31話 ソンキー・ウルギ・アースに関する情報。


 31話 ソンキー・ウルギ・アースに関する情報。


「黒木に関する情報にも、いくつか制限がかかっとる……この制限を突破するための解析ソフトを……創ったところで無駄なんやろうなぁ……どうやら、禁則の壁を創る領域は、また別の区域っぽいし……そこを見つけるのには……どんだけ頑張っても、おそらく、数年単位で必要やろう……はぁぁ……」


 ため息をつきつつも、

 トウシは、黒木の情報を得ようと、

 ひたすらに、ログをあさっていた。


 ――と、そこで、気付く。


「ん? こいつ、ログ上やと、黒木『学』美になっとるところがあるな。こいつの名前は、確か、黒木『愛』美やんな……はぁ? どういうこと? コスモゾーンが、誤字った? ……いや、そんなわけないよな……あん? なんでや?」


 ただの誤字なのか、それとも、何か理由があるのか、

 ちょっとだけ考えてはみたものの、


(……コスモゾーンもヒューマンエラー的なミスをすることもある……という結論だったとしたら、それはそれで怖いなぁ……この世界を演算しとる汎用量子コンピュータがヒューマンエラーかましてくる可能性あるとか、普通に怖すぎるやろ……そこだけは、さすがに、完璧であってくれや……まったく……)


「まあ、とにもかくにも、重要なんは黒木や……あいつと接触して、どうにか情報を得る……あの女も、神話生物対策委員会の仕事でいっぱいいっぱいみたいやから、利便性の高い協力者の要求には素直に従うやろう」


 そう決断すると、

 トウシは、さっそく、彼女の携帯番号を探しはじめる。

 アカシックレコードにアクセスできるトウシにとって、

 個人の携帯番号を入手するなど、楽勝すぎてアクビがでる。


 ――そっこうで、彼女の電話番号を調べ上げると、

 そのままの勢いで、電話をかけるトウシ。


 数回のコールの後に、

 彼女は出た。


『……はい……』


 警戒心全開の声。


 そんな彼女に、


「ソンキー・ウルギ・アースについて、知っとることを、全て答えろ。そうすれば、そっちが知りたいことは、全部教えたる」


『……ぇ……誰……』


 困惑の中で、黒木は、とりあえず、どうしても知らなければいけない疑問を口にした。

 その疑問に対し、トウシは、


「田中トウシ。お前のクラスメイト。電話番号は、お前が契約しとる電話会社からハックした。もうすでにお分かりいただけたと思うが、ワシは、普通の人間やない。ちなみに、お前が携帯ドラゴンと契約しとることも、紅院たちと一緒に、日夜、GOOと戦うとることも知っとる」


 トウシの言葉一つ一つに、黒木は動揺する。

 彼女は、持ち前の根性で、どうにか、自分の心を整えると、


『何者……ですか?』


 今、どうしても聞いておかなければいけないことを取捨選択して、そう尋ねた。


 彼女の質問に、

 トウシは、まるで、事前に用意していた台本でも読み上げるみたいに、

 たんたんと、


「魔導書を解析して、イスの遺産にアクセスできるようになったものや」


 素直に、自分に関する重要情報を並べていく。


「その力を駆使して、色々できるようになった。そのうちの一つを使って、ソンキー・ウルギ・アースにたどりついた。今日の夜を乗り越えるためには、ソンキー・ウルギ・アースの情報がいる。なぜかは知らん。だから知りたい。お前が知っとる『ソンキー・ウルギ・アースに関する情報』を教えてくれ。そうやないと、今夜、人類は終わる」

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