94話 どいつもこいつも。


 94話 どいつもこいつも。


(ソウルゲートに関しても、相当な規制がかかっとるからなぁ……こっちをどうにかするのにも普通に莫大な時間がかかりそうや。100年ぐらいは……まあ、ほしいかなぁ)


(よし。じゃあ、ソンキー、あと100年稼いでくれ。そうすればオールオッケーらしい)


(あと5分が限界だな……いい加減、体力が持たない)


(この根性なしがぁあ! ああ、もう、どいつもこいつも言い訳ばかりで使えねぇえ!)


(この三人の中で、現状、一番使いモンになってないんは、ぶっちぎりでおどれやけどな。ちったぁ、マシなアイディアの一つでも出してくれや)


(そんなもんが可能なら、そもそもにして、お前なんかに頼るかぁ! 俺は、お前が、世界で一番大っ嫌いなんだぞぉ! できれば、一秒たりとも、顔すら見たくねぇ! ヘドで溺れそう! ボスケテ!)


(こんなこと言われてまで、なんで、ワシ、頑張らなあかんのやろ……)


 心底ダルそうに溜息をついてから、


(――一個だけ、方法がある)


(ほう! どんな?!)


(絶死のアリア・ギアスを積んで、10分間だけ、ワシの可能性を解放する。全部を解放すれば、『シャットアウト・ゾーン』と向き合うこともできんことはない)


(……)


(これ以外に方法は――)


 そこで、

 センは、


(絶死は俺が積む)


 ――それまでの雰囲気を一変させて、

 どこまでもまっすぐな目で、トウシを睨み、



(てめぇは生き残れ。どう考えても、そっちの方が有用だ。お前が言う通り、この三人の中では、俺が一番使いものにならねぇ。今後のことは任せたぞ、トウシ)



 そんなセンの、まるで『当たり前みたいな覚悟』を受けたトウシは、

 たんたんと、


(おどれに積んだところでうまく機能せん。適正がない状態でのシャットアウト・ゾーンの強制稼働は、この世で、ワシにしか出来ん不可能や)


 そう言った直後、

 トウシの全身が真っ赤なオーラに包まれた。


(おまっ……バカがっ)


 あまりに急激な展開に動揺しているセンを置き去りにして、

 トウシは、ひどくたんたんと、


(なんちゅう顔してんねん。まさか、ワシが死ぬのが悲しいとでも?)


(んなことは言ってねぇ。てめぇが死んだら世界が困る。俺みたいなハンパなニセモノと違い、お前の頭脳は、本物のヒーローになりえる器。勝手に壊すことは社会倫理的に許されねぇ)


 そう言いながら、

 自分の生命力を全投入して、

 トウシの絶死を止めようとするセン。


 そんな彼に、


(田中トウシを壊す気なんかない。ワシは所詮、センエースの記憶にすぎん)


(そういう問題じゃねぇ)


(ワシというデータには、それなりに価値があるんも分かっとる。今のワシは、オリジナルよりも、コスモゾーンに触れた質量が大きい。ワシのデータは、オリジナルの器になれる。そのための道筋を用意した上での行動。お前みたいに、後先考えずに、感情論で暴走しとるわけやない。ワシをナメるな)


(……)


(あとなぁ、この中で誰が一番頭悪いかという点に関しては、もちろん、お前がブッチギリのワーストやけど、この中で、『誰を残すべきか』という議論では、お前がブッチギリのナンバーワンなんや。ワシらの代わりは、どうにか用意できそうやけど、お前の代わりは、どこにもおらん)


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