第14話 ライバル関係

 

 剣を抜いた僕らはしばらく歩くと、人の何倍もありそうな大きな扉とちょうど人が通れそうな扉、そして看板が見えてきた。


「今度は何が書いてあることやら。出来ればマトモな事が書いてあるといいけど」


 僕が嫌な顔をして看板の方を見ていると、それに気付いたのかアヤメが僕の顔をよく見られるようにするためか、スクリーンに近づいてきた。


『ご主人さまは看板に何か嫌な事でも書いてあったことがあるのです?』

「碌でも無いことが書いてあった看板に従わないといけないことはあったね」

『本当にあったのですか……』


 その試練受けなかったらキミが生まれてこれなかったことを考えるとより複雑な気分になるよ。


 まあそれはともかく、今はあの看板だ。

 今度はなんて書いてあるんだろうか?


 ――――――――――――――――――


 聖剣をお持ちのパーティーは小さい扉を、持っていないパーティーは大きい扉を通ってください


 ※もしも逆の扉を通ったら……


 ――――――――――――――――――


 通ったらどうなるかの説明までキチンとしてくれませんかね!?

 脅しの仕方がホラーだ。


「看板に従うなら小さい方か。しかしそれが罠だという可能性もあるんじゃないか?」

「オリヴィアさんの言う通りその可能性は十分あるね」


 そう言われてしまうと素直に小さい方の扉を通るのは怖いと感じてしまう。


「ふ~ん。まあいいわ。小さい方の扉を通りましょ」

「「「分かりましたお嬢」」」


 僕らがどうしようか悩んでいたら、すぐ近くにいたパトリシアさんがあっさりと小さい方の扉を通ることに決めていた。


「いいのかパティ。そんな適当に決めて」

「だってこんなの悩むだけ無駄じゃない。

 もしかしたらうちらがさっき岩から引き抜いた剣が実は聖剣じゃなくて、大きな方の扉を通らなければいけないってひっかけの可能性もあるけど、これが聖剣かそうじゃないかなんて判別つかないわ。

 まあ一応これが聖剣だと思う根拠としては、剣の刺さっていた岩の前にあった看板の最後の注意書きに〖一パーティーにつき一本〗って書いてあったから、聖剣が複数ある前提の書き方かなって思っただけよ」


 適当に選んだように見えてちゃんと考えていたようだ。

 たしかにパトリシアさんの言う通りかもしれない。

 もしかしたら大岩に刺さっていた剣の中に1本だけ聖剣があるとか、そういう類のひっかけは色々思いつくけど、これ以上考えても埒が明かないのは確かだ。


 少なくとも今まで魔女の試練の中で姑息なひっかけはなかった事を考えると、ここは素直に看板の指示に従う方が良さそうかな?


「それでは私達も小さい扉の方に行くとするか」

「あら、なんなら大きい方の扉に行って確かめてきてくれてもいいのよ?」


 ニヤリといやらしく笑いながらこちらを、というよりオリヴィアさんを馬鹿にしたように笑うパトリシアさん。

 いや、あんな事言われてここで大きい扉を行く気にはなれないよ。


「さすがに何が起こるか分からないのに、そんなふざけた事できるわけないだろうが」


 オリヴィアさんも当然僕と同じことを思ったようで、眉をひそめながらそう言うと、パトリシアさんは肩をすくめて軽く息を吐いた。


「ま、そうよね。流石のあんたもそこまでバカじゃないか。

 それじゃあうちらは先に行くから、せいぜいうちらの後を追いかけて来るといいわ」


 そう言ってスタスタと小さい扉をパーティーメンバーと一緒に通ってしまった。


『む~なんなのですあの態度は』

『しかし不思議なヤツだの。扉の先に何があるか分からず危険かもしれぬのなら、普通妾達を先に行かせようとするだろうに、自分から先に行ってしまったぞ』


 たしかにシロの言う通りだ。

 何と言うか言動がちぐはぐで、一体何を考えているのか分からないよ。


「はぁ。すまない鹿島先輩達。パティはそんな悪い奴じゃないんだ。

 昔から私と張り合う奴で、私に対しては少しばかり口が悪くなるというか……。

 だから、その、すまん。私と一緒にいるせいで鹿島先輩達の気分を害してしまって」

『いや、謝らないで欲しいのですよ! 別に悪いのはオリヴィアさんじゃないのですから』

『娘の言う通りだぞ。それにあの程度、猫がじゃれているようなもので気にもならんよ』


 なるほどね。いわゆるライバル関係みたいなものなのかな。

 いや、オリヴィアさんの様子を見ると一方的な感じではあるけど。


 そういう関係だとみると、先に入っていってしまったのはオリヴィアさんよりも先に“嫉妬”の魔女を倒してやろうと考えての行動なのだろう。


「アヤメやシロの言う通り気にする必要はないんじゃない。それよりも早く追いかけた方がいいよね。

 僕ら戦力的には少し不安があるし、他の人達と行動を共にした方がいいだろうから」

「それもそうだな。よし、私達も行くとするか」


 オリヴィアさんが小さい扉の方を通り、それに続いてシロとアヤメ、そしてスクリーン――もとい僕が小さい扉を通っていた。





 ――ギイィ


 この時の僕らは気がつかなかった。

 隣の大きな方の扉が動いていたことに。



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・あとがき

はい、ちょっとスランプ入りました~、って言ってる場合じゃねえ!?

書くことは決まってるのに形にし辛い……

新キャラ入れたのがマズかったか? マイラはともかくパトリシアがなぁ~

10話の最後から書き直すか? いや、それをするのは……


とりあえず書くだけ書いてみます。パトリシアなんで出した?とか言われるかもしれませんが頑張ります

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