第24話 スキルの大盤振る舞い

 

「〔仮初のシンボル 猫の紋章オブ ザ キャット〕!」

「ちっ、【典正装備】まで持ってるのか。つくづくイラ立たせてくれるやつだな」


 〔仮初のシンボル 猫の紋章オブ ザ キャット〕を使用したことで機械の猫耳と尻尾が生え、肉体が強化される。

 すでに機械化とチャイナ服姿なのにここでさらに猫耳と尻尾が追加され、属性の渋滞だ。

 自身の恰好がごちゃごちゃしていておかしくないかと少しだけ思いはするけど、今はそんな事を気にしている場合じゃない。


「今度は【典正装備】を持ってることへの嫉妬? あんたがユニークスキル持ちばかりターゲットにして【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】とろくに戦いもしないからじゃないか」

「あんなコスパの悪いものに挑む方が正気じゃないんだよ」


 そう言いながらもワタシ達は互いに武器を振るうのを止めない。

 まるで戦闘が初めからになったかのように同じ状況になった。


 しかし最初に遭遇した時は互角、むしろ向こうの方が人と戦いなれている分優勢だったけど、今はワタシの方が優勢だった。


「くそっ、速い!?」

「ここで畳みかける。[ファイナルギア]!」

「なっ、さらに強化だと?!」


 [フォースギア]によって青白く発光していた機械部が[ファイナルギア]で紅い光に変わり、さらに出力が向上する。


「……援護する。〔53枚のジョーカー理解不能な力添えサティスファクション〕」

『任せるのです。〔迫る刻限、逸る血潮アクセラレーション〕〈解放パージ〉5倍速』


 加速したワタシの攻撃に対応しようとしているところに、オルガとアヤメが攻撃に参加してきた。

 心情的には1人で倒したい気持ちもわずかにあったけれど、それよりも優先されるべきことは確実にこいつを今ここで倒す事だ。

 だから2人の支援はありがたかった。


「く、このタイミングで援護だと!?」


 サイラスはワタシでも目視するのが難しいほどの高速で飛ばされた無数のナイフを、なんとかジャンプして避けようとした。

 だけど避け切れなかったのか数本脚に突き刺さる上に痛みで隙が出来ていた。さらに――


「空中じゃこの攻撃は避けられない!」

「……ふっ!」


 ワタシの攻撃に合わせオルガがさらにナイフを追加で投げており、逃げ場もなければ攻撃を防ぐ手数も足りない。

 これで終わりだ!


「ぐっ、オレを舐めるな! [フィーバータイム][二段ジャンプ]。ちっ、[リパルション]!」


 まだそんなスキルを隠していたの!?


 空中で逃げられないと思ったのに、何もない空間を踏みしめて再び跳躍されワタシのレーザーブレードとオルガの投げたほとんどのナイフはかわされた。

 さらに時間差で放たれたナイフも[リパルション]、自身の身体に触れた物を反発させるスキルではじかれてしまう。


「くはははっ! やってくれやがったな!!」

「[フィーバータイム]なんて厄介なスキルまで持ってるなんて……!」


 [フィーバータイム]なんてほとんど店で出回らないようなスキルで、3000万はくだらないかなり高額なもの。

 たしかアドレナリンを過剰分泌させて痛みを無視できるようになり、さらに身体能力と回復力を最大まで引き出すスキルだったはず。


 でもそんなスキルを使ったということはそれだけ追いつめている証拠。


「はっ。思いっきりぶっ刺さってるな。よっと」


 もっとも[オートヒール]との併用でほとんどの傷はすぐに回復され、今も刺さったナイフを抜いた箇所の傷はみるみるうちに傷が塞がっているので、ダメージなんてないも同然か。


 これじゃあ傷が回復する前に攻撃を仕掛けても、痛みを感じない以上隙にもならない。


「だけど多少なり影響があるなら!」


 ワタシは地面を思いっきり蹴ると同時に[エクスターナルデバイス]の6本の翼の先端から紅い光を噴射させ、急接近して攻撃をしかける。


「ふはっ。さっきまでのオレと思うなよ!」

「なに!?」


 動体視力まで上がっているのかこちらの攻撃は完全に見切られており、レーザーブレードを振っても少し体をずらすだけでかわされてしまう。


「いくぜ[リパルション]!」

「ぐほっ!?」


 腹部を襲う強烈な衝撃を受け、ワタシは吹き飛ばさてしまう。


 ただの蹴りのはずがなんて威力だ!?

 [リパルション]の反発も合わせているのもあるが、[ファイナルギア]を使っていなければ気を失いかねない威力だった。


「これで終いだ!」

「しまっ!?」


 痛みに怯んだ隙に一瞬で接近され、サイラスのその手に持つ剣を振り下ろされそうになった。


「……させない」

「ちっ」


 オルガが放ったナイフはサイラスの急所であったためか、さすがに無視できず振り下ろそうとした剣でナイフを弾いた。

 [リパルション]を使わなかったのはインターバルのせいか?


 ワタシはサイラスがナイフを弾く隙に体勢を立て直して、オルガ達の元へと移動する。


「邪魔してくれるな。[マルチタスク][シャドウフィギュア]」

「また別のスキルか!?」


 一体どれだけのスキルがあるんだ。

 追いつめたと思ったのは勘違いだったのか? いや、あんな肉体の負担を無視するようなスキル、いくら鬼になってるからといってそう連発できるものじゃないし追いつめてる、はず。


 でも[シャドウフィギュア]で6体の影の人形を操ることで人数差の不利を補ってきたせいで、今のようにオルガからの援護は潰され、今度こそ本当にやられかねないか。


「……時間を稼ぐ。蒼汰達が来るのを待つべき」

『賛成なのです。あんなバーサーカーもどきと戦うにはもっと人数が必要なのです』

「くそっ。わかったよ」


 ワタシ1人ではどうにもならず、かといってこの2人の協力があったとしても倒せる確信は湧いてこない。

 それにサイラスがまだ何か手を隠し持っていないとも限らない以上、むやみやたらに特攻するだけ無駄だろう。


「ワタシが前に出る! 2人は援護を」

「……了解」

『分かったのです』


 少なくともこいつの足止めだけはしてみせる!

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