第36話 字が細かい説明書とかって、まともに読まないよね
冬乃がかなり落ち込みながらも、鎧を着たスケルトン相手に戦い、鎧を着ていないスケルトンと戦う時の様に接近戦でも難なく倒すことが出来ていた。
それは乃亜も同じでサクサク鎧付きスケルトンを倒しており、全く苦にしていない咲夜と共にいつもの戦法に持ち込められた。
『これなら苦労せずに2日目も乗り切れそうかな』
『そうですね。
1日目と違い、2日目はスケルトン達が強化されていた。
ダンジョンの下層からドンドン出てきてると考えると、3日目は一体何が出てくるんだろうか?
『………』
『冬乃ちゃんがさっきから一言も喋らなくなってる』
『咲夜先輩。今はそっとしておいてあげましょう』
冬乃は無言で〔
今は作業に没頭することで、先ほどのカメラマンを探しに行きたい気持ちをグッとこらえているんだろう。
それからあっという間に1時間が経ったのか、合図のロケット花火が飛んできた。
ああ交代か、っと思った時には冬乃がバリケードに向かって走り始めていた。
『いや、ちょっ、まだ交代の冒険者が来てないんだけど!?』
『どうせすぐ来るわよ! こんだけバリケードの入口から離れたところまで敵を殲滅してるんだから何の問題もないでしょうが!!』
そんなに急いでカメラマンを探しに行きたかったの!?
冬乃を呼び止めようとしたけれど、あの様子では止まりっこないな。
『乃亜、咲夜。交代の冒険者が来るまで、出来る限り広い範囲の敵を倒せる?』
『ん、咲夜は問題ない』
『私は大楯を投げて出来る限り多く倒す事にします。なので大楯を投げ終えた後、再度召喚していただけますか?』
『分かったよ』
僕らは徐々に下がりながら敵を殲滅し続けていると、交代の冒険者がやってきた。
「おう、ボウズ。俺らが来る前に1人嬢ちゃんがこっちに戻ってきたがなんかあったのか?」
「……女の子の事情です」
「お、おぅ、そうか……。すまんな、デリカシーのないこと聞いて」
こう言っておけば深くは追及されないはず。
「だが、代わりが来る前に戻るのは問題だから、どんな事情があるにせよそこだけは注意してくれよな」
さすがに女の子の事情というパワーワードでも、
「すいません。次はそうならないよう気を付けますんで」
「まあ、交代中に雑談する余裕があるから問題はねえんだが、一応な」
ハンマーを肩に担ぎ、苦笑いをしながらリーダーの人は頬を軽く搔いていた。
自分達はバリケード近くまでスケルトンが来てる状態で交代しているので、注意するのに少しばつが悪いと感じているのかもしれない。
ただそう感じているのだとしても、交代要員が来る前に戻るのは問題だと僕も思っているので、僕は交代の冒険者の人達に軽く頭を下げた後、バリケードの内側へと戻ることにした。
バリケードの内側へと戻ると隊員の人にも似たようなことを言われたけど、同じように次は気を付けますと言ってその場を去る。
そして冬乃を探しているわけだけど、周囲を見渡しても既にそれらしき人物は見当たらなかった。
「どこに行っちゃったんですかね、冬乃先輩?」
「獣耳なんて目立つから、近くにいればすぐに分かるだろうけど……」
「〔絆の指輪〕で話しかけるのは?」
「あ、そっか」
咲夜に言われて、早速呼びかけてみる。
「冬乃、今どこにいるの?」
………。
「指輪が使えないな。もう100メートル離れたのか」
「しょうがないですね。でしたらわたし達の方でもあのカメラマンを探してみましょうか?」
「そうだね。戦闘前に一緒に探すって言ったし、手伝わないと。咲夜もそれでいい?」
「うん、大丈夫」
しかし、ふと思った。
2人は先ほどまで戦っていたんだから休んでいた方がいいんじゃないかと。
「なんだったら乃亜と咲夜は休んでいてもいいよ? 僕と違って2人はスケルトンと戦ってたわけだし」
「大丈夫です先輩。大して疲れていませんし」
「うん。咲夜も平気」
空元気というわけでもなさそうなので、僕ら3人で冬乃とカメラマンを探していると、目的の人物はあっさりと見つかった。
「あの、すいません」
「はい?」
「先ほど写真を撮られていた方ですよね?」
「ええ、そうですよ」
冬乃は見つからなかったけど、カメラマンの人は見つかった。
よく見ると首から冒険者組合職員のカードがぶら下がっており、さらにそれには撮影係と書かれていた。
「僕らの仲間で写真を撮られることを凄い嫌がってまして、出来ましたらそのデータを消していただきたいのですが」
「ああ、そういう事ですか。ですが申し訳ない。私の使っているのはフィルムカメラなので今すぐに消すことは出来ないんですよ」
まさか今時デジタルカメラでないとは。
しかしそういう事なら、今すぐには消せれないか……。
「今すぐには消すことは出来ませんが、重要でないと判断されたものは削除することができますよ」
「え、個人の写ってる写真が重要だと判断されることがあるんですか?」
「人ではなく、現場の映像次第ですね。私どもが撮っている写真は現場にある物など、今後の
「ですが先ほど、メイド服を着た仲間の写真を撮られていませんでしたか?」
「ああ、彼女の。そうですね……少し映り込んでいるかもしれません。
それにつきましては冒険者組合の方で記録を残すための撮影があることについてお渡しした冊子に記載があったと思いますが、そこに撮影した際の映像の取り扱いについても載っています」
……あ、もしかして渡された冊子にそんな事が書いてあったかも。
字が細かくて、あまり重要じゃないところは流し読みしてたからな……。
「肖像権がありますから撮影したものがネットに出回ったりしませんのでご安心ください。
この度はご不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。
こちら私の連絡先と、所属する冒険者組合の連絡先です。こちらのQRコードを読み込んでいただいてもよろしいでしょうか?」
カメラマンの人に名刺をもらうと、そこにはこの人の名前、菅崎信夫と書かれている下に、この人個人の電話番号と所属する冒険者組合の電話番号が書かれていた。
しかしなんでQRコードを読み込む必要があるんだろうか?
そう思って尋ねたら、昔冒険者組合を名乗って偽の名刺を利用した詐欺が多発したため、名刺を渡す際に実際に所属する人物なのかをQRコードで確認できるシステムになったらしい。
確認してみると冒険者組合のホームページにとんで、ちゃんと菅崎さんの社員情報が出て本人だと分かる。
「ご本人のようですね」
「はい。確認していただきありがとうございます。よろしければ冒険者組合で発行されました、IDカードに記載してある会員番号を記録させていただいてもよろしいでしょうか? 組合に登録してある連絡先へと撮影した写真についてのご連絡をさせていただきます」
「分かりました」
僕は自身の持つIDカードを見せると、菅崎さんはスマホで会員番号の箇所を撮影した。
「ダンジョンに入る際にゲートに読み込ませるみたいな事出来ないんですか?」
「それの詐欺もありまして、正規のカードを読み込んで悪事を働かれたこともあって、今はゲートや受付以外では読み込んだりしないんですよ」
詐欺ってホント色んな方法で行われるな。
「そうなんですね。あ、お忙しい中お手数――」
「見つけたーーー!!!」
お手数おかけしました、と言おうとしたところで息を荒げながらこちらに走ってくる冬乃の姿が。
「乃亜、ガード!」
「はい!」
冬乃は走ってくる勢いのままにカメラマンに攻撃しようとしたので、乃亜に大楯を出してカメラマンを守ってもらう。
「どいてあんた達! そいつ殺せない!」
「まさかリアルにそんなセリフを聞くことになるとは……」
僕らは必至に冬乃を止めて、写真について説明して事無きを得た。
なんか
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