げるだけ』なら、そう難しくないかもな。けど、そうなったところで、彼女らのミッションは終わらん。彼女らは、『あんたに殺される』まで、あんたを追い続ける。……さあ、どうする、閃壱番。それでも、ここから逃げようとするか、それとも、もう少し、あたしとおしゃべりするか」


「……」


「後者を選ぶんやったら、あたしお手製の紅茶とお菓子を出してあげよう」


 そう言いながら、指をパチンと鳴らすと、

 さらに、もう一人のメイドさんが、中に入ってきた。

 両手に持っている高価そうなトレイの上には、

 極上のティーセット。


「あたしの手作りとか、これは、普通の男子やったら卒倒もんやで」


「……まあ、異論はねぇよ」


 などと会話している間、

 そのメイドさんは、

 テーブルの上にお茶とお菓子を配置していく。


 トコは、テーブルにつきつつ、


「望むんやったら、『あーん』的なこともしたるで。どうする?」


「非常に魅力的な提案だが、おそれおおいし、人前でやるこっちゃないし、なにより、柄じゃないんで遠慮しておく」


「あらためて思うけど、あんた、多角的にめんどくさいなぁ。もっとチョロくあってくれや。普通、あたしぐらいカワイイ子が、『あーん』してあげる言うたら、『わーい』って両手を挙げて『喜んで、一生、ヒーローやりまーす』って永久英雄宣言をするもんやろ」

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