第42話 お仕置き
オリヴィアさんがクロへと攻撃を仕掛けるも、クロは素早く動いてその攻撃を躱していた。
『クロちゃんばかりにかまけていいのかしら?』
「ちっ!?」
サラはクロがオリヴィアさんの攻撃を避けると同時にその手に持つ槍を振るってくるので、オリヴィアさんは低い姿勢で前転して槍を回避する。
『ほらまだまだ行くわよ!』
「くそっ!」
サラは自身でも攻撃が効くようになったとこぼしていたのに、反撃されることを恐れることなくクロの機動力を利用して果敢にオリヴィアさんを責め続けていた。
オリヴィアさんはその攻撃を一撃も受けてはいけないだけあって、それを必死に躱している。
下手に受け止めるだけでも、受け止めた武器の方が壊れそうなパワーはヤバい。
単純に膂力が強いだけがこんなにも厄介だなんて。
これがもしもスキルのような力を使って強化しているのであれば、強化前に[Now Loading]や[メンテナンス]で一時的に封印できるのにそれができないんだよね。
『どうしたの? その程度じゃ攻撃が効くようになっても意味ないわね!』
さすがにオリヴィアさん1人ではキツイか。
こうなったら仕方がない。
僕は[画面の向こう側]を解除して外へと出る。
「何をしている鹿島先輩!? 危ないぞ!」
「僕だけ安全な場所にいてもこの状況はどうにもならないよ。[助っ人召喚]咲夜」
乃亜か冬乃なら7分間召喚していられるので、【典正装備】は使えなくとも有用なスキルによる援護ができるから少し悩むところだけど、やはり咲夜を呼んでクロを倒して機動力を削いでおきたい。
できればそのままサラも倒せれば言う事ないのだけど、〝臨界〟の10秒間でいけるか?
「咲夜、〝臨界〟を使用し、クロを倒せ。その後サラにもできるだけダメージを与えるんだ」
鬼の姿に変わった咲夜が青いオーラを纏いながらクロへと襲い掛かる。
たったの10秒。
されど弱体化している【白虎】相手には十分すぎた。
凄まじい轟音が3回聞こえた後、サラはクロの上から吹き飛ばされ、クロはひび割れた地面に泡を吹いて倒れていた。
『ナイスお仕置きじゃ』
「別にそんなつもりはなかったんだけど」
監禁されて妻と子供に冷たい目で見られ、とどめに咲夜の全力の攻撃を受けるとか、もう今日のクロは散々だなぁ。
『ぐあっ!? な、何なのこの化け物!?』
そんな散々なクロとは違い、サラは本気の咲夜相手に耐えていた。
僕の目には咲夜の動きは目で追えないくらいすさまじい身体能力を発揮して攻撃しているのに、あの咲夜の攻撃を受けてもサラはまだ立っていた。
さすがにクロもいたし10秒では決めきれなかったようだ。
だけど僕らから離れた場所でサラは槍を杖にして息を荒げているので、相応のダメージを負わせたはず。
『あ、危なかったわ……。あと一撃受けてたら昇天してたわね』
「ならばそのまま逝ってしまえばいい!」
『っ!?』
僕から見ても明らかに隙だらけのサラの死角からオリヴィアさんは剣を振り下ろす。
『ぎゃっ!?』
先ほどはまるで通らなかった攻撃が今度は通った。
サラは咄嗟に倒れこむように転がることで致命傷は回避していたけれど、避け方が悪かったのか足を斬られていた。
「よし、私の攻撃でも通るな!」
『や、やってくれたわね……!』
先ほどまでとは対照的に、オリヴィアさんは自身が有利になり攻撃が通ったことに喜び、サラはクロを倒され、その上自身の足まで斬られたことで完全に機動力を奪われたことに対して悔しそうにこちらを睨んでいた。
これならいけるか?
そんな甘い考えはあっさりとひっくり返されることになる。
『モルガン――いえ、女神
「な、なんだ?!」
サラの背後の空間に突然亀裂が走り、まるで何枚ものガラスを一気に叩き壊したかの様な音がした次の瞬間、亀裂から2頭の赤い馬とそれに牽かれた戦車が現れた。
何なんだあれ?
感じる威圧感が半端ないよ……。
『わたしの正真正銘の奥の手、モリガンの戦車よ。足をやられたからって動きが鈍ると思ったら大間違いね』
「モリガン……だと?」
『ええそうよ。モルガンは戦争の女神であるモリガンと同一視されることもあるの』
いくら【
【モルガン・ル・フェ】というキャラクターからそんなものまで引っ張ってくるなんて反則だよ!
『とんでもないものを出しおってからに。先ほど最初から全力でいくと言っておったのは嘘であったか』
『フヒッ、嘘じゃないわ。だって馬なんて呼んだらクロちゃんに乗れないじゃない』
『何を言っておるんじゃ。クロなんぞに乗るよりもよっぽど強そうではないか』
『確かにそうね。でもクロちゃんに乗ってると――嫉妬されてテンションが上がるから本気が出せるわ!』
サラの試練、趣味が全開すぎる……。
そのお陰でここまで来れたとも言えるし、その分苦しまされたとも言えるけど。
『クロちゃんも倒された今、わたしに残った最後の力。これで正真正銘出し惜しみ無しよ!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます