27話 量産型汎用一般人センエース。


 27話 量産型汎用一般人センエース。


「俺は、むしろ、あんたら女どもに、それを言いたいね。きっと、世界がフラットになった時、あんたらみたいな本物の美少女は、絶対に俺を選ばない。『しょせんは吊り橋効果の幻想にすぎなかった』、『やっぱり長身のイケメンの方がいい』となるに決まっている。そうだ! 結局、女なんて、そういう生き物なんだ! この薄情者! 鬼畜! 外道!」


「勝手な被害妄想で侮蔑してくるのはやめてください。わたくしは、顔で男を選んだりしません」


「はい、そういうこと言っている女が、結局、ジャニーズを追っかけて、ホストに貢ぐんですぅ! 『顔より性格で選ぶ』なんて言っている女はろくな女じゃないって、ネットに書いてましたぁ!」


「……あなた、かなりメンドくさい男ですね」


「俺はメンドくさくありませぇん! 普通ですぅ! 石を投げたら跳弾で連鎖するレベルの、量産型汎用一般人ですぅ!」


 絶対的に頑ななセンに対し、

 アルキは、とうとう諦めた顔をして、


「わかりました。あなたが世界を救う日まで待たせていただきます。ただし、わたくしの気持ちが消えることはないということだけはご理解いただきたい。わたくしは、あなた様のことを、永遠にお慕い申しております」


「ふふん、断言してやる。あんたは、必ず、その言葉を撤回する。そして、ちゃっかり、『棒演技のイケメン俳優』や『チャラくさいIT社長』や『中身空っぽのボンボン御曹司』と結婚するんだ! もう見えている! 俺は詳しいんだ!」


「言っておきますが、わたくし、これまでの人生の中で、その手の輩に、幾度となく求婚されておりますが、全てを袖にしてきております。わたくしの男性を見る目は厳しすぎて、『孫の顔が見られないかもしれない』と親が嘆いているレベルですから」


「……できれば、親は悲しませないでもろて」


 などと、そんなことをつぶやくセンの目の前で、

 アルキは、懐から、小型のナイフを取り出した。

 折り畳み式でチタン合金タイプの薄い刃物。


 そのナイフを、

 彼女は、迷いなく、自分の腕につきたてる。


「え、なにやってんお、お前?!」


 ドン引きしているセンの前で、

 アルキは、スッスッと、ナイフで、

 自分の腕に、『閃』の文字を刻み込んだ。

 血が流れて、ぽたぽたと落ちる。


「……あなた様の所有物となった証を体に刻み込みました。これで、わたくしは、キズモノ。あなた様に引き取っていただくしかなくなりました」


「……いや、そんな、サイコパスの当たり屋みたいなマネ……」


「キズの入った女は、あなた様がいう『理想の恋の相手』としてふさわしくありませんか?」


「……キズがあるかないかで女を選ぶほど、俺の視点はズレちゃいねぇ……いや、てか、そういう問題じゃねぇ。バカなのか、お前は。なんで、わざわざ、綺麗な肌を傷つける必要がある。どこにその必然性があるんだ」


「あなた様に、わたくしの覚悟を理解していただくため。それと……これなら、彼女たちからのヘイトを買えそうでしょう?」

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