34話 図虚空。
34話 図虚空。
「根拠は皆無だから、自信には繋がらねぇ」
「……」
「ちなみに、言っておくと、俺は、このナイフに関して、何一つ、理解してねぇ。『茶柱祐樹と合体した』みたいな感じになった部分に対しても、実際のところは、一ミリも理解してねぇ」
ウムルが話しかけてきたので、
流れのままにスルーしたが、
正直なところ、
『茶柱祐樹が、ナイフに溶けていった件』に関して、
センは、理由も理屈も、一つとして理解していない。
「変な雰囲気がしているカッケェデザインのナイフ……以上が、このナイフに対する俺の所見の全てだ。あと、これを握っていると、なんか、すげぇしんどいってことが、理解できている特徴の一つかな。茶柱祐樹と合体する前から、すでにしんどかったんだが、あいつが入ってきてから、さらに一段階、しんどくなった。もう、ずっと、悪寒と吐き気がするんだよ。頭痛もしているし、なんか、喉が痛いし」
「ふむ……フェイクオーラの質が高すぎて、パッと見だと『異質なアリア・ギアスが込められている』という事以外、よくわからないな……どれ、かしてみろ」
「あ、体験してみる? はい」
そう言いながら、刃の部分を掴んで、
ナイフの柄をウムルに差し出すセン。
「……私から提案しておいてなんだが……よく、簡単に差し出せるな」
「このナイフは、すでに、俺と一つになっている。手から離れても、『戻れ』って思うだけでも戻ってくれるよ。ほら」
そう言いながら、センは、ナイフをその辺に放り投げる。
雑に放り投げられたナイフは、
地面にぶつかって、ザーっと、少し地を滑る。
「図虚空(とこくう)……戻れ」
センが、そう命じると、
地に落ちたナイフは。スゥっと、溶けるように消えた。
そして、気づけば、
地に落ちたナイフ――『図虚空』は、
センの手の中に納まっていた。
「ほらね」
「……なるほど。ちなみに、その『図虚空』というのは、そのナイフの名前か?」
「ああ」
「貴様がつけたのか?」
「いや……つけたっていうか……このナイフが、そう呼んでくれって言ってきたから」
「……ふむ。なるほど」
「え、理解できたの? 自分で言っておいてなんだけど、今の俺のセリフは、かなりの電波宣言だったと思うんだけど?」
「インテリジェンスアイテムなど、さして珍しくもない。高次のアリア・ギアスが込められている場合は特にな」
「あの、一つ聞いていい? さっきから言っている、そのアリア・ギアスってのは何? おそらくは、『卍』と同じような『流行語』だとは思うんだけど? 俺、トレンドにはうとくてさ」
「気にするな。ただの言葉さ」
「……いや、それは分かっている、というか、それを言ったら、全部そうというか……」
そんなセンの反論をシカトして、
ウムルは、センが差し出すナイフを受け取った。
その瞬間、
「うぼっおぇっ!!」
真っ青な顔になり、
慌ててナイフを放り投げる。
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