42話 絶対にあきらめないヒーロー。


 42話 絶対にあきらめないヒーロー。


 護符を受け取った才藤は、


「……これは……」


「グリムに勝った時にドロップしたアイテム。効果は知らんけど、お前専用のアイテムだと聞いている」


「……グリムって誰だ……そんなモンスターは設定していない……」


「女神みたいな女。お前も、会ったことあるはずだが? 『本体』は、ずっと、俺と殺し合っていたが、『分体』は、この世界のGMとして、何度かお前と対話した、と言っていたぞ」


「……女神みたいなGM……ああ……あの、『俺に真理の迷宮を創らせたイカれ電波女』か……あいつ、グリムって名前なのか……」


「あいつも『無敵バリア』を使ってきたが、一極集中の極大ダメージなら、なんとか貫通できた。結局のところ『バキバキ脳筋な手段でしか突破できなかった』というところに、俺の頭の悪さがうかがえる」


 そんな会話をしている間、

 才藤の手の中にある護符は、

 ずっと、暖かな光を放っていた。


 とても暖かくて、とても力強い。


「……この護符……名前とか、聞いたか?」


「確か……『究極超宝くじの護符』だったかな」


「……ふふ……まったく……ふざけた話だ……死ぬほど頑張ってきて、実際、ギリギリまで死にかけて……それでも、まだ、抗えと言うのか……」


 才藤は、呆れたように、そう笑ってから、


 護符を天に掲げて、


「……俺は……もう祈らない」


 ゆっくりと、


「この世の、あまねく、届かなかった願いも全部込めて……俺は、俺自身の全部を叫ぶ」


 かみしめるように、


「――絶対にあきらめないヒーローは、ここにいる!!」


 その叫びに呼応する。

 究極超宝くじの護符は、

 内包された可能性の全てを、

 才藤零児に注ぎ込む。


 膨れ上がった想いの結晶。

 幾億の夜を超えてたどり着いた命の道。


 その全てが、才藤零児に集結する。


「……足りなかったピーズが埋まる……俺の剣翼が……完成していく……」


 才藤の背中に顕現した女神の翼。

 才藤が、真理の迷宮で獲得した、

 死神の翼と、英雄の翼の二つが、

 あたたかい女神の翼に包まれて、

 真なる『調和と融合』を果たす。


 すべての想いと覚悟が織り重なって、

 才藤零児は、ふたたび、

 大いなる混沌の前に立つ。


 ――その様子を、

 センはジっと見つめていた。


 気づけば、拳を、グっと握りしめていた。


「見蕩れるぜ……ヒーロー」


 かっこいいヒーローの見参を見届ける側になったセンは、

 『あっちいけカード』を使った桃鉄社長のような晴々とした顔で、


「さあ、ヒーロー。あとは任せた。ドーンとかましたれ」


 と、そんな言葉を投げかけるセンだったが、

 しかし、才藤は、センの目をジっと見つめて、



「……流れ込んでくる……アーカイブのメモリ……」



 才藤は、洪水のような、雑多なメモリの濁流の中で、



「ヒーローは、お前だ。センエース。俺は、その中の一つにすぎない」



 などと、穏やかな気持ちで、そう言う才藤。

 完全にスッキリした、晴々とした顔をしていた。


 そんな才藤に対し、

 センは、ひどく慌てた様子で、


「お、落ち着け、ヒーローっ! それは勘違いだ! お前だ! お前こそがヒーローだ!」

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