エピローグ2

 

≪蒼汰SIDE≫


「久しぶりだな、蒼汰。2週間ぶりくらいか?」

「あ~そんなくらいだっけ? ひどく濃い2週間だったから、数カ月ぶりな気分だよ」


 学校で久々に会った大樹が机に座っていた僕に笑いながら近づいてきた。


「また京都に行って今度は完全に【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】討伐したんだろ? ニュースでもお前の名前を見たぜ」

「……その辺りの事は後で詳しく話すから」

「なんか事情がありそうだな。分かった」


 大樹が小声で話す僕の様子に何かを察したのか、これ以上他の人も聞いてるかもしれない教室でこの話題を出さないでくれた。


 僕が最後に信長ローリーを倒したためか、あの後で危うく英雄扱いされかけたけど、そんな事された日にはこんな風にまともに日常を送れない事は明白だったので、あくまで討伐作戦に参加した1人という立ち位置になるようにしてもらった。


 ニュースでは名前だけのお陰で、僕の事を知っているクラスメイトくらいしか僕に話しかけてきてその時の事を軽く話す程度に止まり、外を歩いても変に話しかけられずに済んで助かっている。


「つまりまた昼休みにだね。分かったよ」

「「うわっ!?」」


 いきなり現れた彰人に驚いた僕らは思わず身体をのけ反らせて、声のした方に勢いよく首を振って視線を向けていた。


「おー、こんなに2人が驚いてくれるなんて、わざわざこっそり近づいた甲斐があったね!」

「いや、わざわざ驚かそうとしないでくれない?」

「気が向いたらね」


 これは絶対いつかまたやるやつだ。


 ――キーンコーンカーンコーン


「お前ら、席に着け~」


 チャイムと同時に担任の大林先生がやって来たのでこれ以上何も言えず、そのまま各々の席へと戻っていく。

 こうして久々の日常に戻れたわけだけど、まさかただ授業を受けているだけの日々に癒しを感じることになるとは思わなかった。


魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】のいるダンジョンだったし、僕自身がほぼ戦わないとはいえ、戦闘空間に身を置いていたからそれでストレスを意外と感じていたんだなぁ~。


 ちょっと日常の大切さを実感していたら、あっという間に昼休みとなったので場所を移動した後、大樹達にだけは何があったのかを詳しく説明した。


「ま、マジか……」

「わぁー、さすがにそれは何とも言えないね」


 脚色一切なし。ただ起きた事をそのまま話しただけなんだけど、あまりの出来事に目が点になっていた。


「いやでも凄いじゃないか。世間に知れ渡ったら英雄扱い間違いなしだよ」

「それが嫌だから内密にしてもらったんだよ」


 芸能人でもないのに知らない人に声をかけられるとか嫌すぎる。


「それに英雄扱いされて、じゃあこのダンジョンの【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】もお願いとか言われたらどうするのさ」

「世間って勝手だから、参加しないって言っただけで非難してくる可能性高いよな」

「蒼汰が有名になるのは面白そうだけど、そんな風に振り回される姿はつまらないから、蒼汰の判断が妥当だったね」

「そもそも僕があそこの【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】を倒せたのは、たまたま相性みたいなのが良かっただけで、他のダンジョンならSやAランクどころかFランクだって1人じゃ無理だよ」


 あのSランクダンジョンの【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】を討伐できたのは、あの時集まった冒険者の人達と自衛隊の人達がいたからであって、けして僕1人が成した事ではないのだからあの報道で良かったと思う。


「……ん? おい蒼汰」

「なに大樹?」

「何があったかは分かったが、それだけ活躍したならお前、レベルはどのくらい上がって報酬はいくら貰ったんだよ? ちなみにオレのレベルは241なんだがまさか……」

「あ、それはボクも気になるね。言える範囲でいいから教えてよ」


 言えない。

 すでに大樹のレベルを追い越してる事はとてもじゃないけど言えないし、報酬も一生ガチャができる金額を貰ったのも言えない。


 今回途中まで全く戦う機会がなかったためにその時まではレベルは変わっていなかったけど、最後に謙信が操る強力なスケルトン達の軍を冬乃が吹き飛ばしまくったのでレベルが大幅に上がったんだ。

 レベル差が大きく離れている相手がいるとその人に経験値が流れるのかレベルが上がらない事象はあるけれど、それはあくまでその人の影響があった場合に限る。


 冬乃が吹き飛ばした時には支援なんかはなかったし、スケルトン達にもデバフとかそういった影響は一切なかった。

 そして場所はSランクダンジョンの奥深く。後は分かるね?


 それに加え、信長ローリーを倒した時の経験値も凄かった。

 あれだけで一気に50レベル上がるとか、はぐれ〇タルかと言いたい。いやそれよりもっとすごいか。


 結果として今の僕のレベルは矢沢さん――冒険者学校で占有ダンジョンに2年くらいは通ってる人と同じくらいのレベルになってしまったんだ。

 しかし大樹達に変に秘密にしたくないし、レベルはこれから通うであろうダンジョンを考えると明らかに追い越しているのがバレるので、レベルに関しては言ってしまった方がいいかなぁ~。


「………………319」

「……は? お、おい、ちょっと待て。う、嘘だと言ってくれよ……」

「うわおっ。大樹よりレベル50以上あるじゃん」

「ぐふっ」


 レベルを聞いた瞬間、ガクガクと震えだした大樹が彰人の50レベル発言で崩れ落ちてしまった。

 彰人、こうなると分かってて言ったでしょ?


「じゃ、じゃあ報酬はどうだったんだ……」


 その辺は色々ややっこしくなっていたのだが、最初に提示された報酬が失敗しても1億で、成功報酬が5億だった。

 だけど途中からその金額の3倍払うと言われているので、討伐成功したこともあり15億。


 そして武将を1人倒すごとに10億貰えることになっていて、道三以外の5体(謙信が倒した2体も含む)は全員で挑んだので50億は全員で分配だけど、信長は僕が倒したので10億丸々総取り。


 そこにさらに他の【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】を討伐した時と同じように討伐報酬まであり、Sランクダンジョンの【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】は300億が分配される。


 討伐に参加した冒険者の人数は片瀬さんも含め55人。


 これらを踏まえた上で僕個人の報酬金額――31億3979万円


 うん、言えるはずがない。


「大樹。やっぱりお金の事を聞くのは友達だとしても良くないんじゃない?」

「あ、まあそうだな。ワリい蒼汰。言い辛いこと聞いちまっ――」


 あっ、助かったと思ったときだった。


「先輩、いつ結婚しますか? いつでもいけますよね!」

「乃亜ちゃん落ち着いて。まだ年齢が足りない」

「や、やっぱり全員一緒がいいから、乃亜さんが18歳になった時がいいんじゃないかしら……」


 おうっ……。

 とんでもないタイミングで3人が僕を探しにやって来てしまったぞ。


「……12億」


 大樹が嘆き崩れ落ち始めるけど、おそらく全体で12億と言っているのだろう。

 ゴメン、パーティー全体だと95億くらいあるんだ。


 こんなに国は払って大丈夫なのかと思わなくもないけど、迷宮氾濫デスパレードに備える予算が丸々浮くから、むしろこれでも安上がりなんだとか。


「くそうっ! オレもいつか絶対ハーレムを創ってやるからな~!!!」


 急に伏せていた顔を上げると、堂々とそんな事を宣言してきた。

 いや、うん、知ってる。


 大樹の気持ちは痛いほど分かるんだけど――


「僕は課金したいだけだから、まだまだレベル上げないと」

「あはは、ブレないね蒼汰は。もう十分お金は稼いだのに」

「残念ながらまだわたしも先輩もデメリットスキルの問題が解決していませんから、それまではダンジョンに潜ることになるでしょう」

「でも多分あと少しだよ、ね?」

「お金は足りてるから安全にレベルを上げていきましょう」


 まさか冬乃の口からお金が足りてるなんて言葉が出るとは思わなかった。

 いや、十分すぎるから確かにその通りなんだけど。


 あと100レベルも上げられればおそらく最終派生スキルを手に入れれるだろうし、ダンジョンに潜るのもそう遠くない内に必要なくなるかな?


 この予想が当たるか外れるか、できれば当たってくれる方が楽なんだけどな~。


--―-----------------------------------


・あとがき

7章終わった!

なんか最後凄い金額出てきたけど、まあ当然と言えば当然な金額ですかね?

信長が10億計算なのは不満な方もいるかもしれませんが、最初の取り決め上武将は武将なのでこれ以上報酬アップはないでしょう。

信長がクレイジーテラーの中核だったことを蒼汰が強く主張したらもっと金額は増えたかもしれませんが、30億近く貰ってるからこれ以上貰っても……という考えよりわざわざごねる気になれなかったという感じです。

ハーレムの条件であるお金は達成したので後は年齢だけ。

この物語の終わりも見えてきたか?


蒼汰)「いや、違うから。課金できてようやく終着点だから」

作者)『……もうよくない? ハーレムエンドだよ?』

蒼汰)「課金のない人生なんて人生じゃない!!」

作者)『可愛くて美人な女の子3人に囲まれてるのにその発言。作者が言う事じゃないけど狂ってるな~』

蒼汰)「色欲で僕を止められると思うなよ!」

作者)『実際止まらねえから開いた口が塞がらんのよ。怠惰にすら抗うとか読者もお前の精神力化け物扱いしてるぞ』

蒼汰)「鍛えられた課金戦士にとっては普通だから」

作者)『お前だけ違う世界線で生きてんの?』

蒼汰)「世の中課金戦士はいくらでもいるもんさ」

作者)『そんな世の中怖すぎるわ。まあ課金はともかくとして魔女の問題があるから、まだまだ終わる気配はしないけど』

蒼汰)「作者の過去最高長編になってますけど、まだゴールは見えないんですね」

作者)『期待してくれる読者がいるから広げた風呂敷が畳み終わるまでは頑張りたいのよ』

蒼汰)「畳もうとしてる先から広げなければいいのでは?」

作者)『それな。後でお前が忘れるために殴るけど、他国からのハニトラとかまた風呂敷広げちまったよ』

蒼汰)「やっぱりあの時殴ってたんですね」

作者)『忘れろ』

( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン

蒼汰)「ぼ、暴力反対!」

作者)『ちっ、耐性がついてやがる』

(、´・ω・)▄︻┻┳═一    ( ゜д゜)・∵. ターン

蒼汰)「………」

作者)『よし』

蒼汰)「い、今僕死にませんでした?」

作者)『気のせいだろ。さてそんな事より次章の予定だが……頑張れ』

蒼汰)「おい、何をさせる気なんだよ?」

作者)『安心しろ。決まってない』

蒼汰)「そのセリフが一番安心できないんですけど!!?」


はい、次章ハニトラしよっかなーぐらいの感じです。

……いや書きながら色々考えてたんですよ。

決まらなかっただけで。


次章早く出して読者達を驚かせたいと思っていましたが、やはり話を創るのは難しい……。

結局全然何にも決まっていないので次章はまた1週間後あたりからです。


ぶっちゃけプロットから新キャラまで考える事多くて大変そうですが、なんとか1週間以内には出したいですね。


追記:前話でコードネーム《ハーレム》にしていましたが、上位の冒険者はハーレム築いてる人多くて差別化できてなかったので、能力を踏まえて《スマホ》に変更しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る