第40話 攻撃が効かない、ってまたこのパターンか!?
オリヴィアさんは攻撃が効かずに動揺してしまい、逆に致命的な隙をさらしてしまった。
けれどサラはオリヴィアさんの攻撃を防いだことにすら気づいていないのか、まだ視界を塞いでいるアヤメをどうにかしようと手で振り払っていたお陰で、攻撃されずに済んだ。
『ああもう邪魔!』
『そう簡単に離れてやらないのですよ!』
アヤメにどうやっても干渉できない以上、アヤメよりも素早く動いて引き離すしかない事にまだ気づいていなくて助かった!
『おい、ここは娘に任せて今の内に逃げるのじゃ!』
「わ、分かった!」
シロに言われ、オリヴィアさんはすぐさまサラのいる方とは逆へと駆けだして行く。
アヤメを置いていくことに多少後ろ髪を引かれなくもないけど、今のアヤメは誰にも干渉されないので問題はないだろう。
『ああ!? 逃げられた!?』
生い茂る木々を利用して隠れるように移動していると、遠くの方でサラの叫ぶ声が聞こえてきた。
僕らを見失ったようだけど、まだ近くにいるのだから油断は出来ない。
出来る限りコッソリと移動している僕らの背後では、憂さ晴らしなのか木々が薙ぎ払われる轟音が響いているのだから。
「ここまで移動すれば大丈夫かな?」
「そうだな。少なくとも木がへし折れるような音はもう聞こえてこない」
サラから逃げきれたオリヴィアさんは少し休憩するために、木を背にして座り込む。
『安心するがよい。あやつが近づいてくれば妾が主様達に教えるがゆえ、今は存分に休むがよいぞ』
「すまない。助かる」
アヤメとシロのどちらも索敵という役割が被っているなと内心思っていたけれど、アヤメがこうして離脱している間、シロがカバーしてくれるからありがたい。被ってるとか思ってゴメンね。
「はぁ。それにしてもなんだあれは? 攻撃は無茶苦茶だし、防御も尋常じゃないぞ。私達だけであれに勝てるのか?」
オリヴィアさんがいつになく弱気な発言だ。
もっともそう言いたくなる気持ちも分かる。
なにせ確実にクリーンヒットしたと思ったら、相手が攻撃が当たった事にすら気づいていない様子だったのだから堪ったもんじゃない。
ただあの様子を見る限り――
「また何かのギミックかなぁ?」
「分かるのか鹿島先輩?」
【
【泉の女神】が攻撃完全無効で地面に広がっていた水を汚さないといけなくて、【ミノタウロス】が特殊な短剣を刺すことで防御力を下げないといけないギミックだった。
その辺りの経験から察するに今回の場合だと――
「やっぱりその聖剣だよね」
試練の途中からずっと持ち運び武器として重宝してきた聖剣。
とても切れ味がよく、モルドレッドの時には特効効果でもついていたのか、聖剣で攻撃した時にはかなりダメージを与えれた代物だ。
「…………ああっ!? しまった。あまりにも使い勝手がいいから使い続けてしまったが、アーサー王はカムランの戦いの後に聖剣を手放している。
つまりこの聖剣ではあの魔女に傷をつけられないということか?」
「もしくは聖剣を返還しなければ攻撃自体が効かないのかも。さっきアヤメが〔
『なるほどの。しかしそうなってくるとその聖剣をただ捨てるだけではダメということか?』
聖剣をその辺に放置しても、サラへの攻撃無効は継続する可能性が高い。
聖剣から一定の距離離れれば問題ないのであればいいけど、さすがに今まで相対してきた【
「アーサー王伝説をなぞらえている事を考えると、聖剣は魔法の湖に投げ込まないといけないよね」
「しかし鹿島先輩。そんな湖は一体どこにあるというんだ?」
この島から出られないということは島のどこかに魔法の湖があるはずだけど、問題はこの島がパッと見かなり大きい事だ。
とはいえ、ある程度見当はついている。
「さっきサラから逃げようとした時に、サラが僕らの進路を塞いだよね?」
「何故そんな話を? いや、確かにそうだがそれがどうかしたのか?」
「その時サラが『これ以上
もしあの時、僕らをただ逃がさないようにしたいのであればこんなセリフにはならないはず。
そもそもこの空間からはサラを倒さないと出れないと言っていたのだから、逃げたとしても待っていれば勝手に襲ってくると分かっているので、どこに行こうとも気にしないだろう。
もしかしたら単純に、島の奥に移動して隠れようとするんじゃない、という意味で言ったのかもしれないけど、どう考えてもその方向に逃げられたら困ると言っているように聞こえるんだ。
だから僕は魔法の湖があるとしたら、さっき向かおうとした方向にあるんじゃないかとオリヴィアさん達に伝えると、2人は揃って頷いた。
いや、シロは球体だからそんな素振りに見えるだけなんだけど。
「正直当てもないし、鹿島先輩の意見に従おう」
『そうだの。幸いにもこの島にはあの女以外の生物は索敵した限りではおらんし、歩き回って魔物に襲われることもないから魔法の湖を探してみるかの』
最悪聖剣から一定の距離離れることで攻撃が通じるようになる可能性も念頭に入れつつ、僕らは一先ず魔法の湖を探すことにした。
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