74話 茶柱ATM。

 74話 茶柱ATM。


「球を打ってんじゃなく、心というガラスを割ってんだよなぁ……」


 などといいながら、センは、婚姻届けに書かれている内容を読み込んでいく。


「……『婚姻後の苗字』に関しても、しっかりと『妻の氏』のところにチェックが入っているのがリアルすぎる。仮に、お前と結婚したら、確実に、俺の苗字がかわるからな。……てか、これが受理されたら、俺の名前『茶柱ATM』になっちゃうんだな……おぉ、すげぇ名前……俺の要素が完全に消えた……ギリギリ、『A』が、エースとも呼べるが……うーむ……」


「ねぇ、ねぇ、アトムくん。子供は何人ほしい? ツミカさんはねぇ、一人もいらなぁい。小さなガキが家を走り回っているところか、想像するだけで、ゾっとするにゃぁ。あ、ちなみに、新居は『億ション』以外イヤだにゃ。バーカウンターとプールも必須だにゃ。もちろん、ペットは、ホワイトのサーベルタイガーでぇ……あ、あと、ツミカさんが議員になった時、動きやすいよう、アトムくんには、東大を首席で卒業して、事務次官になってもらうからねぇ」


「……発言のすべてが、どれも、ケタ違いにヤバ過ぎてゲロを吐きそうだが……とりあえず、まずは、アトム呼ばわりをやめようか。ここにそんなヤツはいねぇ」


 などと、どうでもいい会話をしていると、

 そこで、黒木が、



「あ、見つかりましたよ」



 と、アイテム発見の報告をしてくる。


「宝箱タイプで、カギはなし。ワナは……開けてみないと分かりませんね」


 特に、何の変哲もない廊下のど真ん中に、

 ポツンと置かれている宝箱が一つ。


 それを見つけたセンは、


「……え、ウソだろ? アイテムってこんな感じで見つけるもん? ていうか、こんな堂々と置かれている宝箱を、これまでスルーしていたのか? ヤベェな、おい。お前らの『節穴レベル』は余裕で『カンストしている』と言わざるをえない」


「さすがに、これを今まで見逃していた、という事はありえませんよ。――どうやら、アイテムは、ランダム生成されるみたいなのですよ。まあ、『されるっぽい』というだけで、実際にランダム生成されているかどうかは分かりませんが」


「……ランダム生成ねぇ……なんだよ、その謎のローグ感……」


「めちゃくちゃ巧妙に隠されているアイテムというのもありますよ。そっちの方が、大概、レア度は高いですね。もちろん、ランダム生成されるアイテムの中にも、たまに、レア度が高いものが見つかりますが。あと、たまに、ダンジョンへと続くゲートが見つかることもあります。ダンジョンの奥に隠されているアイテムは、ほぼ例外なく高レアアイテムなので、出来るだけ攻略したいところですが、殺意の高いワナが満遍なく配置されていることがほとんどなので、かなりの覚悟が必要です」


「……ふむ……なるほど。アイテム探索はそんな感じか……だいたい見えてきたな……」


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