108話 最後と始まり。


 108話 最後と始まり。


「頼むから、死んでくれぇええ!」


 マザコン熾天使の願いがまたたく。

 すべての主人公たちが未来を望みながら、

 128体のヨグをロックオンする。


 そして、放たれる。

 異次元の咆哮。


「「「「「「「~「「「「「「「「「「異次元砲ぉおおおおおおおお!!!」」」」」」」~」」」」」」」」」」


 光で空間が埋め尽くされる。

 乱反射して目がイカれそう。

 地獄の熱量が八方で交錯。


 いつしか、

 そんな光も、世界に溶けていく。

 すべての熱量が空間と調和された時、

 そこには、

 たった一人の、

 死にかけた虹色が転がっていた。


「……ごほっ……」


 血を吐き出して、天を仰ぎ、


「……強くなったな……」


 一言だけ、そう言い残すと、

 そのまま、スゥっと、世界に溶けていった。


 プライマルメモリ・ヨグ=ソトースの最後を見届けると、


 旧き主人公たちは、全員、その場にへたりこんで、


「しゃあ、おらぁ!」

「勝ったぞ、ぼけ、ごらぁ!」

「正直、勝てると思っていなかった……」


 拳を握りしめ、歓喜の雄叫びをあげた。


 ひとしきり、喜びをわかちあったのちに、

 マザコン熾天使が、


「諦めずに挑戦し続けた甲斐があったな……『最初のころ』は、永遠に無理だろうと思っていたが……」


 ボソっと、涙がにじむ声で、そう言った。

 感極まって、鼻声になっている。


 そんなマザコン熾天使に、

 厨二の聖なる死神が、


「いや、ほんと、全員、よくやったと思う。どいつもこいつも、頭おかしい努力家だ。お前らみんなおかしい。全員、とんだ変態」


 その発言に、

 煽り厨の寿司殺神が、


「センエースの軌跡を魅せつけられてきたから、頑張れた……センエースという道標がなければ、絶対に不可能だったと思う」


 と、素直な感想を口にした。


 ここにいる者は、全員、特殊な性格をしたプライドの塊なので、

 普段ではありえないことなのだが、今だけは、

 お互いの健闘を、素直にたたえ合っている。


 ――そんな中で、厨二の聖なる死神が、ボソっと、


「プライマルメモリ・ヨグの討伐は、間違いなく、歴史的快挙の大偉業だけどさぁ……センにとっては、地獄の門をこじあけた感じになるよね?」


 その問いかけに、マザコン熾天使がこたえる。


「もちろん、そうだ。これで、また、センは苦しむことになる。これまでよりもはるかにしんどい地獄を積み重ねることになる。だが、これで、未来に可能性が残った」


「本当に残ったのかなぁ? 『やっぱり、どうにもなりませんでした』みたいな結果になったりしないかな?」


「そうなる可能性だって、もちろんあるだろう。何もかも、すべてが、結局のところは無意味なあがきで、最後には、全部、脆いアワみたいにはじけとぶ……その可能性は、いつだってある。というか、その方が可能性としては高い。けど」


 そこで、マザコン熾天使は、ここではない、どこかもっと遠くを見つめて、


「センエースは、信じるに値する道標だと俺は思う。少なくとも、俺達は、あいつの光をたどることで、どうにか、ここまでは、到着することができた。激烈に強大だったヨグを殺すことができた」

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