第7話 [フレンドガチャ]

 

「なんだこのスキル?」

「初めて聞くスキルだね。どんなスキルなんだい?」


 2人が僕のステータスに映るスキルの名前を口に出さないように聞いてくる。

 一応教室で誰かに聞かれるかもしれないのを考慮してくれいてるのはありがたい。

 まあ[ソシャゲ・無課金]を持ってると知られても気にされないだろうから口にしたし、僕が先に喋ったからそっちの名前は2人も口にしたけどさ。


「こういうスキルだよ」


 だから僕はステータスボードのスキルのところをタップし、詳細が2人にしか分からないようにした。


 [フレンドガチャ]:挨拶1回につき1ポイント取得。(※同じ相手には1日1回のみ有効)

 10ポイント貯まると専用のガチャを1回回すことができる。


「いやどう言うスキルだよ!?」

「意味が分からないね」


 気持ちは分かるよ。

 僕だって初めてこのスキルを見た時意味が分からなかったもん。


「実際に見せてあげたいけどここじゃあね」

「あーそうだな。なら昼休みでいいか」

「まあしょうがないね~」


 しょうがないと言いつつ彰人が妙にソワソワしているところを見るに、早く知りたいけど必死に我慢しているのが見て取れた。

 僕だって早く回したいのを我慢してるんだから、彰人も我慢していてほしい。


 それからあっと言う間に昼休みとなり、昼休みにはほとんど人が来ない特別教室が集まっている第二校舎へと僕らは移動した。


「それで[フレンドガチャ]はどんな効果なんだい?」

「食いつきがハンパねえな」

「だって気になって気になって午前中の授業をろくに聞いてなかったんだよ?」

「いや授業はちゃんと聞こうよ」

「いいじゃないかそれは。そんな事より早く教えてよ」


 授業をそんな事扱いされてしまった。まあいいか。


「分かったよ。ただ口で説明するよりも見た方が早いでしょ。[フレンドガチャ]」


 そう言ってスキルを発動させると、普段使っているスマホとよく似たものが左手に出現する。


「蒼汰、スキルをこんなところで使っても問題ないのか?」

「大丈夫。冒険者組合で見てもらって丙種判定受けたから」


 16歳の時にユニークスキルを獲得せずにダンジョンでスキルを得た人であれば、ダンジョンの外では普通のスキルが使えなくなる人が多いけど、ユニークスキルを得た人はその制限はなく、ダンジョン外でも何故か普通にスキルが使える。

 そしてスキルの中には攻撃的なスキルも当然あり、そんなスキルを街中で使われると危険なので、冒険者組合で判定を受け、使用しても大して影響のないスキルに関しては使用が許可されるのだ。


「丙種ってことは危険度無しって判断されたのか」


 冒険者組合がスキルの危険度を甲種、乙種、丙種と分け、甲種は許可のない限り絶対にダンジョン外でのスキル使用が認められなく、乙種は1つのスキルで複数の効果を発揮しそれを分けて発動することができる場合、一部の効果のみダンジョン外でも使用可と認められたものだ。

 そして丙種が、危険度が無いためダンジョン外でも好きにスキルを使用してもいいとされている。


「そうだね。限定的なアイテムボックス、いやランダムボックスかな?」

「どう言うこと?」

「ほら、これを見て」


 そう言って僕はスキルで出現させたスマホの画面を見せる。


「……ガチャだな」

「ガチャだね~」


 よく見るソシャゲのガチャ画面のように、画面の真ん中にでかでかとフレンドガチャと記載されていた。

 そしてその下には〔1回ガチャ〕〔10連ガチャ〕の2つのボタンが存在している。


「スキルの説明にあった通り1回ガチャるのに10ポイント必要で、10連ガチャの方を引くと確定で1つはレアが出る仕様だね」

「やっぱガチャだな」

「そうだね~。それで一体何が引けるんだい?」

「うーんとね、ここに映っているのが昨日調べられた時に出てきた物かな」


 僕はそう言いながらスマホをスワイプして画面を切り替え、アイテム一覧を見せる。


「カレーパン、アップルパイ、牛乳250ml、お茶250ml、外套、マスク、軍手、スコップ、ってなんだこりゃ?」

「何と言うか見事に日用品でNノーマルって書いてあるね。あ、でもここに1個だけRレアがある。これが当たりなの?」

「なんだこりゃ? 成長の種?」

「これは何なんだい、蒼汰?」

「分からない」

「「はい?」」

「だから分からない。このフレンドガチャで出た物はこうして具現化できるんだけど――」


 僕はスマホに表示されている〔牛乳250ml〕をタップするとそこから光の粒子が溢れ、手の中に牛乳パックが現れた。


「へー面白いスキルじゃねえか。今そうやって取り出したけど、しまう事もできるのか?」

「いやそれは無理だね。1度取り出したらもう戻せないよ」

「なるほど。だから限定的なアイテムボックスなんだね~」

「十分便利なスキルじゃねえか。で、その成長の種が何で何か分からねえんだ? 取り出して鑑定してもらえばいいだろ」

「うん、大樹の言う通り、冒険者組合で審査を受けた時に焼きそばパンを取り出した後、成長の種が何かを調べる為に取り出そうとしたんだけど、何故かこれは具現化不可って出たんだよね。ほら」


 そう言って2人に見せながら〔成長の種〕をタップしたけどエラーと出て、『このアイテムは具現化不可能です』と出た。


「取り出せないなら危険はないと判断されたけど、この成長の種はスキルが成長していけば使えるようになると思うから、とりあえず今はフレンドポイントを貯めるため挨拶をしていくしかないんだよ」

「……毎朝やるのか?」

「やるよ。なんなら休日も外を出歩いて挨拶運動するよ」

「メンタル鋼かよ」

「これが強くなるためのキーアイテムになるならなんだってするよ。ポイント貯めてガチャをするんだ!」

「そこはぶれないんだね~」

「じゃなきゃ朝からあんな行動できないよ」

「むしろガチャの為だけにあんな行動できる蒼汰がすごいぜ」


 たとえカスみたいなラインナップのガチャでもレアが出るなら何かに役立つはず!

 それに日用品が大量にゲットできるならその分お金を貯めて武器を買う事もできるようになるし、恥をかいてでも十分価値がある行動だよ。

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