第14話 シュッ、シュッ、シュッ
ガチャを回した後、それぞれ装備を変更して先ほどと違う黒い渦へと潜っていく。
武器や防具にはよくよく調べるとレア度が存在していたけれど、今のところ全てレアで多少の攻撃力や防御力の違いに過ぎないのでそこまで気にする必要はなかった。
ちなみに雑貨は全てノーマル扱いである。まあ妥当か。
武器に関しては全員攻撃力の高い方にシフトさせていたけれど、防具を変えたのは冬乃だけで、バニー服からシスター服に変えていた。
さすがにいくらコスプレ衣装に慣れたとはいえ、布面積が大きい服の方がいいに決まってるよね。
バニー服はエッチな感じだったけど、シスター服に狐耳とか清楚可愛くて、むしろこっちの方がいいまである。
「……シスター服出たらボクも着る?」
『シスター服が好きとかそういうわけじゃないから、オルガはオルガの着たい物を着ていいんだよ』
その小学生みたいな恰好も似合ってる……いや、これは誉め言葉にはならないか?
「……蒼汰が気に入ってくれてるなら誉め言葉」
先ほどよりも心をガッツリ読まれるようになってしまっているのは、今度はオルガに抱えられているからだ。
まあ今更だし読まれたところで気にしないけど。
でも出来れば僕の思考を口に出さないようにしてね。
「……分かった」
さて、オルガ達の恰好はともかくとして、今いる場所だ。
先ほどの黒い渦の先にあったのは寺だったけど、今来ている所は木々が生い茂った自然に満ちた場所だ。
木がここまで沢山あるのを思うと、ここは【ヤ=テ=ベオ】でも関わっているんだろうか?
寺だった場所がどう見ても【織田信長】が関わっているのは明らかなので、僕が今まで関わってきた【
……この大量の木の中から【ヤ=テ=ベオ】を探せって、えぐすぎない?
『ここってあの木の【
「そうですね。幸いにもわたし達に直接攻撃して来ませんし、攻撃は交互に行えますから奇襲されるのを警戒する必要がないのだけはありがたいですが」
「でも代わりに探すのが大変よね。下手したらここじゃなくて別の空間の可能性もあるから、探し回っても骨折り損のくたびれ儲けになりそうよ」
ウンザリとした表情の冬乃だけど、どこか楽しそうに敵を探しているのは〈クエスト〉をこなせばポイントを得られガチャが出来るからだろうか?
ガチャの楽しさに目覚めたのであれば、僕としても同志ができて嬉しいかぎりである。
「「「ギャッ」」」
「ん、敵が現れた」
『ゴブリンでしょうか? 初めて見ましたね』
またも人数ピッタリの敵が僕らの前に立ちふさがり、咲夜とアヤメが即座に反応していた。
もっとも現れたゴブリンはこちらが何かするまでただ棒立ちでいるだけなので、そこまで慌てなくてもいいのだけど。
しかも武器も防具も充実している乃亜達の相手じゃないし。
スケルトン達の時と同様に数回殴られたらあっという間にやられてしまい、ドロップアイテムの〔成長の種〕を落としていく。
「サクサク敵を倒せるのは悪くないですね」
「〔成長の種〕は〈ガチャ〉では出ないのが残念よね。出て来る雑貨は飲み物や食べ物だったり毛布とかだし」
『さっきウサギと猫が本来なら【アリス】を見つけるまで出られないとか言ってたし、雑貨は救済用だったのかもね』
僕がこの分身ではない本体であれば食べ物や飲み物くらい、ここにいる人数くらいなら一月以上は余裕で出せるけど、今はいないからね。
そういうのが〈ガチャ〉から出て来るからわざわざ外から持って来たり、取りに戻る必要がなくてありがたいよ。
「「「ギャッ」」」
「……また出た」
進むたびに割と高頻度で現れるゴブリンを倒し続け、〔成長の種〕で強化された乃亜達のキャラクターはますます強くなっていった。
だけど〔成長の種〕が僕のスキルを参照しているなら30個が限界のはず……。
〔成長の苗〕を落とす敵も探さないといけないのだけど、どこにいるんだろうか?
その考え通り、ゴブリン達を倒し続けて〔成長の種〕で強化していったら全員が30個上限で限界がきてしまったので、〔成長の苗〕をドロップするような敵はいないか散策していた時だった。
――シュッ、シュッ、シュッ
どこからかあまり日常では聞き覚えの無い音がかすかに聞こえてきた。
「……どうしたの?」
『あ、オルガ。いや、なんだか何かを磨るような音が聞こえてきた気がして』
「音ですか? そんなの全然聞こえませんが……。冬乃先輩は聞こえますか?」
「いいえ。スキルを手に入れて音に関しては人より敏感になったと思うけど、何も聞こえないわよ」
冬乃がそう言い切るけど、僕の耳には確かに聞こえてくるんだ。
実際今もそれが聞こえるし、耳を塞げば聞こえなくなるから幻聴だとは思えない。
「……どっち?」
『ん?』
「……確かめるのが早い。どっちに行けばいい?」
「確かにオルガ先輩の言う通りですね。行ってみましょう」
僕の耳がおかしくなったと疑わずに、まずは確かめてみようと言ってくれた乃亜達は僕の指示に従いそっちに向かって歩きだした。
――シュッ、シュッ、シュッ
「あ、本当ね。確かに何か聞こえるわ」
しばらく歩いた後、真っ先にその音に反応したのはやっぱり冬乃だった。
「ん、聞こえる」
「そうですね。何の音でしょうか?」
『なんというか、少し落ち着く音なのです』
「……不思議な音」
冬乃に遅れ、乃亜達も音が聞こえてきたようで、その音を目指して全員が向かった先にいたもの。それは――
『ふふっ。どうして私はこんな場所で墨を磨っているんですかね……?』
泉の傍でボソボソとぼやきながら墨を磨る、真っ黒なワンピースを着た見覚えのある半透明の女性がそこにいた。
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