第29話 疎外感
サイラスの[自爆]で倒れた乃亜達に、僕は〔
「はぁ、やられてしまいました……」
「服でダメージが軽減するからって油断しすぎたわね」
「今はその服もボロボロだけど、ね」
「……ほぼ半裸」
先ほどワルキューレの衣装を着ていたソフィほどではないけれど、少なくとも大事な部分がギリギリ隠せる程度でかなり際どかった。
ボロボロになった服は、乃亜と冬乃はコスプレ衣装だったのでスマホをタップするだけで元に戻ったけど、咲夜とオルガは普通の服だったので[フレンドガチャ]から適当にジャージを取り出して渡す。
[チーム編成]の〈サポート〉じゃパーティーを組んでいない人物には〈武具〉と〈衣装〉の機能が適用されないのが本当に惜しいところだ。
そうでなければ咲夜もオルガもタップするだけで簡単に服が戻せたんだけどね。
「先輩、大きな布を下さい。咲夜先輩達、わたし達がそれで2人を周囲から隠しますので着替えてください」
「ん、助かる」
「……ありがとう」
僕は乃亜に言われるがままに乃亜に大き目なシーツを渡すと、冬乃とオリヴィアさんの3人で布を広げて2人を囲った。
「それじゃあソウタ。ワタシはコレを後方に連行していくからその間この場は任せたよ」
「分かったよソフィ」
「えっ?」
僕がソフィに返事すると、乃亜が訝し気な表情で僕とソフィを見てきた。
「先輩。どうしてソフィア先輩の呼び方が変わっているんですか?」
淡々と、しかし静かな圧を感じる話し方で乃亜は僕に問いかけてきた。
「あ、いや、その……」
何を言えばいい?
正直にさっき何をしていたか全て話すのはさすがにマズいよね……?
うん、ここはソフィに課金アイテムで力添えして好感度が上がった、もとい仲良くなったと言おう。
キスされたことは言わなければ問題ないはず。
「それはワタシが頼んだんだよ」
「ソフィア先輩がですか?」
しかし僕が何かを言う前にソフィが話し始めてしまった。
ちょっ、まっ!? せめて余計な事言わないで!
「ワタシがソウタの事を好きになったから、キスした後に愛称で呼んでもらうようお願いしたんだ」
「はいっ!?」
……終わった。
「え、先輩本当なんですか?!」
「……本当みたい。蒼汰自身キスされたことを考えていた」
しまった。
そもそも[マインドリーディング]のスキルを持つオルガがいるのに隠し事なんてできるはずなかった。
もう着替えが終わったオルガにジト目で言われ、言い訳が不可能なこの状況に焦ってしまう。
「先輩、浮気ですか?」
「え、いやそんなつもりは……」
背中から変な汗が出てきた。
こんなにも焦ったのはさっきみんながサイラスに倒された時以来だ。ついさっきすぎて背中がぐっしょりだよ。
僕が自分から浮気をしにいったわけじゃないとはいえ、キスした事が事実な以上言い訳もできないし、なんて言えばいいんだ……。
「ソウタを責めないであげてくれないかな。
ノア達に相談する前に
「……蒼汰のことが好きなのは本当みたい」
ソフィが僕を庇う様に乃亜達の前に立って堂々と自身の想いをぶつけると、オルガはそれ偽りのない本心だと告げた。
「う~ん、先輩の事を本気で好きなんですね?」
「そうだよノア。だからワタシもソウタのハーレムに入れて欲しいと思っている」
少し悩まし気な表情の乃亜がソフィの発言を聞いた後、冬乃達に視線を向けた。
「どう思います?」
「少なくともオルガさんが嘘じゃないって判断しているのなら問題はないわ。心情的には大問題だけど。また増えるのね……」
「咲夜は蒼汰君の事を本気で好きになっているならいいと思う、よ?」
「……ボクより先にキスされてズルい」
冬乃達はともかく、オルガのはハーレムに入る事とは関係ないのでは?
その後乃亜達はしばらく話し合いを続けた後、結論を出した。
「ソフィア先輩のハーレム入りを許可します!」
「ありがとう! ワタシの事は今後ソフィでいいよ。ソウタのハーレムメンバーにならそう呼ばれても構わないさ」
僕がほぼ口出しすることなくソフィのハーレム入りが決定した。何故だ?
「うむむ。なんというか私だけ疎外感があるな……」
「安心してよ。それは僕もだ」
この中で唯一ハーレム入りしていないオリヴィアさんが顎に手を当ててそんな事を言うけど、当事者の僕だって疎外感を感じているんだよ? 当事者なのにおかしくない?
「じゃあワタシはコレを後方に[自爆]とかで逃げ出すこともあると注意喚起して置いて来るよ」
「分かりました。その間私達はさっきまで通りこの場で魔物など倒しています」
ソフィはサイラスの脚を持って引きずって後方へと駆けて行った。
サイラスが何度も頭を地面に打ち付けているけど、それを止める間もなく行っちゃったよ。
まあ自業自得というか日頃の行いということで。
「鹿島先輩達のことはともかく、犯罪者集団はあらかた片付いたようだな」
オリヴィアさんに言われて周囲を見渡すと、確かに妖怪のような姿の人物はだいぶ少なくなっていた。
これは【百鬼夜行】と思わしき群団をある程度倒したから一息つけるかな、と思った時だった。
『さて、ほとんど倒されたようだの』
『ろくに露払いもできなかったがあの程度の奴らに期待などしていなかったし構わんだろ』
声量が大きいわけではない。
しかし離れた場所にいるはずの彼らだったが、その声はこの戦場にいる全員に確かに届いた。
『【魔王】殿の願いであの愚か者どもを雑に使えと言われたから、手を出さずに適当に戦場に放り込んだが大した成果などなかったな』
『仕方あるまい。そもそもあれらは妾らの手勢ではないのだから。
現地人にはこちらから手出しできないという制約がなければもっと有効利用できたかもしれないのにの』
『そうであるな。まあよい。ようやく我らの復讐が始められるのだから』
沈黙を保っていた【四天王】の2人がついに動き出した。
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