第6話 挨拶運動始めました
「おはようございます」
「えっ、あっ、ああ……」
「おはようございます」
「わっ、お、おはようございます」
「おはようございます」
「………おはよう」
「おはようございます」
「なあ、蒼汰」
「おはようございます。なに大樹?」
「もうおはようございますがまるで口癖みたいになってるが、こんなところで何をしてんだ?」
「おはようございます。決まってるじゃん、挨拶だよ」
「いや、そりゃ見れば分かるんだが……」
「あはは、蒼汰がまたおかしなことし始めたよ」
彰人がナチュラルに失礼なことを言う。
いつ僕がおかしなことをしたと?
「なんでもない朝にいきなり校門で1人挨拶運動してたら十分おかしなやつだろ」
大樹まで彰人の意見に乗っかり始めた。
まあ僕だってそれは自覚しているけど、
ここなら学校関係者じゃない人が通りかかっても挨拶できるし。
「おはようございます。とりあえず後ででいい? 今はできるだけ多くの人に挨拶したいから」
「何が蒼汰をそこまで駆り立ててるのか気になるところだが分かったぜ」
「ちゃんと後で説明してくれるならそれでいいよ~」
2人が校内へと向かうのをしり目に、僕は来た人間に対してひたすら挨拶を続けた。
◆
「それで何であんなところで1人挨拶運動をしていたんだい?」
教室に行くと早速彰人に捕まって説明を求められた。
「蒼汰があんなこと急にし始めたからもうすでに噂になってるぜ。ほら見ろよ。周りのクラスメイトが何であんなことしてたんだろって目で見てるぞ」
「あっホントだ」
僕が視線を向けるとサッと視線を逸らされるけど、間違いなく気になっているようだ。
「そんな有象無象の視線なんてどうでもいいから早く教えてよ~」
「彰人は相変わらず興味がないやつに対しては、たとえクラスメイトであってもひでえ扱いだな」
「だってどうでもいいし~」
「……なんでこんなやつが女子にモテてんだよ」
ハーレムが作りたいくらいに女性が好きな大樹としては、2次元の女性でなければ興味がないと公言している彰人がモテているのが納得いかないようだ。
「それで何であんなことしてたんだい?」
「率直に言えばスキルのためだよ」
「あれ? 蒼汰のスキルって[無課金]でしょ? 挨拶とはなんの関係もなさそう、と言うか無いよね?」
「休日前までは確かに無かったよ」
「んっ、じゃあもしかしてもうスキルが変質したのか!?」
「うん、大樹の言う通りだよ」
大樹の言葉を肯定して頷くと、大樹は有り得ないものを見るかのような目で見てくる。何故だ。
「いくらなんでもスキルが変質するのは早すぎだろ。だって講習に行ったのが土曜なら昨日1日だけでレベルを4、5は上げたってことだろ? 1人で行ってるはずなのに1日でそんなにレベルを上げるとかどんだけ無茶したんだよ」
「いやそんなに上げてないから。今のレベル2だから」
「それはそれであり得ねえ。たったレベル2にしただけでスキルが変質したとか聞いた事ねえぞ」
「蒼汰のスキルは一応ユニークスキルの枠だから普通のスキルとは変質するスピードが違うんじゃない?」
デメリットスキルも一応ユニーク扱いだから彰人の言う様に特殊なのかもしれない。
こんなユニークだったら投げ捨てたいくらいいらないんだけどね!
「まあそんな事より結局どんなスキルに変質したんだい? 挨拶がスキルに関わってくるとか意味わからなくて気になるんだけど」
「おい彰人。スキルの内容は無理に聞くもんじゃないだろ」
確かに講習でも、むやみに人にスキルを聞くのはマナー違反だと教わった。
教わったけどスキルを初めて習得した興奮か、パーティーを組んだ人全員が聞いてもいないのに教えて来るので教えないといけない空気になってしまったんだよね。
仕方なく教えて残念な者を見るような目で見られることになったけど。
「いや、大樹達にだったら構わないよ」
ただあの時の会ったばかりの人達と違って、この2人にだったら教えても構わないと思うほどに信頼しているので問題ない。
他の人間だったら言いふらしたりしそうだけど、この2人ならそれもないだろうし。
「僕のスキル[無課金]は、レベルが上がったら[ソシャゲ・無課金]に変質してたんだ」
「……変わらなくないか?」
「結局無課金なんだね」
「シクシク、そうなんだよ……」
まだレベル2だからなのかもしれないけど、課金できる日はいつになるんだろうか?
「[ソシャゲ・無課金]ってスキルと挨拶には結局なんの関係があるんだ?」
「ん、じゃあこのステータスを見て」
僕は2人にだけステータス閲覧の許可を出して見せる。
ステータスボードは自分以外には許可がなければ見れない仕様だから、教室で堂々と見せられる。
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鹿島 蒼汰
レベル:2
HP(体力) :21/21
SV(技能値):2
スキルスロット(1)
・[ソシャゲ・無課金]
→派生スキルⅠ:[フレンドガチャ]
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