第10話 種類が増えた
戦闘が始まる前から気疲れしてしまったけど、せっかくのレベル上げのチャンスを逃す訳にはいかないので気合を入れる事にしよう。
もっとも僕は直接戦わないのだけど。
「それじゃあアヤメ出てきて」
『シャバの空気はうめえのです!』
「どこでそんな言葉覚えてくるの……」
スキルのスマホからピョンっと飛び出してきたアヤメが、大きく深呼吸してそんな発言をするので呆れるほかなかった。
そんなアヤメを驚きの目で見ているソフィアさんとオリヴィアさん。
昨日は見せてなかったし、いきなり2頭身の和服少女が現れたら普通は驚くか。
オルガは驚いているのかどうかは表情の変化が激しくないからよく分からないけど。
「な、なんなのその子?」
「この子は僕の能力の1つと思ってくれればいいよ。索敵なんかが得意でダンジョンの探索とかでは結構頼りになるんだ」
『えっへんなのです』
「今は外だからどれだけ役に立つかは分からないけど」
『しばき倒してやろうかです』
「こんだけ視界が開けてると敵の位置が丸わかりなんだから仕方なくない?」
じゃあ呼ばなければいいという話なのだけど、前みたいに土煙で敵がどれくらいか、どこに何体いるか分かりづらくなる場合もあるし、敵の位置を脳内に直接教えてくれるから背後からの不意打ちには役に立つはず。
「まあアヤメの事はともかく、そろそろ戦闘に入ろうか」
『この扱いの雑さ加減。嫌いじゃねえのです』
「アヤメは一体何を目指してるの?」
なんかもうネタに走ってるのは伝わって来た。
不貞腐れて索敵とかしてくれないよりは全然いいけど。
「それじゃあアヤメ、ここにいるメンバーにだけでいいから、敵の位置情報を教えて欲しい」
『らじゃーなのです』
「「きゃっ!?」」
「……!?」
頭に直接流れ込んでくる位置情報にソフィアさん達が少し驚いてるようだけど、すぐに慣れるから問題ないね。
「さて、今日は余力を残しながら戦う方がいいかな」
「そうですね。本番が午後からであることを考えると、ほどほどにしておくくらいがいいでしょう」
「でも、昨日もそんなに本気で動いてないから、昨日と同じでいいんじゃない、かな?」
「咲夜さんの言う通りね。私の場合はこの場から動かずにひたすら遠距離攻撃するだけだから、楽なものよ」
「魔石はほとんど拾えないけどね」
「……それは言わないで欲しいわね。昨日だって勿体ないって思ってたのに」
冬乃のある意味弱点といえるのが、遠距離から一方的に攻撃できるかわりに魔石が全く拾えないことだろう。
魔石があれば僕の派生スキル[ショップ]でスキルやアイテムに変換できるし、通常通り売ってお金に換えることもできるのに、それが魔物と一緒に吹き飛んでいるのだから勿体ないと思うのは仕方がない。
いくら大金を手に入れているとはいってもそれはつい最近のことであり、心は普通の庶民であるので、拾えるお金は拾っておきたいと思ってしまうのは仕方ないよね。
それはさておき今日もガンガン魔物を倒していこう。
◆
魔物を倒し始めて30分ほど経ったけれど、昨日とは少し魔物のラインナップが変わっているように見える。
というより、ちょっと種類が増えたって感じだ。
ロシア側にある〔ゴーレムのダンジョン〕からは昨日はロック、アイアン、ブロンズゴーレムだけだったのが、シルバーゴーレムが追加されていた。
1種類だけだし
冬乃が遠距離から吹き飛ばすし、乃亜達がブロンズゴーレムと同じように倒してしまうので違いがよく分からないけど。
なので〔ゴーレムのダンジョン〕から追加されたのは問題ない。
問題があるのは中国側にある〔レイスのダンジョン〕だ。
昨日はただの
リビングアーマーなら鎧なので的は大きいのだけど、リビングソードなどの武器に憑依しているタイプは小さい上に刃物が飛んでくるので、割と油断できない。
もっとも咲夜はそれがぶつかっても、何がしたかったんだろう? って感じで首を傾げてへし折ってたけど。
前もスケルトン達に槍で攻撃されても傷つかなかったから、剣が当たっても似たようなもんなんだね。
僕なら普通に貫通するよ。
「これなら昨日安全地帯を設置するために動いた方が良かったのかな?」
「どうかしら? 昨日は種類は少なくとも数が多くいたから、中央近くまでなんとかたどり着けてもそこで魔物を殲滅するのは厳しかったと思うわ。〈
初日と同じように容赦なく遠距離から攻撃を放ち続ける冬乃にそう言われ、確かにと思ってしまう。
『どの道今更じゃないのです? 今日試してダメなら安全地帯の設置なんてどうせ無理なんですし、そもそもご主人さま達じゃなくて、指示をする上の人間の言う通りに行動するんですから、失敗しても気にしなくていいのです』
「まあそれは確かに」
考えるだけムダだとアヤメに言われてしまったけど、僕らは依頼されてきているのでまさにその通りだ。
ただ、出来れば安全地帯の設置は上手くいって欲しいとは思うよ。
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