幕間 高宮乃亜(3)

 

「それはスキルのせいだろうな」


 帰ってすぐさま、スキルが生えて以降こんな目に遭うことをお父さん達に相談したところ、そう返答されました。

 わたし自身もそうだろうなと思っていたので、やっぱりとしか思いませんでしたが。


「ちなみにどんなスキルなんだ?」


 正直家族でも、いえ家族だからこそ言いづらいスキル名でしたけど、ここで言わないわけにはいきませんでした。


「……[エロゲ体質]」

「「「えっ?!」」」

「……すまん乃亜。もう1回言ってくれないか」

「だから[エロゲ体質]……」

「マジ?」

「マジだよ」

「……名前と今まで起きたことから察するにデメリットスキルか。だがこのままだと普通の生活はもはや不可能だろうな」

「そうね~、もしも乃亜が就職するにしても女性だけの職場でないとトラブルの元でしょうし」


 亜美お母さんが頬に手を当てながら困ったわね~とでも言いたげな表情をし、他の家族もみんなそれぞれがどうしたものかと思い悩んでいた。


「いっそずっと家にいるとか? 金ならあるぞ――イテッ!?」

「馬鹿か。それだと乃亜を閉じ込めると言ってるのと変わらないだろうが」


 柊お母さんがお父さんの頭を叩いていたけど、さすがに擁護できません。

 わたしだってずっと家にいるのは嫌ですよ。


「そうね~さすがに乃亜に不自由な生活を強いるのはちょっとどうかと思うわ」

「い、いっそ冒険者になるのはどう?」

「「「え?」」」


 穂香お母さんからとんでもないことを言われて、思わず全員がそちらへと視線を向けていました。


「ス、スキルはダンジョンでレベルを上げれば変質するから、乃亜ちゃんのスキルも効果が変わる可能性は十分あるわ」

「むっ、だが冒険者は男の方が数が多いし、それこそスキルでトラブルが起きる危険が――」

「駄目よあなた。トラブルを恐れてたらいつまでも乃亜は不自由なままだわ。それにこう言うことは本人が決めることよ。

 乃亜はどうしたい?」

「わたしは……冒険者になりたい」

「「乃亜!?」」


 お父さんと柊お母さんから驚きの目で見られるけど、スキルを恐れて家から出ないなんて絶対に嫌だ。なによりわたしは――


「元々冒険者にはなろうと思ってた」

「いいのかよ乃亜? お前が思ってるほど冒険者の活動は甘くねえぞ」

「分かってるよ柊お母さん。心配してくれてありがとう」

「むむっ、ならここは父さんが一緒に付いて行って――」

「行ったらてめえに経験値がほとんど行くじゃねえか!」


 どうも冒険者同士でパーティーを組む際にレベルが離れすぎていると、その経験値はほとんどが高い方へと移ってしまうらしく、レベル差が50以上もある者と組むとほぼ確実に起きる現象らしい。


「くっ、ならせめて乃亜が必要な装備は金に糸目を付けずに用意しよう!」

「まあ妥当なとこだな」

「き、気を付けてね乃亜ちゃん」

「いつでも相談に乗るから頑張ってね」

「うん、ありがとう、お父さん、お母さん達!」


 その後冒険者になってから大変でした。

 講習でレベルを上げた際、すぐに派生スキル[損傷衣転]を会得したことでその時にパーティーを組んだ相手とそのまま組んでもらえましたが、しばらくしたら損害を無視できなくなり、パーティーを追い出されて1人でレベル上げをしなければなりませんでしたから。


 冒険者として1人でレベルを上げ続けることも、デメリットスキルで起きるエッチなハプニングと付き合っていかなければならないのも大変でしたが、今はこのスキルが生えてきたことに感謝の念しかありません。

 なにせ先輩と出会う事が出来ましたから。


 最初に先輩に会った時はゴブリンからわたしを助けてくれた紳士的な人という印象でした。

 なにせあの時のわたしは半裸でしたけど、外套マントをかけてくれた上にわざわざ反対側を向いてわたしを見ないようにしていたのですから。


 その後、先輩と一緒にダンジョンの外に出るまでの間、前のパーティーとは比べ物にならないほどノビノビと戦えて、とても楽しかったことが印象に残っています。

 先輩のスキルで強化され、さらには服の心配がいらなくなったのですから。

 わたし1人で戦うこともできましたが、先輩も共に戦ってくれていました。


 レベル差とスキルの強化で先輩との戦力差はかなり開いていましたが、それでも一緒に戦ってくれている先輩を見てると、お母さん達の気持ちが少し分かった気がします。


「頼りがいのある人、か」

「どうしたの高宮さん?」

「いえ、なんでもありません」

「そう?」


 この人となら一緒にいて安心できる。

 そう思ったからお母さん達はお父さんと結婚したんですかね?


 この時はまだ先輩に対してハッキリとしない漠然とした気持ちを抱えていましたが、ある時を境にしてそれは一変します。


「ああ言う家庭は何というか温かみがあっていいよね」


 ハーレムを散々悪く言われた後、先輩にそれをどう思っているのか聞いた時に返ってきた言葉。


 ハーレムに対して俗物的ではない、羨ましいでも妬ましいでもなく温かい。

 そう思ってくれている、そう答えてくれた先輩が、幼少期に散々言われたからかいの言葉を払拭してくれたようでした。


 この時、わたしは明確にこの人に恋をしたんです。


 そしてようやく、ここ最近わたしがエッチなハプニングが起きるのが先輩だけな理由も分かりました。

 スキルがわたしの心情を読み取ったのか、好意のある相手にのみこの現象が作用しているようです。


 幸いにも先輩は申し訳なさそうにしながらも、ちょっとまんざらではないようなので、先輩と距離を縮めるうえではナイスハプニングと言えるでしょうが。


 そんなわたしが好きになった先輩ですがご自身の家庭環境はどうやらあまり良くなく、結婚にはあまり気が進まない模様。

 大丈夫です、先輩。

 わたしのうちを温かいと答えてくれた先輩となら、きっと良い家庭が作れるはずです!


 目指せハーレム!

 頑張りましょ、先輩♪

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