第43話 開拓された性癖
サラの正真正銘出し惜しみ無しという言葉に嘘偽りはなかった。
というか、初めからこれをされていたら僕らは間違いなく殺されていたほどの力を馬と戦車は有していた。
「[瞬間ブースト][ハードスキン]!」
『フヒッ、そんなもので躱せるはずも防げるはずもないでしょ!』
2頭の馬に牽かれる戦車に乗って、サラはオリヴィアさんへと何度も突進を仕掛けていた。
それに対し、オリヴィアさんは[聖騎士]の派生スキルや〔
「ぐっ!?」
だけど馬や戦車は躱せても、戦車に乗っているサラが振り回す槍がその体を掠めてしまっていた。
それでもまだ槍だけならマシだった。
「あの馬と戦車、木々などの障害物をなぎ倒したり吹き飛ばして、気にせず向かって来るから厄介すぎるよ!」
吹き飛ばされた木や岩が粉々になってその破片が飛んでくるから、そのせいでオリヴィアさんは[シールドコート]によるバリアは破壊されてしまうし、僕は木などを盾にして隠れていないと被弾してやられてしまう。
『くっ、相手が隠れたりするのであれば妾も役立てるのじゃが、あんな脳筋戦闘する相手では大したことはできぬ!』
「無理しないでシロ。少しでも気を引いてくれるだけでも助かってるから」
サラがオリヴィアさんを攻撃しようとした時、シロがサラの近くで声をかけることで意識を逸らさせていた。
そのお陰でオリヴィアさんはまだやられないで済んでいる。
しかし[画面の向こう側]を使っていない僕としては疑問でしかない。
「それにしても何でオリヴィアさんばかりに攻撃しているんだ? 僕の方にはほとんど攻撃を仕掛けてこないだなんてどういうつもりなんだろう?」
僕らの戦闘での役割はさっきモルドレッドと戦っているところを見て知っているだろうから、もしも仮に僕が敵の立場だったら真っ先にオリヴィアさんを援護、強化している僕を狙うと思う。
今は[画面の向こう側]を解除して外に出ていて狙うことが出来るから尚更だ。
そう思ってサラへと問いただしたら、思ってもいない回答が飛んできた。
『フヒッ、決まってるじゃない。まずは女の方を動けなくして目の前で男を寝取るためよ!』
「こ、こいつ、本格的にNTRに目覚めてる……!?」
クロとシロで味を占めたのか、もしくは自身の中で越えないようにしていた一線を越えてしまったせいか、目覚めてはいけないものに目覚めてしまっていた。
もうここでサラを止めないと、今度は結界がカップル限定になって軒並みNTRることになるぞ!
……この逼迫した戦闘中にしょうもない事を考えさせるんじゃない!
くっそどうでもいい事に思考を割いてしまったし、別にそんな試練になったところで知った事ではない。
そもそも次なんて考えている余裕、今の僕らにはないのだから目の前の事に集中しなければ。
[助っ人召喚]も[動画視聴]も今日の分はすでに使い切っているから、僕に残されている攻撃方法は限られている。
問題はサラが戦車に乗っているせいでそのほとんどが不可能だということだ。
元から攻撃手段が少ないのもあるけど、〔
というか、もっと使い勝手のいい攻撃手段が本当に欲しいよ。
『フヒッ、いつまで逃げ切れるかしら!』
「くそっ!」
サラに一方的にやられている状況をどうにかしたいけど、いい手段が思いつかない。
もうサラに何かしらのギミックや奥の手なんかはない事を自白してしまっているし、これなら後は〔典外回状〕の〔
サラが嘘を言っていない事前提になってしまうけど、仮に嘘だったとしても相応のダメージは与えられるだろう。
問題は戦車に乗ってるせいであんな高速でヒットアンドアウェーされるから、すぐに射程範囲から外れるために攻撃が当てられないことだ。
〔
それに一撃必殺な〔典外回状〕だけあって、一撃しか放てないから空ぶったら最悪だから慎重にならざるを得ないし。
オリヴィアさん狙いなのは分かっているから、オリヴィアさんの近くに行って[画面の向こう側]を使えれば、サラが近づいて来たタイミングで解除して攻撃できるというのに……!
[画面の向こう側]がある程度[チーム編成]に登録している人物の近くでしか使用できないからなんとかしてオリヴィアさんに近づきたいけど、飛んでくる木や岩が厄介すぎる!
「ハアハア、さすがにマズいな……」
『フヒッ、寝取られる準備は十分かしら?』
かなりヤバいこと言ってる自覚あります?
ちょいちょいサラがおかしなことを言うせいでいまいちシリアスが保てないけど、追い掛け回されて息を荒げているオリヴィアさんとしてはそんな事気にしている余裕はないだろう。
早く何かしら手を打たないと。
『見つけたのですよ!』
『っ!? またお前なの。振り切ったのにまた現れるだなんて!』
どうしようかと思っている時だった。
先ほどサラから逃げる為に自らサラの足止めをしてくれたアヤメがいいタイミングで現れた。
いくら振り切ろうともこんな派手に木々や岩を破壊して暴れていれば、アヤメもこっちの居場所が分かるよね。
「アヤメ、こっちに!」
『えっ!? わ、分かったのですよ!』
アヤメがサラの妨害をしなくてもいいのかという顔でこっちを見たけど、すぐさま僕の指示に従ってこちらに来てくれた。
よし、これならいける……はず!
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