85話 ついに、動けなくなる。


 85話 ついに、動けなくなる。


(露骨というか、ムチャクチャというか……なりふり構ってねぇな……)


 凶器の仕様・金的・目つぶし以外は何でもありの純粋な殴り合い。

 参加自由。

 優勝者には『紅院グループ』に属する『すべての会社』への逆指名権が与えられる。


(お好きな大企業に就職できるプラチナチケットの入手……まともに人生設計を立てているやつの視点では垂涎ものだな……)


 などと心の中でつぶやきつつ、

 センは、


(これまでの流れから推察するに……このクソダルイベントに参加しないと、また、終末エンドに突入する……そんな気がする……)


 フラグの性質を演算する。


 このふざけたクソゲーについて、

 少しだけ慣れてきたセンがいる。


(……ただ、避難訓練の日を乗り越えたらクリア……という可能性も微レ存……フラグ状況を確認するという理由もある……)


 諸々考えた末に、

 センは、『静観する』という選択肢をとった。


 朝の段階で、エントリーは締め切られ、

 10時から、大会は、はじまった。


 現在、この学校には、武道経験者が多数在籍しており、

 その大半が出場していたため、

 総合格闘技大会は大いに盛り上がった。


 その様子を、『観測者の視点』で眺めていたセンは、


(……めちゃめちゃ盛り上がっているな……)


 時空ヶ丘学園は、数千の生徒を抱えるマンモス高校。

 現在、その大半が、格闘技大会に注目しており、

 トーナメントが進むたび、

 勝利者には、毎回、惜しみない称賛が送られている。


 出場者の中には、『イケメン(金持ち)』も多いため、

 黄色い歓声もあちこちで上がっていた。


(もし、この大会に出場して優勝することがフラグだった場合……)


 最悪の未来を想像して、

 センは吐きそうになった。


(……仮に世界が救われても、俺の人生は終わる気がする……)


 などと、くだらないことを心の中でつぶやいている間に、

 大会は、『佐田倉の優勝』で幕を閉じた。


 ちなみに、出場者の中で、

 『佐田倉が最も強いか』というと、

 別段、そうでもないのだが、組み合わせの妙で、

 結果的に、佐田倉が最後まで勝ち残った。


(……大会が終わった……もし、この大会に出場することがフラグだった場合、ここまでのアレコレを鑑みるに……そろそろ……)


 などと予測をたてつつ、

 閉会式を眺めていると、

 そこで、

 スピーカーから、ブブっと音がして、






『――舞い踊れ。真・幻爆の剣翼――』






 そのコンマ数秒後、

 爆発音があちこちで響きだす。




(…………やっぱり……か……)




 センは、身じろぎ一つせず、

 目を閉じて、音がやむのを待った。


 数秒、耳をつんざく悲鳴がこだましたが、

 5秒ほどで、人の声は鳴りやんだ。


 ゆっくりと目を開けたセンの視界には、

 首から上がない無数の死体。



「……ふぅ……」



 壊れそうになる意識を、

 鋼の精神力で、どうにか押さえつけて、


「さて……銀のカギを探すか……」


 予備は腐るほどあるが、

 しかし、『何もしていない状態』でいると、

 心が砕けてしまう気がしたので、


 センは、いったん、思考を放棄して、

 無心で銀のカギを探しまくった。


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