43話 表出てかかってこい。


 43話 表出てかかってこい。


「ヒーローは、お前だ。センエース。俺は、その中の一つにすぎない」


「お、落ち着け、ヒーローっ! それは勘違いだ! お前だ! お前こそがヒーローだ!」


「いや、お前がヒーローだ」


「いやいや」


 と、無駄なラリーを数回続けた直後、

 ソルが、


「別に待つのは構わないのだが……しかし、その非生産的なラリーを無限に続けるのだけは勘弁してほしいのだけれど?」


 と、そんな言葉を投げかけてきた。


 センは、渋い顔で、


「すぐに終わらせるから、あと、ほんのちょっとだけ待ってくれ!」


 イライラを言葉にのせつつ、


「才藤。お前は俺より賢い。そして、俺よりはイケメンだ。背格好は似たようなもんだが、じゃっかん、お前の方が『身長が高い気』がする。つまり、お前の方が主人公にふさわしい。俺は、モブに戻る。あとは任せた」


「セン。お前はバカだ。そして、俺よりは不細工だ。背格好も運動神経もお前よりは俺の方が上。頭の出来にいたっては俺の方がはるかに上だ。お前は主人公にふさわしくない。基礎スペックだけでいえば、完全にモブだ」


「ナメとんのか、てめぇ。表出てかかってこい!」


 自分で言うのは別にいいが、

 他人に言われるとイラついてしまう、

 という、謎論理の中にいるセン。


 そんなセンに、才藤は、まっすぐな目で、


「けど、お前がヒーローだ」


 そう言いながら、

 才藤は、手を差し出した。

 まるで、バトンを繋ぐように。



「たくしたぞ」



 その言葉を最後に、

 才藤の体は、パラパラと粒子になって崩れていく。


 散らばった粒子たちは、

 迷いなく、

 センの中心へと注がれていく。


 才藤の想いが注ぎ込まれたセンの背中には、

 輝くような剣翼が顕現していた。


 その翼は、

 天童の翼と重なり合って、


 より強固で堅牢な覚悟の光となった。


「……ま、また、押し付けられた……」


 センは、天を仰いで、ボソっと、


「どいつもこいつも逃げやがって……どこかに『我こそは』と名乗りをあげる責任感の強い主人公はいないのか……」


 そんなグチをこぼしたところで、

 世界は何も変わらない。


 楽になることを求めても、

 いつだって、その先には何もない。


 知っている。

 わかっている。

 だから、

 というわけではないのは、確定的に明らかだけれど、

 センは、

 まっすぐに、ソルを睨みつけて、


「……てめぇの無敵バリアは、グリムのソレより、だいぶ堅そうだが……性質としては同じっぽい……なら……」


 そこで、センは、魔力とオーラをシッカリと練り上げていく。


「賢い手段は、そもそもとれねぇ。やるなら、徹底、脳筋スタイルでいかせてもらう。おかげさまで、出力は、多少あがったから、できない範囲ではなくなった気がしないでもない。知らんけどな」


 最後に、自由な言葉をつけたして、

 センは空間をかけぬける。


「閃拳っ!」


 まずは、全力で殴り掛かってみた。

 当然のように弾かれるセンの拳。


 無敵バリアの硬さを十分に味わってから、


「やっぱりな……見えるぞ……揺らいでいる呼吸が……」


 何度も繰り返してきた。

 だから、少しだけ見える。

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