第15話 協力して!

 

 あのニュースの報道後、すぐに僕らは緊急招集された。


 もちろんその理由は異界の住人のみを狙ってくるあの魔物達の対処と、姿が変わった重犯罪者たちの対処だった。


 消息不明だった重犯罪者は他の魔物達に混ざって行動しており、呼びかけても一切の反応は無く、意思疎通がまるでとれない状態となっているらしい。

 下手に干渉すると魔物同様攻撃してくるため、不用意に手が付けられないのだとか。

 いったい彼らに何があったかは不明だけど、少なくとも好き勝手暴れ出すわけではないだけマシなのかもしれない。


 問題は異界の住人が狙われているというその一点だ。


 国の方で異界の住人の人達との話し合いの結果、彼らと協力して出て来る魔物達の討伐に動くことになった。

 異界の住人の手助けをすることで彼らには国に帰属してもらうとかそんな話があったらしい。


 しかしそれは僕らが招集され戦わなければならない理由にはならないはずだよね?


「未成年に率先して戦えってどういう事なんですか?」

「申し訳ない。だがあそこには【四天王】が2人いて、金色の紋章を持つ君にはどうしても参加してもらいたいんだ」


 政府のおじさんにそう言われてしまった。

 くそう。ここでこの紋章が効いてくるのか……。


 ……ん? 今なんて言った?


「四天王?」

「ああ。あそこに指揮を執っていた者がいたのがテレビで少しだけ映っていたと思うが、その2人を[鑑定]のスキル持ちが確認したところ、【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】の【四天王】だと判明した」


 それってつまり、シロとクロが【四天王】ってことでいいんだよね?

 アヤメがスキルのスマホの中に入って確認したところ、シロもクロもいつも通りそこにいたから、あれはよく似た別人――と思うにはあまりにも似すぎているから別人とは言い切れないな。


 そう言えば〔ミミックのダンジョン〕でシロとクロの石がほとんどドロップしなくなったりしたし、そのダンジョンで迷宮氾濫デスパレードが起きている。

 その2つが今回の事と無関係だと言うのはあまりにも接点がありすぎるか。


 シロとクロの事を考えると、無視できることじゃないよね。


「他国でも日本と同様の事が起きていてあまり援助は期待できないが、ダンジョンのどこにいるか分からない【四天王】を倒すチャンスだけあって、それぞれの国から数人金や銀の紋章持ちが来ている。

 そんな中、日本でただ2人の金の紋章持ちが参加しないというのは問題があるのだ……」


 さすがに未成年相手に戦ってくれと言うのは心苦しかったようで、苦虫を嚙み潰したような表情になりながらおじさんが絞り出すようにそう言った。


 まあ未成年をそんな場所に行かせるなんてって非難があるだろうし、支持率が落ちることが予想されるからこその表情だろう。

 ただ僕が参加しなかったらしなかったで、金色の紋章持ちがなんで参加しなかったんだって世間が僕に対してうるさそうだけど。


 もちろん報酬もそれ相応のものを用意すると言ってくれたけど、これ以上お金とか貰ってもどうすればいいんだろうか?

 まあ何もないよりはいいので、貰えるものは貰うけど。


 ◆


「そう言う訳で明日僕らも迷宮氾濫デスパレード解決に向けて参加するんだけれど……そこの2人はなんというか気合入り過ぎじゃない?」

「ようやく見つけた……!」

『パパとママなのは間違いないのです。会ってちゃんと確かめないと……!』


 ソフィアさんとアヤメが異常なまでに戦う気満々というか、見張ってないとすぐにでも魔物達に突撃していかねない不安さがあった。


「アヤメがそうなるのは分かるとして、ソフィアさんはどうしたの?」


 僕がソフィアさんにそう尋ねると、ソフィアさんはガシリと僕の肩を掴んできた。

 っ、力が……!


「お願いソウタ。ワタシに協力して!」

「い、痛い。ソフィアさん痛いって」


 肩に食い込む指がどんどん力が強くなっていて、痛みのせいで話を聞くどころじゃないよ!


「ちょっ、落ち着いてくださいソフィア先輩!」

「蒼汰君が痛がってる」


 乃亜と咲夜がすぐさまソフィアさんを引きはがしてくれたお陰で、肩の粉砕はまぬがれた。

 おかしい。まだ魔物との戦闘は始まってないのにどうして僕は負傷しているのかな?


「あ、ゴメンソウタ……」

「いや、まあこのくらいいいけど、ホントどうしたの?」


 いつもと全然違うと言うか、まるでカティンカと戦っていた時のよう――あっ。


「もしかしてお兄さんがテレビに?」

「……あれを兄と呼びたくないけどそうだよ。

 ワタシがこの手でケリをつける。だからソウタには全力でワタシのサポートをして欲しいんだ」


 決意のこもった目を僕に向けながら、ソフィアさんはギュっと拳を握った。


「なるほどね。そうなるとコスプレのサポートをソフィアさんにするとなると、乃亜は大楯でみんなを守るから、冬乃か咲夜がコスプレなしになるのかな」

「いいの?」


 僕がそう言うと、ソフィアさんが少し驚いていた。


「文化祭の時にあんな話を聞かされてるしね。もっともソフィアさんが無理に相対しなくても他にも大勢冒険者がいるけど、本当にソフィアさんが戦うの?」

「うん。ワタシは今までずっとあの男を探していた。

 これ以上被害が出る前に身内の不始末は身内がつけるよ」


 かなりの数の魔物と妙な強化がされている重犯罪者達が大勢いるので、ソフィアさんの望み通り相対できるかは分からないけど、少なくとも何もしなくても突っ込んで行きそうだったから、サポートできるだけした方がいいよね。


 どうなるかは分からないけど、明日は大変な1日になりそうだ。

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