50話 『究極超凡人センエース』VS『オメガ火ゴブリン』


 50話 『究極超凡人センエース』VS『オメガ火ゴブリン』


「散々、煽られたことで、こっちの準備は、一応、とっくに出来てんだから、マジで、さっさとはじめようや」


 そう言いながら、センはスっと腰を落とす。


 リラックスしたファイティングポーズ。

 図虚空を失っているので、少々不安は残るものの、

 しかし、『センエースの戦闘力』は、

 図虚空なしでも、B級GOOまでなら、どうにかできる領域にはある。


 ゴブリンごときに負けるとは思えない。


(あのゴブリン……確かに、普通じゃなさそうだが……そこまで強そうには見えねぇ……)


 心の中でつぶやきつつ、

 センは、オメガ火ゴブリンの一挙手一投足に神経を張り巡らせる。


(しょせんは、『狂気』という補正が入っただけの雑魚モンスター……高位のGOOと渡り合ってきたこの俺が、負けるわけがない)


 コツコツとフラグを建築していくセン!

 まるで、この戦いが終わったら結婚しそうな勢い!


「いくぞ、ザコが! 俺の強さに震えるがいい! 俺が! 俺こそがガ〇ダムだ!」




 ――結果だけを言うと、

 『とんでもない泥試合』になった。




「ぐぅうっ……強いぃい! こんなクソザコっぽいツラしてんのにぃ……」


 オメガ火ゴブリンは、色合いこそ、ダークサイドに堕ちたっぽい感じをしているが、純粋な造形だけに視点をあててみると、さほど大きな変化はみられない。

 つまり、きわめて『ザコっぽい』のである。


 嫌悪感を覚える『奇怪な顔面』をしているが、

 マイナスポイントといえば、そこまでが精々で、

 基本的には『しょっぱい体格のチビ』でしかない。


 第一アルファの一般人でも、

 平均的成人男性で、かつ、『取っ手のついた鈍器』か『そこそこの刃物』でもあれば、

 普通に殺せるであろうザコ中のザコ。



「ちょっ――はやい、はやいっ!」



 オメガ火ゴブリンの動きは非常に俊敏。

 ちょいちょい、瞬間移動の魔法も使っているようで、

 気を抜けば、一瞬で死角にもぐられる。


 ――とはいえ、


(……おそらく、オメガ火ゴブリンの瞬間移動は、そうとうにスペックが悪い……超短距離しか移動できず、かつ、長めのリキャストタイムを必要とする……)


 すでに10分ほど戦っているため、

 さすがに、そろそろ、相手の手の内も丸見えになってきた。


(低スペックの演技をしている……と言う可能性もゼロではないが……オメガレベルに関する話が全て事実であるなら、完全発狂している時に、そんな細かい計算は出来ないんじゃないだろうか……)


 センの推測通り、

 『低ランク』の『壊れたモンスター』に、

 細かい戦闘プランをたてることは不可能。


 ただ、それは、『壊れているから』ではなく、もともと、低位のモンスターには、それだけの知性がないという話でしかなく、高位のモンスターの場合、壊れていても、『相手を殺すため』であれば、普通に、『小賢しいマネ』を駆使してくることはある。



「ギャギャギャ!!」



 膠着状態の打破を求めるように、

 オメガ火ゴブリンは、

 『かめ〇め波』の要領で、

 両手に魔力をタメはじめる。


 オメガ火ゴブリンの両手の中で、グググっと、『バスケットボール』サイズの、まあまあデカい『火の球』が出来上がる。


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