2話 ここではないどこかで。


 2話 ここではないどこかで。


「覚悟しとけ。今夜は寝かさないぞ♪」


「私は、ほとんど寝ていたので、別に、徹夜を決め込んでも、さほどしんどくはないのですが……あなたは……死ぬんじゃないですか? そんな無茶ばかりして……」


「タルいこと言ってんじゃねぇよ。死んだあとのことは、死んでから考えればいい。それまでは、『今日一日』と『どこまで突き詰めて向き合える』のか、それだけに心血を注ぐべきだって、どっかの会社の社長か何かが言っていたような気がしなくもない」


「そこの会社名を教えてください。違法すぎるブラックは許せません。叩き潰してきます」


「確か、株式会社ゼノリカとか言ったかな」


「……第二アルファの世界政府って、そんなにブラックなんですか?」


「ハッキリとそう言っていたわけではないが、しかし、そんな雰囲気をバリバリ感じた。アレは、たぶん、やっている。俺にはわかる。俺は詳しいんだ」


「ちなみに、なんで、わかるんですか? できれば、その具体的な詳細を教えてほしいんですけど」


「俺ならやるから。俺が会社を作った場合、経営理念は『根性・気力・努力』になる」


「……誰もついてきませんよ、そんな会社」


「俺もそう思うんだけどねぇ……でも、あのブラック会社、なんか、けっこうな人数が在籍していたんだよなぁ。それも、だいぶ優秀そうなやつばっかりが、あちこちに……不思議だねぇ……あの世界にはマゾがたくさんいるのかな?」


 などと、どうでもいい会話をしながら、

 センは、ガチで、黒木を引き連れ、

 普通に、アイテム探索を再開する。

 とんでもない男である。






 ★





 ――『ここではないどこか』――


 名状しがたい『謎の場所』で、

 『無数の魂魄』が、まっすぐに、

 センの動向を見つめていた。


 無限に存在する『多様で歪な形状のモニター』と、

 それを見つめている大勢の魂。


 その『二つの概念だけ』が『すべて』の『世界(どこか)』。


 そんな奇妙な世界の中心で、

 象(かたち)を失った『マザコン熾天使』と、

 象(かたち)を失った『聖なる厨二死神』の二人が、

 言葉をかわしあっていた。


「ウソ……だろ……おいおい、マジか、あいつ……帰った直後に、アイテム探索をはじめたぞ……」


「完全にイカれてんねぇ。とんだド変態だよ。心の病気も、ここまで進行すると、もはや、恐怖を通り越して敬意すら感じてくる。センさんは、すでに、存在自体がテロリズムと言っても過言ではない」


「いや、テロリズムではないとおもうが……あと、仮に、テロリズムだと認識するのであれば、多少と言えど、敬意を抱くのだけはやめておけ」


「ジャブですらないファントムトークに、そういう、お堅い『メガネ委員長的な思考』で返すのは、情緒的な意味で『いただけないナンセンスだ』と言わざるをえないねぇ。ぼくちゃんの言っていることなんて、基本、中身ゼロなんだから、完全シカト推奨だぞ♪ AHA―HA―HA―」


「……最近思うんだが……お前、だんだん、壊れてきていないか?」


「壊れてきたんじゃなく、無駄に『ヒーローぶる』のをやめて、『素』を出しているだけだねぇ」


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