67話 クズニートの世界で舞う閃光。


 67話 クズニートの世界で舞う閃光。


「……で、ヨグシャドーよ。これは、どういう状態だ?」


 おそらく理由を知っているであろう『図虚空の中にいる神の影』に尋ねる。

 すると、


「銀の鍵は、すべてがすべて、完全な逸品ではない。中には、バグったゴミが混じっていることもあるさ」


「……不良品が混ざっていないかどうか、しっかりと検品してから出荷してもらいたいものだねぇ」


 そんなセンの不満の声をシカトして、

 ヨグシャドーは、


「どうやら、バグった銀の鍵を使った結果、世界線ではなく、世界そのものを移動してしまったようだ」


「……てことは何か? ここは異世界ってか?」


「まさに、そうだ。ここは……どうやら、『クズニート』の世界だな」


「……クズニート?」


「アー、ヤレヤレ、困ッタコトニナッタナー」


「なんだ、その、あえてのクソ棒読みは。間違いなく、困った声ではないな。というか、確実に『想定通り』って感じのメッセージに聞こえるんだが、気のせいか?」


「気のせいだな」


「……ああ、そうかい。ちなみに、元の世界にはどうやったら戻れる感じだ?」


「何かしらの条件を満たす必要がある」


「……なんだ、『何かしら』って。ナメてんのか? 詳細を言え、詳細を」


「それは自分で見つける必要がある」


「スーファミ時代のRPGみたいなことぬかしやがって。もっと現代に合わせてくれよ。次の目的地がどこか分からなくて迷うようなRPGは総じてクソゲーだということを理解してくれや」


 そんなセンの文句を、

 ヨグシャドーは、鮮やかにシカトして、


「元の世界に戻るには、条件を満たした上で、銀の鍵を使う必要がある。条件を満たさずに、銀の鍵を使ったとしても、このクズニート世界内での世界線を移動するだけ。条件を満たさない限り、世界を移動することは絶対に不可能。ちなみに、この世界に銀の鍵は存在しない」


「えっと……それは、つまり……手持ちの200個が切れたら、元の世界に戻る方法が、完全になくなるってことか……」


「そういうことだ」


「……んー」


「どうした、複雑そうな顔をして」


「……いや、なんか……もう、いっそ、あの世界に戻れない方がいいかもなぁ、みたいなことを考えてしまってなぁ……」


「なら、何もせず、無為に時を過ごせばいい。私は、別に、世界の救済を強制したりはしない」


「その放置プレイは非常に助かるね」


 軽口を挟むセンに、

 ヨグシャドーは、


「望むなら、元の世界に戻れる『条件因子』をこの場で消してやってもかまわない」


「ずいぶんと親切だな」


「どうする? 元の世界に戻るため奮闘するか、それとも、条件因子を消して、この世界に永住するか」


「悩みどころだなぁ。もう、あの地獄に戻るのは、正直、イヤだしなぁ。かえっていいことなんて、ぶっちゃけ、一つもないしなぁ。んー、どうしよっかなぁ。この世界に永住することを求めちゃおっかなぁ。んー、悩むなぁ。ぶっちゃけ、『定期的に幻爆の剣翼が舞う世界』と比べたら、その他全ての世界が、まだマシに見えちゃうんだよなぁ……んー、あんな世界、ポイしちゃって、こっちをホームにしちゃおっかなぁ。そうすれば、あのキチ〇イ女どもに煩わされることもないしぃ」

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