第3話 呼び出し


≪蒼汰SIDE≫


『3年四月一日咲夜さん、2年鹿島蒼汰君、白波冬乃さん、森大樹君、1年高宮乃亜さんは至急職員室まで来てください。繰り返します――』


 放課後になって僕らはいきなり放送で呼び出されてしまった。

 はて? 何か呼び出されないといけない事なんてあっただろうか?


「鹿島、ついに不純異性交遊で……」

「やっと先生たちも重い腰を上げたか」

「しかし森まで呼び出されるとか……はっ、まさかお前も鹿島ハーレムの一員だったか!?」

「ウホッ」

「オレのケツの処女は散らされてねえ!」


 おい、恐ろしい想像をするなよ。

 あと、「ウホッ」って喜んだ人誰?

 まあ女の声だったからただのBL好きだと思うけど、男が喜んだんじゃなくて本当に良かった。

 今後、学校生活でお尻を気にして生活するのは嫌だからね。


「蒼汰だけなら、不純異性交遊で呼ばれてもおかしくないんだけど……」

「いやいや彰人。僕は不純異性交遊なんてしてないから」

「「「えっ?」」」

「クラス全員でハモらないでくれない?」


 不純なことなんて何1つしてないんですけど!?


「せんぱ~い!」

「蒼汰君」

「呼ばれたわね蒼汰」


 2人は窓から、1人は廊下から教室へと乃亜、咲夜、冬乃が僕を呼びながら現れた。


「くっ、最近高宮ハピネスちゃんのガードが固い!」

「前までは色々見せてくれてたのにな~」

「そして今まで周囲に振りまいていた幸福ラッキースケベは――」

「きゃっ」

「わっ」


 乃亜が僕へと駆け寄ってくる時、たいがい何故か何もないところでコケてこちらに倒れ込んでくる。

 乃亜の持つ[ゲームシステム・エロゲ]スキルが悪さしてエロいハプニングを起こすのだけど、乃亜のレベルが上がってもこれだけは全く改善されないな。


 そんな事を想いながら倒れ込んでくる乃亜を抱きとめるけど、その際に何故か、乃亜の胸の柔らかい感触が手の平で感じられる受け止め方になってしまった。


「全部鹿島へと行っちまったんだーーー!!!」

「裏山死んでくれないかな?」

「これで不純異性交遊がないとか……はっ」

「毎回見せつけられてる俺らの身になれってんだ」


 男子達の怨嗟が日に日に増していってるのは気のせいではないと思う。

 しかしスキルが悪さするんだから仕方がないと思うんだけどな。


「乃亜、大丈夫?」

「うーん、最近胸だけではあまり動揺しなくなってしまいましたね。マンネリ化してしまいました」

「その話は教室では止めよう」


 周囲の殺意のボルテージが異常なまでに上がってるから。


「こうなったら、太ももで顔を挟むくらいのハプニングがないとダメでしょうか?」

「ハプニングは意図して起こすものじゃないよ」


 あと性的興奮を感じないほど枯れてる訳じゃないし、必死に隠してるだけなんだから、あまり掘り下げないで欲しい。


「乃亜さんと蒼汰が毎回そうなるのは仕方ないとして、呼び出されたんだから早く職員室行くわよ」

「行こう、蒼汰君、乃亜ちゃん」

「分かったよ」

「分かりました」


 冬乃と咲夜に促されて、僕らは教室中の男子の視線を集めながら教室を出る。


「おいおい、待ってくれよ蒼汰。オレも呼び出されてんだから、一緒に行くぜ」

「さっきまでの大樹は怖くて、一緒に歩けなかったんだから仕方ない」

「むしろあれで怒らない男をオレは見てみたい」

「彰人だったら怒らないけど」

「アイツは生身の女に興味ないから論外だ」

「酷いな。ボクはただ二次元の女の子の方が魅力的に思えるだけだよ」

「「うわっ!?」」


 大樹と話していたら、後ろから気配を感じることなく彰人が現れるもんだから、ビックリしたよ。


「何で彰人まで一緒に付いて来てんだよ」

「面白そうだから」

「いや、職員室に行って面白いことなんてないでしょ。というか用もないのに職員室に行くのってどうなの?」

「そこはほら。元から先生に用事があったから、ってことでいいじゃん」


 彰人は暇なんだろうか?


「どちらかと言うと、2人を見ている方が面白そうだからかな?」

「心を読まないでくれない?」

「蒼汰が分かりやすいんだよ。ものすごく顔に出てたよ」


 嘘でしょ? え、そんなに僕って分かりやすい?


 そう思って乃亜達の方へと視線を向けると全員が苦笑い。

 え、まじ?

 今まで女の勘かと思ってたあれそれ、全部僕の顔に出てただけだったの?


「……そっか~」


 今までちゃんとポーカーフェイス出来てたと思ってただけに、ちょっとだけショックに思った。


 ちょっと放心している間に職員室へとたどり着いたので、早速僕らは入室し、ひとまず担任の大林の所へと向かう。


「すいません、大林先生。先ほど放送で呼ばれたのですが……」

「ああ。実はお前さん達にお客さんが来ててな」

「お客さん、ですか?」

「おう。まあおじさんもよく分からないんだけど、なんか冒険者学校の校長がお願いしたいことがあるらしいよ」


 冒険者学校?

 何でそんな所から?


 僕らはそんな疑問を頭に浮かべながら、とりあえず大林先生に言われるがまま、校長室へと連れて行かれた。


「ところで仲野はどうしているんだ?」

「面白そうだったからです」

「教室に戻れ」

「えー」


 いや、そりゃそうだよ。

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