35話 さらなる道程。


 35話 さらなる道程。




 ――そして、また、センは、初日の朝に戻る。




「バギー、こい」


 そう命令するが、

 センの仮携帯ドラゴン『バギー』は召喚されない。


「……引き継がれていない……」


 ボソっとそうつぶやいたセンに、

 ヨグシャドーが、


(バギーのエネルギーは、女どもの憎悪。それがなければ形にはならない)


「……わかっちゃいたけど……また、同じように、悪人ムーブをかましていくのか……しんどぉ……」


 そう言いながら、銀の鍵や神格たちの様子を確認し、


「……ほかは、すべて問題なく引き継がれているな……よし、じゃあ、気合を入れていこうか……」


 確認作業を終えると、

 すぐに、センは、行動を開始する。


「さあ、今回も、とことん、嫌われていこうか」



 ★



 そこから、センは、繰り返した。

 彼女たちから嫌われながら、

 『どんどん強くなる神格たち』を殺し続け、

 『バギーを強化し続ける』という流れを、

 延々に、繰り返し続ける。


 その様子を、『ここではないどこか』で見守っているマザコン熾天使が、

 ボソっと、


「素朴な疑問なんだが……なんで、あいつ、頭がおかしくならねぇんだ?」


 心からの疑問を口にした。


 隣にいる『厨二の聖なる死神』が、


「この世界で、本物の主人公であり続けるためには、少なくとも、地獄で舞い続ける素養が必要不可欠ってことなんじゃない? ほんと、降りてよかったぁ……心の底から、本気でそう思うよ。まあ、自分で降りたいんじゃなく、引きずり降ろされただけなんだけど、最前線から退くことができて、ガチに良かったと、魂の奥から思う」


 その言葉に、煽り厨の寿司殺神が首をたてにふりながら、


「大いに同意する。アレと同じことは、絶対にできない。正直、もう、俺は、ヒーローになりたいとは微塵も思っていない。ヒーローは、あまりにも辛すぎる。俺はもう、サポート要員でいい」


 それは、この三人だけの意見ではなく、

 ほかにも存在する数多の『元主人公』たちも、

 同じく、首を縦にふって同調していた。


 マザコン熾天使が、ボソっと、


「これほどまでの地獄を積んで……けど、まだ、あいつが立っている場所は『ほとんどスタート時点』だってんだから……この世界の運命は、本当に狂っていやがる……」




 ★




 ――全部で10000年が経過した。

 ループ回数は驚異の50万回以上。


 およそ『7000年間』もの間、

 ひたすらに、嫌われる行動をとり続けた結果、

 『紅院たちの中心』には『センエースに対する憎悪と嫌悪』が積み重なり、

 その結果として、


「……バギー、こい……」


 初日の朝、目覚めた直後でも、


「……きゅ」


 召喚することができるようになった。

 バギーは、相変わらず、ふてくされたような顔で、

 まったく、センになついていないが、しかし、セン的にはなんの問題もなかった。


 そこで、ヨグシャドーが、


(やっと、初日の朝から召喚できるようになったか……いやぁ、正直、まさか、ここまでかかるとは思っていなかった……あの女どもの、貴様に対する情の深さがうかがえたな)


「ああ、でも、今では、ちょっと話しかけるだけでも、ゴキブリを見るような目を向けられるようになった。いやぁ、成長したなぁ」


 などと、壊れたことを、壊れた顔でつぶやくセンエース。

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