第2話 何が役に立つのか、世の中分からない

 

 アドベンチャー用品店で見かけたような、ツマミが付いたガチャガチャの絵がスキルのスマホに写っており、そのツマミ部分が勝手に回り始める。

 その演出の後カプセルのようなものが出て来て、〖タップしてね〗と画面に出てきたので、僕はそれをタップする。


「確定星5演出!」

「いや、アプリゲーと違うから」


 カプセルがレインボーに輝いたので、思わずそう叫んでしまった。

 でも大抵どのゲームでも虹色演出は熱いから、何かしらいいのが出るはず。

 さあなんだ!?


 ポンッと音を立てて、画面に表示されたもの。それは――


『チャイナ服一式』


 ………。


「またこんなのか……」

「先輩のスキルって、先輩を強化させる気一切ありませんよね」


 ホントだよ。

 少しは自衛くらいできるアイテムでも出てきてくれればいいのに。


 そう思いながら続けてタップするとガチャの画面に戻り、よく見ると右下の方に小さなビックリマークがあるのを見つけたので、それをタップしてみる。


「これが[有償ガチャ]のラインナップか」


 なんでこんな微妙に分かりづらいところにあるんだろ。

 ガチャを目立たせたかったのかもしれないけど、もう少し発見しやすいところに配置すればいいのに。


 そんな事を思いながら何が出るのかを確認していく。

 う~ん、コスプレ一式だったり、〔成長の花〕のような強化アイテムみたいだし、[カジノ]で見た景品一覧に近い感じかな?

 もっとも超級○○といった衣装までは出てこないみたいだけど。


 衣装なら[衣装ガチャ]で十分なように思えるけど、あっちはコスプレ一式が丸々出てくるのではなく、服のパーツが分かれて出てきて、全部揃えて初めて衣装として[チーム編成]で設定出来るものだからなー。

 今は[カジノ]のメダルも少なくて、設定できる服はメイド服しかなかったから微妙にありがたいけど。


「3000円でそれって得なのかしら?」

「どこにも売ってないし、みんなの強化につながるんだから得だとは思うけど」


 僕はそう言いながら[カジノ]を起動させる。


「ブラックジャックで出禁くらってるせいで、メダルが全然貯まらないから[衣装ガチャ]のためのコインも手に入らないから余計にね」


 咲夜の協力の元、ブラックジャックで順調にメダルを増やしていたのに、ある一定の段階で突然画面が真っ暗になったと思ったら、[カジノ]でゲームを選ぶ画面に戻っていてブラックジャックが選べなくなっていた。

 どうも一定枚数稼いだら、そこから一か月はそのゲームが遊べない仕様のようで、現在の枚数は7229枚。


 期末テストの後にブラックジャックが出来なくなったので、まだ2週間は選べないはず。


「他のだと麻雀はメダルが足りないし、スロットはよく分からないから、確実に増やせそうにないし」


 どうにかしてメダルを増やせないかな?


「せめてスロットの選択肢がもっと単純だったらいいのに……。なんでよく分からない女の子の画面になったと思ったら、エ――ギャルゲみたいな選択を強要されなくちゃいけないんだよ!」


 選択肢の3番はどう考えてもエロゲだったよ。


「ん? ギャルゲってどういうことだい?」

「ああ。彰人なら得意かもね。最悪多少減るだけだし、なんだったら試してみる?」


 僕はスロット『欲望の夏』を起動させると、それを彰人に見せる。


「へえ、なるほど。選択肢って言ってたし、図柄がそろってボーナスをゲットしたら、この絵の子達を攻略すればいいのかな?」

「まあそんな感じ。よく分かったね」

「似たようなのがあるからね」

「あるんだ、そんなの」


 僕はスロットを起動させると『スピン』と書いてあるボタンを長押しして、出てくる選択肢から100回転を選択。

 どうせ1回で3枚消費だから、300枚くらいなら[フレンドガチャ]で回収できるから構わないかな。


 カシャンカシャンとリズムよく回り続け、89回転目のところで女の子の絵柄がそろってビッグボーナスをゲット。

 ビッグボーナスは300枚なのでチョットだけど儲かったな。

 さて、問題はここからだ。


『チャレンジタイム』


「この後に選択肢が出るの?」

「そうだね。今回は白髪でキツイ目つきのお姉さんか」

「先輩はこういう水着が好きなんですか?」

「着て欲しいなら着る、よ?」

「それともこういう女がタイプなの?」

「教室で聞くのは止めて」


 クラスの男子のほとんどは、まだ落とされてから戻ってきてないからいいけど、あんまりそう言う事話してると、いつか刺されそうで怖いよ。


『あなた、今私の事ジロジロ見てたでしょ』


『①「あなたに見惚れていて……」と言う』

『②「い、いえ、見てませんよ!」とどもりながら言う』

『③無言で立ち去る』


「相変わらず意味不明なせんた――」

「③だね」

「はい?」

「いいから。早くしないと時間制限きちゃうよ」

「わ、分かったよ」


 僕は彰人に言われて③を選択した。すると――


『ちょ、ちょっと待ちなさいよ。黙って行っちゃうことないじゃない……。み、見たかったら好きに見れば……いいんだから……』

「嘘でしょ?」

『チャレンジ成功!』

「……なんで分かったの?」

「この女の人が上目遣いでこちらに好意を持ってる雰囲気を見せていたからかな。ただ素直になれなさそうなタイプだったから①だと恥ずかしがって逃げそうだし、②だとなんで見ないのよって怒りそうだから、③で気を引くのが正解だと思ったんだよ」


 え、上目遣いだった?

 こっちを真っ直ぐ見てるようにしか僕には見えなかったんだけど……。


 確認の為乃亜達に視線を向けるけど、3人共首を横に振っているので、誰も好意を持ってる雰囲気なんて感じ取れていなかったようだ。


『チャレンジ成功により600枚メダル獲得の権利を得た!

 再度チャレンジタイムに挑戦することで、さらに獲得メダルを倍に出来ます。

 ただしチャレンジに失敗すると300枚しかメダルを獲得できません。挑戦しますか?』


「あはは、面白いね。ねえ蒼汰。もう1回チャレンジしていい?」

「あ、うん」


 その後、彰人はチャレンジタイムの限界回数、5回を連続で選択肢を当て続け9600枚のメダルを増やしてくれた。


 まさか彰人のギャルゲの腕がこんな所で役に立つとは思いもよらなかった。

 何が役に立つのか、世の中分からないものだな……。

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