第9話 モンスターハウス
狩場を2階層へと移してからさらに2週間が経ち、僕は順調にゴブリンを相手に狩り続けた。
「ダンジョンの魔物が1種類しか出てこないし、罠も全然ないからありがたいね。そうじゃなかったらここまでソロで来れないんじゃないかな?」
レベルもさらに1上がって4になり、当たり所が良ければゴブリンを1撃で倒せるようになったため、段々ダンジョンでゴブリンを狩る事に慣れていった。
そう。
罠がないと思い込んでいた2階層だけど、どの階層もとある罠が時折出現する。
下の階層に行くほど出現率が高く、逆に上の階層なんかではほぼない罠。
僕はいつものようにダンジョンを探索し、扉のある部屋へと入ってゴブリンやアイテムがないかを確認していた時だった。
――ブーブーブー!!
「なっ、なに?!」
開けたままでいた木の扉がバタンッと閉じ、入り口の周囲に無数の魔法陣が現れ、そこから入り口を塞ぐようにゴブリン達が大量に現れた。
「うそっ!? まさかここ、モンスターハウス!!?」
ダンジョン内の罠は決まった位置になく毎日変動するため、買った地図には載っていなかった。
だけどモンスターハウスは入り口の扉に小さいマークがあり、それに気がつけばこの罠は回避できたはずなのに……!
「「「「グギャー!!」」」」
何十体と出てきたゴブリンの内、近くにいた5体のゴブリンが襲ってきた。
今まで2体ずつ相手に戦ってきたのに、いきなり5体同時で戦わないといけなくなるなんて思ってもいなかった。
軽く現実逃避しかけた思考を振り払い、1番近くまで接近してきたゴブリンに対して両手で持った木刀をその頭上へと叩きつける。
「ギャッ!」
結果を見る間もなく次のゴブリンが襲ってくるので木刀を片手で持ち、〔毒蛇の短剣〕をナイフケースから引き抜き、どこでもいいから当てることを意識して斬る。
ここまではいつもの流れで、本来であれば毒で怯んでいるゴブリンを無視して倒れているゴブリンに止めを刺した後、一対一で確実に仕留めるのだけど、さらにここから3体目が僕を襲う。
そのゴブリンが振ってきた木の棒を避けるも、何も持っていない4体目が跳びついてきて避けきれず、腕でガードするとその腕にしがみついて防具の上からでもお構いなしに噛みついてきた。
「くっ、放せ!」
「グギャッ」
木刀を持っていた方を噛みつかれたのが幸いし、短剣をその首へと突き刺して倒せた。
もしも嚙まれたのが逆だったなら木刀じゃ精々柄部分で殴るしかできず、倒すこともできなかっただろう。
だけどそれに安堵する暇もなく、5体目と先ほど木の棒を振ってきた3体目が襲ってくる。
「くそっ、死んでたまるか!」
僕はまだガチャがしたいんだよ!!
◆
あれからどれだけ戦っただろうか。
部屋の隅に陣取ることで、向こうは5体ずつしか襲ってこれず、しかもろくな武器を持っていないけれど、僕は5体同時に戦うのに慣れていないし防具で手足の隠れきれてない箇所を噛みつかれまくって、痛くてしょうがない。
ずっと戦っているような感覚だけど、落ちている魔石を見る限りまだ13体ほどしか倒せていないようだ。あと何体いるかだなんて数えたくもない。
「「「「グギャー!!」」」」
腕も足も痛くてしょうがないけど、動くのを止めればゴブリン達の餌食になってしまう。
「……ドッキドキでワックワクのお食事ターイムってか。はは、笑えないねー」
推理ゲームのとあるマスコットを思い出してしまった。
こんな馬鹿なことを考えてもいないと目の前の現実に心が折れてしまいそうだ。
折れたと言えば、何体目か忘れたけど木刀を叩きつけたら折れてしまった時は本当に焦った。
今は[ソシャゲ・無課金]で手に入れたシャベルを、ゴブリン達に纏わりつかれて噛みつかれながらも取り出して、今まで使用していた木刀の代わりにしている。
[フレンドガチャ]を回してこれが
昔戦争でシャベルを武器に白兵戦をした話を聞いた時はそんな馬鹿なと思いもしたけれど、実際武器として意外と使えるよ。
「2体まとめてぶん殴れるしね!」
「「ギャッ!」」
うん、ホント使える。
問題があるとすれば――、
「はぁはぁ、僕の体力が持たなくなりそうなことくらいか」
絶え間なしにゴブリンが襲ってくるのでずっと戦い続けないといけない。
いくらレベルアップして身体能力が上がったとはいえ、体力が無尽蔵に増えた訳じゃないからかなりしんどい。
「いい加減、休みたい」
[フレンドガチャ]で出た
一番多く出たのが〔成長の種〕だけど、用途不明で何の役にも立たないし。
「ああ、本当にヤバい……」
唯一の出入り口はゴブリン達が肉壁となってて通れないし、無理に通ろうものなら間違いなくしがみつかれて押し倒される。
いくらゴブリンが子供と同程度の体格とは言え、何十体、いや5、6体も圧し掛かられたらまともに動けるかも怪しい。
その後防具のない箇所、特に首なんかにかじりつかれたら出血多量で間違いなく死ぬ。
けれど、このままゴブリン達と戦い続けて体力が無くなって動けなくなったら結果は同じだ。
だったら賭けてみるしかないか。
そう覚悟を決めようとした時だった。
――ドカンッ!!
突然扉が爆発したかのように吹き飛んで、扉の前にいたゴブリンもそれに巻き込まれた。
「なっ、一体何が……!?」
僕が疑問に思い入り口へと視線を向けると、そこには狐の獣人が立っていた。
「助太刀はいるかしら?」
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