94話 月光。
94話 月光。
「エースガールズの公式ファンサイトですが、なにか?」
「なにか? じゃねぇよ! はぁ?! なに、それ?!」
「もともとは、あなたの濃いファンが一人で立ち上げたものですが、今では、300人委員会が全力バックアップしているので、コンテンツの質量や、ユーザーに対するサービスはもちろんのこと、クラッカー対策も、SEO対策も完璧な超大手優良サイトになっています。もはや、あなたの人気っぷりは、ちょっとしたイケメン俳優ごときじゃ、太刀打ちできない領域に至っておりますね。いやはや、おめでとうございます」
「……えぇ……嘘だろ? ……紅院のオヤジ、ちゃんと、俺が孤高でいられるよう、善処するって言っていたのに……」
そこで、茶柱が、ニっと黒い笑顔を浮かべ、
「為政者の『前向きに善処する』という言葉は、基本的に、『今、何か言ったか? 聞いてなかったわ(笑)』という意味だにゃ」
「……く、クソがぁ……」
頭を抱えて、奥歯をかみしめるセン。
センの苦悩はとどまることを知らない。
★
ほんの数十分程度で、
紅院たちは、目的の『超高級スパ』にたどり着いた。
県内トップ――というか、ぶっちぎり異次元の高級感。
最低価格のコースでも『2時間5万円』という、頭おかしい『強気すぎる価格』でやらせてもらっている療養温泉&エステサロン。
店名は『月光』。
『3等』の客は、ほぼ相手にしていない富裕層専門銭湯。
3等の人間でも利用できなくはないが、
一見(いちげん)さんは『全力お断り上等』の構えで、
最低でも『2等以上の階級に属する者』の紹介がなければ、
足を踏み入れることすら出来ない天上の空間。
「……え? ここ、どこ? オメガタワーは?」
「そんなもんは後でいいにゃ」
「というか、もう、いかんでええんとちゃう? 今日は、ここでゆっくりして、そのまま帰ろうや」
「いえ、トコさん、さすがに、あとで、一応は行っておきましょう。おそらく、市長が接待の準備をして待っているでしょうし」
「それがイヤやねんなぁ」
言いながら、リムジンを降りて、
んー、と伸びをして、青い空を眺める美少女たち。
と、その時、『月光』の自動ドアが優雅に開いて、
奥から、気品に包まれたスーツ姿の美魔女が登場し、
「お待ちしておりました」
深々と頭を下げてお出迎え。
「オーナー(紅院正義)から、今回のご利用コースは『プラチナスペシャル』の『ウルトラロイヤル』と伺いしております」
美魔女は、感慨深そうに、
「まさか、最天上コースをご利用になられるお客様が現れるとは、思っていませんでしたので、わたくし、ガラにもなく、少々緊張しております。心臓の強さには自信があったのですが、さすがに、昨夜は、なかなか眠れませんでした」
そんな美魔女に対し、
トコが、
「田畑さんが緊張? いや、あんたはそんなんせぇへんやろ?」
「薬宮様、わたくしも、所詮はただの女……プラチナスペシャルのウルトラロイヤルをご予約された天上人のコンシェルジュを任されたとなれば緊張の一つや二つ……」
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