第8話 階層の更新と不思議なパーティー

  

 レベルが上がり、スキルが変質してから1週間経ったけどそれ以降、レベルが未だに上がっていない。


 ほぼ毎日の様にダンジョンに行きゴブリンを狩りまくっているけれど、10体倒してレベルが2になった時に比べ、すでに30体以上ゴブリンを狩っているはずなのに一向にレベルが上がらない。


「レベル1で1体、レベル2で10体ならレベル3になるのに100体とか言わないよね?」


 今もダンジョンに潜って必死にゴブリンを狩っているけど、嫌な予想をしてしまいゾッとしてしまった。

 このペースだと仮に100体ならあと2週間くらいかかることになるし、レベル4になるには1000体になるから、スキルがまた変質するようになるのは大分先かと思うとウンザリしてくる。


 そんな嫌な考えを振り払い探索を続けると、まだこちらに気づいていないゴブリンを見かけたので、すかさず手に持っていた短剣を投げつけた。


「グギャッ!?」


 短剣はゴブリンの足に軽くかすっただけで牽制にもならなかった。


「ギッ、ギャ……?」


 だけどゴブリンはその身体をふらつかせ少し苦し気な表情をしたので、すぐさま僕はゴブリンへと駆け寄り、手に持っている木刀を全力で叩きつける。


「ギギャッ!?」

「ふぅ。レベル2に上がって身体能力が上がったお陰か、前よりも少ない回数木刀を叩きつけるだけでゴブリンを弱らせられるようになったね」


 あっさりとゴブリンを動けなくさせることができた。

 これならレベルが上がっていけば、わざわざ武器を持ち替えて止めを刺さなくて済むようになるかな?


 そう思いながら、僕は投擲して足元に落ちていた[フレンドガチャ]で出たレアアイテム、〔毒蛇の短剣〕を拾ってゴブリンへと止めを刺す。


 [フレンドガチャ]を回し続けた結果、いくつか出たレアアイテムの中に武器まで混ざっていた。

 流石に武器が出て来るのは危険だろうと思い、一応冒険者組合へと報告したらその程度なら問題ないと言われたけどね。

 冒険者が武器を持って移動するのは普通なので、もしも武器を具現化する場合は武器が入ってると分からないケースにでも入れれば問題ないらしい。

 結構規定が緩いな。


 ちなみに〔毒蛇の短剣〕は傷つけた相手を毒状態にして動きを鈍らせるというもの。

 しかし毒は時間経過ですぐに治ってしまうので、この武器で傷つけて逃げ回れば相手がいずれ死ぬ、と言ったことはないし魔物によっては効かないのでそこまで便利なものではない。


「でも投げつけて少しでも相手を傷つけられれば、安全に木刀を叩きつけられるから悪くはないかな」


 ちなみにこう言ったマジックアイテムと呼ばれる物の類は、アドベンチャー用品店で売られている。

 魔物からドロップアイテムとして出たポーションなんかも売られており、もしもこの〔毒蛇の短剣〕を買おうとすると3万はするので得した感はある。


 ゴブリンが光の粒子となって魔石を落とした時だった。


 ――ピロン『レベルが上がりました』


 レベルアップの告知音が聞こえた。

 しかし前回の様に勝手にステータスボードは開かれない。


「やっぱり連続ではスキルは変質しないかー」


 そう呟きながら僕はステータスボードを開くけど、案の定レベルアップにより数値が若干増えただけでスキルは何も変化がなかった。


「まあいいや。少なくともゴブリン1000体狩らないとレベルが4にならない訳じゃないと分かっただけでも良しとしよう」


 それにしてもレベル2になってゴブリンを狩り始めた時に思ったけど、レベルアップは結構身体能力が上がるみたいだね。

 ステータスボードにその数値は出てこないから具体的には分からないし、実際にゴブリンを狩ってみて確かめるしかないのだけど。


「よし、それじゃあまたゴブリンを探そう。それで調子が良さそうなら2階層にも行ってみようかな?」


 僕は魔石を拾うとすぐさま他のゴブリンを探し始めた。

 幸運にも近くにいたようで、僕はいつものように〔毒蛇の短剣〕を投げて怯ませた後に木刀でボコ殴りにした。


「あれ?」


 さっきと同じ様に殴ったはずなのに2回も殴ったら動かなくなってしまった。


「さっきは5、6回も殴ってようやくだったのに……。これなら2体同時くらいだったらいけるかな?」


 まるで暴漢にでもあったかのようなゴブリンに止めを刺した後、2階層へ様子見しに行く事を決める。

 ダンジョン内の地図は冒険者組合で売られており、それをスマホにダウンロードしているので、2階層への階段にはすぐに辿り着けた。


「1人でも大丈夫だよね……」


 さすがに少し不安に思っていると――


「はあ、ホント最悪」

「ご、ごめんなさい……」

「ちょっとタカシ、いくら何でもここ数日この有様じゃやってらんないわよ」

「そうだな。いくら汚れていい服とは言え毎回これじゃ……」


 僕と同じ年くらいの少女2人、少年2人のパーティーが階段から現れた。


 微妙に険悪な雰囲気を醸し出しつつ歩いており、しかも装備、というか服が異常なまでにボロボロになっていた。

 だけど服がボロボロな割にそこから見える肌は傷1つないのが不思議だった。


 不思議には思ったけれど、僕はそのパーティーを見送り2階層へと向かう事にする。


「罠か何かにハマったのかな? 気を付けなきゃ」


 しかしそんな心配など無用だったとでも言うように罠はなく、ゴブリンが2体セットでうろついているのを狩る事に成功した僕は、今後の狩場を2階層へと移すことに決めた。


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