第14話 いつからラミアを雑魚だと錯覚していた?


「〈解放パージ〉!」


 早速放たれた炎は3体のラミア達の中心へと放たれ――


 ――ドオンッ!!


「「「キシャアア!?」」」


 床に着弾して爆発した衝撃をもろに食らった3体は、そのまま部屋の壁へと叩きつけられ、そのまま魔石に変わってしまった。


「「「「………」」」」


 倒した3体の事は気にせず、僕らは向こうの通路から来るであろうラミア達を待った。


 ………………………………ん?


「来ないね」

「来ませんね」


 しかしどれだけ待ってもラミアが現れる事はなく、部屋には魔石が3つ転がっているだけだった。

 恐る恐る部屋の中央まで入るけど、特に何かが来ることもない。


「気のせいだったのかしら?」

「冬乃ちゃんの[獣人化(狐)]は索敵専門のスキルじゃないから、間違えることもあるんじゃないかな?」

「そうかもしれないわね。ただ昨日までと違って今日は調子がいいから、あと数体はいると思ったんだけど……」

「そこまで正確さを気にしなくてもいいんじゃないですか? わたし達では全く索敵が出来ないので、大雑把に分かるだけでも凄くありがたいですよ」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど……」


 冬乃はどこか釈然としない表情をしていたけど、いないものはいないし、来ない以上ここでただ待っていても仕方がない。


「とりあえず魔石拾って、今日はもう帰ろうか」

「そうですね」


 そう言って乃亜、冬乃、咲夜がそれぞれ離れたところに落ちている魔石を拾った時だった。


 ――パンッ!

 ――パンッ!

 ――パンッ!


「「「きゃっ!?」」」

「えっ?!」


 突如部屋の中で響く破裂音に、僕は何事なのかと周囲を見渡すと、何故か乃亜達3人の上半身の服がボロボロになって際どいところは隠れているものの、部分的に肌を晒していた。


 だけどそんな事より、どこから現れたのか3体のラミアがナイフを持って3人の前に立っているのが問題だ。


「なっ! 一体どこから現れたの!?」

「いや、そんな事よりすぐに迎撃を――」


 ――パンッ!


「うわっ!」


 僕は背後から心臓辺りに何か衝撃が走ったと思ったら、服が一部弾けて前に吹き飛ばされてしまう。


「先輩、大丈夫ですか!?」

「問題ないよ!」


 衝撃に驚いたものの、咲夜に襲われた時にくらったほどじゃなく、肉体へのダメージは0と言っていい。

 しかし問題はいつの間にか、4体目のナイフを持ったラミアが僕の背後に現れたことだ。

 一体いつの間に?


「こいつら姿が消せるみたい」

「はいっ?」


 咲夜が素早く僕の目の前のラミアが追撃してくる前に、駆けつけてくれた。


「まるでカメレオンみたいに見えなくなる」

「なんだって?」


 本当にそうなのかと思って僕を攻撃してきたラミアの方を見ると、既に半透明になっていて今にも消えそう――って、消えた!?


「なっ!?」

「先輩、敵が見当たりません!」


 乃亜の言う通り周囲を見渡せば、既に僕ら以外この部屋の中には誰もいないように見える。

 僕らの中で唯一索敵出来る冬乃ならどうにかならないだろうか?


「冬乃は敵がどこにいるか感知できない?」

「なんとなくなら分かるわ」


 おおよそでしか気配を掴めないってことか。なら――


「すぐに撤退するよ。冬乃、大体でいいからいる場所に[狐火]を放って」

「了解!」


 冬乃が返事と同時に[狐火]を放ったので、すぐさま僕らは来た方向に駆けていく。

 冬乃が放った場所にラミアがいる訳だけど、丁度僕らが入ってきた場所に1体いるのか4発放たれた内の1発がそちらに向かっていた。

 牽制も込めて[狐火]を放ってもらったけど、このままじゃ少なくとももう1回奇襲されてしまう。

 仮にこのまま突っ込んでも乃亜の[損傷衣転]で肉体的なダメージはないけれど――


「乃亜、その大楯を前方に向かって思いっきり投げて!」

「分かりました!」


 ブオンっと風切り音と共に放たれた大楯は、途中で何かに当たったのか鈍い音を立てて明後日の方向へと飛んでいく。


「咲夜!」

「うん」


 僕は名前を呼んだだけだけど、僕が何をして欲しいのかすぐに察してくれた咲夜が、大楯の軌道が変わった場所にまるで瞬間移動のように瞬時にその場にたどり着くと、回し蹴りを放つ。


 ――ドゴッ!


 咲夜の蹴りがラミアを捉えたようで、姿を消すことも出来なくなったのか血反吐を吐きながら転がっていくラミアの姿が僕らの目に映った。


「このまま来た道を戻るよ!」


 蹴り飛ばされたラミアに止めを刺すことなく、素早く僕らはこの部屋から離れるよう駆けだしていく。


 それなりに離れた場所まで来た僕らは息を大きく吐いて深呼吸をする。


「ふぅー。冬乃、近くにはもういない?」

「多分、いないわ。それにしてもラミアってあんな風に姿が消せる奴がいたの!?」


 姿を消すのはカメレオンであって蛇じゃないと思うのは僕だけなんだろうか?


「レア個体でしょうか? ラミアアサシンはあんな風に完全に姿を消せませんでしたよね?」

「冒険者組合で調べ足りなかったかしらね。戻ったら1回確認してみましょ」


 ダンジョンの前に必ずある冒険者施設には、そのダンジョンで出る魔物の種類も調べれば分かるようになっている。

 だから初めて入るダンジョンは初めに確認してるんだけど、見逃したんだろうか?


「もしかしたら新種?」

「どうでしょう? しかし1度に4体も現れたことを思うと、咲夜先輩の言葉を否定しきれませんね」


 レア個体なら1度に見かけるのは1体程度だけど、新たに現れたばかりのまだ誰も発見していない新種であれば数がいてもおかしくない。

 何よりさっきのラミア達は完全に姿を消しての不意打ちだから、発見する前に冒険者がやられてしまって、報告が出来なかったのかもしれないね。


「乃亜のスキルがなかったらさっきので全滅だったよ」

「ホントそうよね。……ところで蒼汰」

「何?」

「いつになったら服を直してくれるの?」


 そう言われてようやく気が付いた。

 あられもない格好をしている女の子が3人、目の前にいることに。


「うわっ、ごめん!」

「先輩しか見てませんから気にしませんよ」

「蒼汰君ならおっけー」

「私は嫌に決まってるでしょ! 早くしてよ蒼汰」

「わ、分かってる」


 さっきまで新種のラミアで頭がいっぱいだったけど、半裸の女の子の姿には敵わなかったよ。

 僕の脳内はエッチな恰好になった3人の姿でいっぱいになった。

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