第25話 このツンデレさんめ
≪冬乃SIDE≫
「はぁ~」
「ヘイ冬っち! その素敵な狐耳をヘタらせてどうしたんだい? そんな正しいことを言ったはずなのになんで自分が怒られないといけなかったんだろう、みたいなため息を吐いて?」
「あんた実はダンジョンに潜ってんじゃないでしょうね?」
「あいにく無免許さー」
学校に来て早々、昨日あの女の子に何故怒鳴られてしまったのか理由が分からず机に頬杖をついて悶々としていた私に、友人の桜が絡んできた。
この友人は少し鬱陶しい面もあるけれど、なんだかんだで話は聞いてくれるからこのタイミングは丁度いいわ。
「あんたさ、ハーレムってどう思う?」
「おや珍しい。冬っちはその手の話題が好きじゃなかったのに。昨日何かあったのかい?」
「ふぅ、実はね――」
私は大まかにだけど昨日の出来事を説明した。
「そりゃ冬っちが悪いさね」
「なんでよ!?」
「じゃあ聞くけど、もしも冬っちが自分の家族を馬鹿にするような発言をしてきた人がいたらどうする?」
「燃やす」
「返す敵意が半端ねえっすわ。でもつまりはそう言うことなのさ」
「どう言うことよ?」
桜が言っている意味が分からず困惑してたら、こめかみ当たりを指でトントンと叩いて人を小馬鹿にするようなムカつく表情をした。
頭大丈夫? って言外に示してんじゃないわよ。
「……燃やしたい」
「やめてマジで」
だったら無駄にもったいぶってんじゃないわよ。
「冬っちが会った女の子って、小柄で首の根元で髪を二房に分けてる子でしょ?」
「なんで分かるのよ」
「さっき冬っちがうちの学校のハーレム野郎と一緒にいた女の子って言ったから、十中八九その男子は鹿島蒼汰で、女の子の方が高宮乃亜だからさ」
「なんでそれだけで私も名前までは知らない人が分かるのよ」
「冬っちがハーレム野郎と言うのは森大樹とそのパーティーメンバー、あとはその友人くらいさ。だけどあの森とパーティー連中がダンジョンで女子と一緒にいることはまずないさ。
さらには高宮ちゃんが鹿島をダンジョンに誘いに行った過程で、昨日クラスメイトに追い掛け回された話は耳にしてるからこれで確定」
「相変わらずどこでそんな話を聞いてくんのよ」
「耳さ~」
「殴りたい」
「やめて。冬っちに殴られたらマジで死んじゃう」
じゃあふざけるの止めなさいよって言いたいところだけど、それを止めるとこれのアイデンティティーが99%失われるから無理か。
「おや? 今サラッと褒められたような?」
「変な電波受信してないで、その高宮って子だったらなんだって言うのか説明しなさいよ」
「高宮ちゃんの家はハーレムなのさ」
「なんですって?」
「高宮ちゃんはハーレム家庭だけあってお金持ちだけど、幼少の頃から普通の学校に通っていたから、その時から周囲には散々ハーレムについて冬っちが言ったような事を言われてきたのは想像に難くないさ。
それでもあれだけ真っ直ぐに成長して家族を好きでいるのだから、かなりいい子だと言っても過言じゃないさ」
「ホントどっからその情報仕入れてくんのよ……」
それにしてもそうだったのね……。
はぁ、悪いこと言っちゃったな。
「謝らないといけないわね……」
「普段素直じゃないくせにこういうところでは素直なのが冬っちのいいところさ」
「うっさいわね。私だって悪いと思ったら謝るくらいするわよ」
そう言って数日経ったけど未だに謝ることができないでいた。
「やっぱり素直に謝れないツンデレさんだったのさ」
「余計な解説いれないで! 仕方ないじゃない。避けられるんだもの!」
下級生のクラスに行っても教室にいないし、廊下で見つけて声をかけようとしてもダッシュで逃げられるのよ……。
って、誰がツンデレよ、誰が!
「そりゃ間接的にとはいえ家族を悪く言った相手には近づきたくないさね」
「どうすればいいのよ……」
「それでも謝ることを諦めないのが冬っちのいいところさ。まあそれなら高宮ちゃんじゃなくて鹿島の方に近づけばいいさ」
「なんでよ?」
「将を射んとする者はまず馬を射よってよく言うさ。ここ最近の高宮ちゃんはダンジョンに行かない日ですら放課後鹿島に会いに行っているのさ。だから鹿島に仲介してもらって謝ればいいさね」
うっ、それもちょっと……。
「ちなみに冬っちが散々ハーレム野郎って言ってる鹿島だけど、ハーレム願望どころか結婚願望すらないことをついでに教えとくさ」
「よ、余計に話しかけにくくなるような情報を……」
やっぱりダンジョンに来てたんじゃないのかと言いたくなるくらい的確に私のメンタルに刺さる情報をピンポイントで寄こすわね。
「おやおや~、どうしたのかな? そんなハーレム野郎ハーレム野郎と連呼してた相手が実は全くその気じゃないことを知って、そっちの方にまで謝らないといけないことに気が付いたかのような表情をして~」
ニタニタと凄いムカつく顔で近づいてきた。
「ていっ!」
「ぐへっ!?」
あまりにもムカつくから思いっきりデコピンしてやったら、バチンッと想像以上にいい音を立て桜の頭がのけ反った。いい気味よ、ふんっ。
「うぐお~、冬っちメチャクチャ力が強くなってるんだからガチで叩くのは勘弁してほしいさ」
「だったら人をおちょくるのを止めなさいよ」
「私に死ねと?」
「人をおちょくるのが呼吸みたいな位置づけなのね……」
さて、本当にどうしようかしら。
「そんなに悩むんだったらダンジョン前で待ち伏せしてみたらどうさ?」
「なんでダンジョン前なのよ?」
「一緒にダンジョン行こうぜ! って誘うとか?」
「謝れてないのによりハードルが高いことできる訳ないでしょ!? 思い付きで適当な事言ってんじゃないわよ!」
くっ、これ以上この馬鹿に変な助言をもらって引っ掻き回されるくらいなら、まずは確実に鹿島の方から謝りに行こう。
とりあえずもうすぐ昼休みが終わって授業が始まるので、高宮さんが鹿島に会いに来ないであろう休み時間を狙って会いに行こうと心に決めた。
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