第58話 フラグ乱立
≪蒼汰SIDE≫
「咲夜!?」
何だかよく分からないけど、ビームの様なカッコいい技を放って謙信を倒した咲夜だったけど、謙信を倒した後、突然体の力が抜けたように倒れてしまった。
「蒼汰、乃亜さん!」
「分かってる!」
「分かってます!」
冬乃に言われるまでもなく、僕らは3人とも急いで咲夜の元まで駆けつけに行く。
「大丈夫咲夜?」
うつ伏せで倒れている咲夜を抱える様にして腕に抱えたまま仰向けにし、僕は咲夜の様子を見た。
先ほどまでの姿とは違い、角や第三の目は無くなり、赤かった髪も黒に戻っていてスキルはもう発動していないことが分かる。
そもそも気絶していたらスキルなんて発動してる訳ないだろうけど。
「ちゃんと息はしているし、傷らしい傷はなさそうだから気を失ってるだけなのかしら?」
「そうですね。一時はどうなるかと思いましたが、咲夜先輩もこうして元に戻ったのでホッとしました」
確かにそうだ。
さっきの咲夜は凄かったけど、もしも謙信の〝鬼兵操縦〟が効いたままだったらあの力が僕らに向いていただろうことを思うとゾッとする。
まあ、結果的に〝鬼兵操縦〟は効かなくなったし、咲夜の意思で僕らと敵対することはまずないので、むしろ今は頼もしいけど。
「何してんだお前ら。とっととそいつを連れて下がりな」
「あ、柊さん」
「ここはあたしらが受け持ってやるから、もう
「えっ、いいんですか?」
「ああ。なんせもうそろそろ終わりだからな」
そう言って柊さんが壊れたバリケードの外側を指し示す。
そちらを見ると、先ほどまで大量に群がって来ていたスケルトンの数が異常に少なくなっており、初日の時よりも少なくなってるんじゃないかと思うほどだ。
「
「でも本当にいいんですか? 少なくなったとは言えまだ魔物はいますし、大樹達だってさっきから戦い通しで疲れてるんじゃ……」
「大丈夫だ、蒼汰! ここはオレに任して先に行け!」
「何でここで死亡フラグを立てるの?!」
上杉謙信が倒れたのに、おかわりで【
「あいつらは俺達が倒してしまっても構わないのだろ?」
「少し休めばまだ戦えますから大丈夫です。後で私どもも戻りますよ」
「この戦いが終わったら、おいらハーレムを作るんだ」
ここぞとばかりに死亡フラグを立てるんじゃない!
「てめえら馬鹿な事言ってんじゃねえぞ」
「「「「すいません、姐さん!!」」」」
すっかりパーティーメンバー全員が柊さんの舎弟になってるじゃないか。
「こいつらもいるし、3体来ていた【
だから余計な心配なんかしてねえで、とっとと
「は、はい。ありがとうございます柊さん! 大樹達もありがとう!」
「「ありがとうございます」」
柊さん達は少ないながらも向かってくるスケルトン達の相手をしに行ったので、僕らは割り当てられているユニットハウスへと戻ることにした。
僕が咲夜を担いで連れていこうとした時、ふと目に映ったのは「毘」の文字が書かれた印籠だ。
「なんだろ、あれ?」
「えっ?」
乃亜が僕の視線の先へと目を向けると、落ちている印籠に気が付いたのかそれを拾う。
「謙信を倒したので手に入った【
乃亜の言う通り、【
「それは【
「わっ、亜美お母さん。どう言う事なの?」
「乃亜ちゃんやみんなが無事で本当に良かったわ。あ、それはね、Sランクの〔スケルトンのダンジョン〕にいる【
「鍵ですか?」
「さっきまでいた【
「えっ、謙信がまた復活するんですか?!」
冬乃が驚き目を見開いていた。
咲夜の圧倒的力が無ければ倒せなかった相手がまた復活するとか勘弁して欲しい。
「3日後にね。まあ復活するのはダンジョン内だし、
あ、確かにそうだ。
また戦う事を思わず想像しちゃったよ。
「そしてその印籠も3日経つと消えちゃうのよ。だから推測としてダンジョン内にいる武将を倒して印籠を3日以内に集めるのがここの【
なるほど。だから鍵なんだね。
「だからその印籠は本部の方に持って行ってもらえるかしら。10年前は1体しか武将が現れなかったせいで、広大なダンジョン内にいる武将達を3日以内で見つけれず、印籠を集めきれなかったから討伐に失敗してるのよ。
今年は3体も現れたし、もしかしたら日本が初めてSランクダンジョンの【
亜美さんはそう言うと、柊さんの元へと向かいスケルトンを倒し始めた。
僕らは亜美さんに言われた通り、本部の方へと印籠を届けに行くと、その印籠は厳重に保管されてお礼を言われた。
後日、上杉謙信を倒したことによる報酬まで貰えるらしい。
初日に拾いまくった魔石と合わせていくらになるか楽しみだ。
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