28話 備えあれば憂いなし。


 28話 備えあれば憂いなし。


「オイちゃんの強さは、そこらのカスとは次元が違いまちゅ。まあ、とはいえ、センたんと比べたら、オイちゃんの強さなんて、ゴミみたいなものでちゅけどねぇ。センたんは、あまりにも強すぎまちゅ」


「もしかして、サヴァーテとの闘いを見ていた?」


「もちろん、見てまちたよ。ボスフロアのカメラをハックして、一から十まで、もれなくすべて」


「……なんでもありだな、お前」


「一つ聞きたいんでちゅけど、いいでちゅか?」


「別に確認はいらねぇ。好きに聞けよ。答えるかどうかは知らんけど。質問するだけなら、個々の自由さ」


「……あなたは何者なんでちゅか? やっぱり、神様でちゅか?」


「神様の力は持っているが、神様ではねぇよ。俺は、アウターゴッドを重ね着している。だから、尋常じゃない力を出せる。しかし、それだけだ。神そのものではない」


「……なに言っているか、よく分かりまちぇんねぇ」


「分かるように言っていないからな。お前の理解を求めちゃいない。それよりも、次は俺の質問に答えてもらおうか」


 そう言ってから、ノドを整えて、


「お前こそ、何者だ? これまで、あまたの天才たちが挑み、しかし、誰もクリアできなかった地下七階を、たった一人でクリアできた超人……といのは理解できたが、そこから先に踏み込んだ話を、ぜひ聞かせてもらいたい。お前は、いったい、どういう人間だ? はじめて会った時から、おかしなヤツだとは思っていたが、ここまで異常となると、さすがに看過はでいない。サヴァーテは、俺からすればザコだが、銃崎たちの実力から考えると、普通に強敵。その強敵を一人で突破したお前は、明らかに逸脱者」


「オイちゃんが何者かなんか、どうでもいいことでちゅ。そんなことよりも、センたんが何者なのか、という点の方がはるかに大事でちゅね」


 そう言いながら、

 終理は、自身の隣に設置されているロボットに乗り込んで、

 即座に起動させた。



「本能のノイズ、カオスの螺旋。私は背負う。黄泉(よみ)の門より超えて咎(とが)を。無限の罪を。さあ、詠おう。詠おうじゃないか。いつか、必ず、万物のカルマは、黄金と天光に満ちた裁きを超えてゆく。たゆたう一瞬を飾りし刹那の杯を献じながら。――私は、酒神終理。輝く光を背負い舞う一閃」


 音声入力の直後、

 ティンタンタンターンと、間抜けな音がして、

 オペレーティングシステムが起動する。


『SSPSからエネルギーを受信中……変換中……アクチュエーター起動。オルタネーター回転中。コンデンサー、電荷上昇。駆動ロック解除。マニューバー、オープン。素体融合スタート。神経接続開始』


 無機質なガイド音声が淡々と現状を羅列した直後、


『ミスターZ、出撃準備完了。母上、いつでもどうぞ』


「――もしかしたら、使うかなぁ、と思って準備しておいて正解でちた。備えあれば憂いなし、でちゅね」


 動き出した究極兵器『ミスターZ』は、背中に背負っている銃身が十メートル以上ある巨大なエネルギーライフルを構え、その銃口を、センに向けた。

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