・エピローグ4 『ハーレムエンド』

 ・エピローグ4 『ハーレムエンド』


「うそみたいだろ? これでも、お前らと同じ人間なんだぜ?」


 そこで、茶柱が、


「というわけで、センセーには、ツミカさんの配偶者になってもらうことが、衆参両院に可決され、見事成立と相成りましたぁ。おめでとうございまぁす。ぱちぱちぃ」


 などと切り込んできたことに対し、

 トコが、


「あんただけやないやろ。あたしと、ミレーも同じ立場や」


 などと、補足を入れたことに対し、

 センが、心底困惑した顔で、


「え、いや……薬宮さん、違うでしょ。そのツッコミは間違っているでしょ? 『茶柱の発言の根幹・全体』に対して『そんなわけあるかい!』って『キツめの修正』を入れていくべきでしょ? 間違っても、『追加でボケを仕込んでいくタイミング』じゃなかったでしょ? 茶柱の粗悪な『大ボケ』を華麗な『中ボケ』で補助していくのは、あなたの役回りじゃないでしょ? ね? ね? ダメだよ、間違えちゃ。めっ」


 そこで、紅院が、


「一応言っておくと、私たちとあなたの『婚姻』は世界が認めた決定事項。あなたと私たちの婚姻が『果たされない』というのは、重大な国際法違反になってしまうから、そのつもりで」


「国際法?! え、どういうプロセスでその結論が導き出された?! 機序が一ミリも理解できんのだが?!」


 そこで、茶柱が、


「あーあ、やだなー、センセーと結婚とかやだなぁー、でも法に反するのはダメだからにゃぁ。ツミカさんは法律を遵守しないと死んじゃう病気だから、こればっかりは、仕方がないにゃぁ」


「無意味にご近所を爆破して、警察と消防に迷惑をかけ散らかしたクソテロリストが、なにをぬかす!」


 明確に怒りを口にした上で、

 センは、『心のオアシス(黒木)』に視線を向けて、


「おい、常識人! お前からも、何か言ってやってくれ! 『お前ら、ヤバいぞ』って! 『イっちゃってるぞ』って!」


「何度か言いましたが、聞く耳を持ってくれません」


「諦めるなよぉお! 諦めたら、そこで試合終了だって、昔の偉い人も言っていただろう!」


「諦観だけが人生なんじゃないんですか?」


「俺の言葉なんざ、基本的に、バグってんだから、シカトしておけばいいんよぉ!」


「……正直、お似合いだと思いますよ。あなたのその壊れ方は、彼女たちのヤバさと、良い感じに釣り合っていると思います」



「お、俺、壊れてないよ……普通だよ……どこにでもいる平均的男子高校生ですよ」



「もし、本当に、あなたの資質が世界の平均なら、ミレーさんたちにも、選択の幅が広がって、おたがいウィンウィンなのでしょうけど……残念ながら、あなたは『唯一無二』なので――」


 と、そこで、センは、

 黒木の話が終わるのを待たず、


「ねぇ、ちょっと待って! 流れがクソ!」


 普通に青い顔になって、

 両手で頭をかきむしりながら、


「あまりにも、流れが悪すぎる。これ、もしかして、マジのテンション? ちょっとした小ボケじゃない空気感がすごいんだけど……え、ガチの流れ? ウソだろ? ちょっと、そろそろ、誰か、さすがに『なわけねぇだろ』ってツッコんでよ。テレビカメラとか入ってきてくれよ! テッテレーっていう例の音楽を鳴り響かせろよ!!」


 世界に向かって慟哭を突き付けるものの、

 しかし、世界は、彼に対してあまりにも無慈悲だった。


 静かな空気が数秒だけ流れたのち、

 トコが、


「で? 式の日取りはいつがええ?」


「300人委員会が全面的にバックアップしてくれるそうだから、時期・規模・内容、すべて自由自在よ」


「ツミカさんは、十二単(じゅうにひとえ)とマーメイドラインを合体させたような特殊ウェディングドレスがいいにゃぁ」


「また難しい注文やなぁ。けど、まあ、ちゃんと頼めば、どうとでもなるやろうな」


 などと、

 『きらびやかなガールズトーク』に花を咲かせる彼女たちのトイメンで、

 新郎は、心労極まった表情で、うつむき、頭を抱え、


「目覚めてくれ、俺……たのむ……『はっ……全部夢か』って言わせてくれ……たのむ、たのむぅ……」


 センエースの願いを、世界は拒絶する。

 誰も、センエースを救わない。

 センエースの未来は確定した。


 全ては自業自得。

 行動には結果が伴う。

 運命から逃れることは出来ない。



 ハーレムエンド、乙。



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