第30話 復讐が始ま……ん?
『聞くがよい現地人共!』
『我らはこことは異なる世界に住んでいた者達へ制裁を加えるため地上へと侵攻した!』
戦闘音が響く中、それでもなお虎人らしき男性と龍人らしき女性の声がハッキリと聞こえてきた。
『そちらが手を出さぬのであればこちらから手を出すことはない』
『だが我らの邪魔をするのであれば容赦はせぬぞ』
2人がここに来ている全員に警告するようにそう言った後、虎人の男が縛り上げた何かを地面に放り投げた。
『やれやれ。この者らが現地人を撤退させればわざわざこのような警告をしなくて済んだものを』
『先ほど期待していなかったと言っておったのによく言うの。それに最低限の目標は達成しておる』
『うむ。……しかしかつての同胞を見殺しにし、こうして生贄を殺すのは
『何を言うか。同胞とはいうが、あれらはもはやただの抜け殻であろうに。
それにコレに至っては纏っている【魔王】殿の力をはぎ取るために殺すがすぐに復活するのだから、妾達がされたこととは似て非なるものであろう。
なにせ妾達は死よりも苦しい目に遭わされたのだから』
あの2人が何を言っているのか分からなかった。
だけどあそこで異界の住人に制裁するための何かをするということだけがなんとなく分かった。
しかし【四天王】の2人とは距離があり大量の魔物に囲まれているため、僕らに出来ることはなく目の前の魔物を狩る事がせいぜいできることであった。
『では早速始めるとしよう。
愚者共に【魔王】殿から与えられた力、【百鬼夜行】。その核となる存在【ぬらりひょん】を殺す』
『それにしても姿を消すだけの存在が王だなどと、おかしな話よの』
『【魔王】殿に直接引き渡されねば我らとて気づかぬ存在だったから、ある意味王と名乗ってもよいかもな』
2人は今から目の前の存在を殺そうとしているとは思えないほど和やかな雰囲気だったけど、あくまでそれは雰囲気だけだった。
虎人の男は手の指を真っ直ぐと伸ばすと、そのまま【ぬらりひょん】を貫いた。
『さて、次だ』
『うむ、行くぞ。
同胞たちの死によりこの場に満ちたエネルギーと本来であれば武具となるはずのエネルギー、【魔王】殿はリソースと呼んでおったが、その力を用いて行う大魔法じゃ』
龍人の女がそう言うと【四天王】2人を中心に巨大な魔法陣が広がった。
「一体何をする気なんだ……!?」
その光景に僕らはおろか周囲の冒険者達はその警戒を一気に引き上げた。
だけど2人はこちらのことなど全く気にしている様子はなく、自分達がしていることに集中しているようだった。
『『縁を辿り、呼び寄せ、この地に縛れ。〝因縁鎖縛陣〟』』
巨大な魔法陣から光の柱が立ち上り、それが空まで到達するとその光は無数に枝分かれしてあらゆる方向へと飛んでいった。
「は?」
その内の2本が何故かこちらに向かって飛んできた。
「先輩!?」
「が、[画面の向こう側]!」
意味が分からず呆けていた僕は乃亜の声のお陰で咄嗟に回避行動をとること
「な、なんで!?」
しかし光は[画面の向こう側]で異空間へと避難しているのもお構いなしに、空間を超えて僕へと直撃した。
『〔
どうやら2本の内、もう1本はアヤメに飛んでいたのか。
本来であれば干渉できないのは僕だけではなくアヤメも同様のはずなのに、この光はそんなの関係なしに当たるようだ。
幸いにも今のところ痛みはないのだけど、一体何が――
『どうやら成功したようだな』
『これで上手くいかなかったら虱潰しに探し出さねばいけなかったの』
えっ?
気が付いたら物凄く近くに【四天王】の2人がいた。
しかもご丁寧に大量の鎖で体を縛られ、強制的に正座させられた状態でだ。
「なっ、どこじゃここは!?」
「わしは建物の中に避難していたはず……」
「光が飛んできたと思ったらいつの間にこんな場所に?」
それも僕ら以外の見た事もない大勢の老人たちと一緒に。
僕らの前に並んで同じように縛られているこの人達は一体何者なんだろうか?
『久しぶりだの』
『この世界に来て無駄に生きながらえていたようで嬉しい限りだ』
「「「き、貴様らは……!?」」」
どうやら虎人の男と龍人の女とは顔見知りのようだ。
もっとも醸し出す雰囲気からして、あまりいい関係とは言えないようだけど。
さきほど制裁を加えるとか言っていたし、この人達は異界の住人ということで良さそうだ。
……え、じゃあなんで僕らここにいるの?
さっきの魔法陣、この状況を見るに明らかに異界の住人、しかも特定の人物を呼び寄せるためのものだったよね?
じゃあなおさら僕らがここに呼び寄せられた理由が分からないよ!?
『覚えておるようじゃの。あの頃とは真逆の立場となったの。あの時からだいぶ月日が経ったせいで、すでに死んでこの場にはいない者もいるが、……ん?』
『どうしたシンディ?』
『うむ、いや、そこにおる者がの……』
シンディと呼ばれた龍人の女の人が縛られている人達を見渡した時、明らかにこの場にいるのがおかしい僕の存在に気付き指さした。
『『……誰だ貴様?』』
まあ、そうなるよね。
とりあえず僕らに限っては制裁を加えるために呼び出されたわけではなさそうなので、ひとまずホッとした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます