81話 鬼の首を振り回す神の王。

 81話 鬼の首を振り回す神の王。


「お前らにこそ、人の心があるのか、と尋ねたいところだね」


「……」


「つぅかさぁ……『安全圏から口だけ出して一般人を非難する』ようなヒマがあるなら、あんたが神話生物と戦えばいいじゃん。『ゴリゴリに弱そうな俺』よりも、『明らかに強そうなあんた』が戦場に立った方が、よっぽど合理的だと思うんだが? 俺の考えは間違っているのかね?」


「……私には携帯ドラゴンの召喚適正がない」


「俺もですけどぉおお?!」


 鬼の首をとったような顔で、

 センは、


「このセンエースさんにも、携帯ドラゴンの召喚適正はないのですがぁ?! その辺は、いかがお考えですかぁ?! もしもーし?! 聞こえてますか、もしもぉぉぉし!!」


 ウザさ抜群で煽っていくストロングスタイル。

 そんなセンの言動に、

 シッカリとイラついた一那は、

 そこで、トコに視線を向けて、


「トコ、このクソガキは使い物にならない。心技体、すべてが脆弱。何より、魂が腐っている。あなたが、なぜ、これに固執しているか知らないが、あなたの監督者の一人として、正式に警告させてもらう。これを相手にするのはもうやめろ」


「カズナさん、心と体と魂はどうか知らんけど、センの技は本物や。それは、この目で見たから間違いない。この男は、『神代(かみよ)の力を持つバケモノ』を実際に投げ飛ばしてみせた」


「信じられない。というより、ありえない。この男に、そんなマネが出来るとは、到底思えない。このカスは、間違いなく、私よりも弱い」


 その発言に対し、

 センが、


「俺もそう思う」


 と、追従して頷く。


 カズナは続けて、


「やる気のない弱者に、あなたの貴重な時間を割くのは人類の損失。薬宮トコ……この際、ハッキリ言わせてもらうけど、あなたには、『携帯ドラゴンに選ばれている』という自覚がたりない。『自分の価値』を、よく考えなさい」


「いや、せやからな、センは……」


 と、どうにか説得しようとするが、

 しかし、カズナは、

 トコの言葉をシカトして、

 ガチャと、ドアを開けて、


「閃壱番。出ていきなさい。あなたのような『覚悟なき者』に用はない」


 自ら道をあけてみせる。


 センは『これ幸い』とばかりに、


「あ、そうすか。あざっす。では、お言葉に甘えて、失礼させてもら――」


 と、出ていこうとするのだが、

 しかし、

 トコが、


「カズナぁぁ!!」


 バチギレの怒声をあげて、


「あんたがどう思おうが、そんなもん、知ったこっちゃないけどなぁああ! 勝手に任務を放棄すなぁあ! あんたは確かに、あたしの『監督者』やけど、今は、『あたしが主任の正式なミッション中』やろがぁああ! ナメたマネかますな、くそがぁ! ――こうなったら、ダチの姉とか、関係ないぞ! ガキや思うて、なめんなよ、ぼけぇええ!」


 バッキバキの怒りオーラを放つトコに、

 しかし、カズナは、シレっとした顔で、


「勘違いするな、トコ。私が、今回のミッションを受けたのは、自分の目で『閃壱番』を確認したかったから。それ以外の理由はない。だから、意味のない命令に従う気はない」

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