幕間 高宮乃亜(2)


 お父さん達にハーレム宣言をした日から、わたしはどうすればその夢を実現できるか考え続けました。

 だけど1人で考えてもいい考えは浮かんでこないので身近な人に相談することにしました。


「お父さん達はどうして結婚することにしたの?」

「それはもちろん愛し合ってたからで――」

「そうじゃなくて、普通は1人だけとしか恋人になったり夫婦になったりしないのに、どうして一夫多妻でいようと決めたの?」

「あっと、それはだな……」


 お父さんが言い淀んでちゃんと答えてくれませんでした。

 何故でしょう?


「乃亜、お父さんはあなたにハーレムを作ってほしくないのよ。抵抗しても乃亜の意思は固いから無駄なのにね」


 クスクスとお父さんの様子を見ながら微笑ましそうにしていましたが、わたしは頬を膨らませて怒ります。


「むぅ~、お父さんはハーレム作ってるのにわたしはダメとか酷い! もうお父さんには聞かないもん」

「の、乃亜~。分かってくれ乃亜。たとえそれが娘が望んだことでも親としては認められないことが――」


 なにやらうだうだ言っていましたけどスルーして亜美お母さんに聞くことにします。


「亜美お母さんはどうしてお父さんと結婚しようと思ったの? やっぱりお金?」

「のっ、乃亜!?」

「う~んそりゃあお金を稼いでいることは重要だったけど」

「亜美!? 子供の前で何を言ってるんだ!?」

「お父さんハウス」

「ここ俺の家なんだけど!?」


 会話にちょくちょく割り込んでくるお父さんを黙らせて亜美お母さんの話に耳を傾けます。


「お父さんとは冒険者として稼いでいる時に一緒にパーティーを組んだことがあるのよ。その時の印象が頼りがいのある人で、この人だったら私を守ってくれるって思わされちゃったのよね」

「へえ~! 亜美お母さんも冒険者だったんだ!」

「私だけじゃないわよ。柊と穂香も一緒のパーティーメンバーだったのよ」

「柊お母さんと穂香お母さんも……」


 柊お母さんはちょっと男勝りなところがあるからまだ分かるけど、まさか少し引っ込み思案なところがある穂香お母さんもだとは思わなかったです。


「お母さん達は高校の時からの親友なんだけど、高校3年だった当時は就職難でみんな就活に失敗しちゃったのよ。その時も今と変わらず、ダンジョンは危険だけど手っ取り早くお金を稼げるからもういっそのことダンジョンで稼ごう、って穂香が言うからそれに賛同したって感じかな」

「うそっ!? あの穂香お母さんが言ったの?」

「ふふっ、信じられないかもしれないけど穂香が提案して私がそれに乗っかって柊が一番最後まで渋っていたわ」

「えっ、逆じゃないの?」


 どう考えてもあの柊お母さんなら、真っ先にダンジョンに行こうと言ってもおかしくないくらいにアグレッシブな人なのに。


「柊は自分のことならともかく私達も一緒だから慎重だったのよ。まあそれはともかく、3人で順調にダンジョンを攻略していたんだけど、ある時ちょ~っと危ないことがあってそれを助けてくれたのがお父さんなの」

「あーまぁ確かにあの時は大変だったよな」

「それで3人ともお父さんに惚れちゃったわけだけど、色々話し合った末にお父さんが法律上全員と結婚できる条件を満たしてたから、もう全員で結婚しちゃおうってなったの。参考になったかしら?」

「うん、ありがとう亜美お母さん!」

「乃亜。ほら、何と言うか、ハーレムを作れる人間になるには条件が結構厳しいから現実的にせめて1人の男とだな……」

「お口に物理的にチャックをつけてからどうぞ」

「それだと喋れないんだけど!?」


 亜美お母さんからどうやってハーレムを作ったのか聞いたわたしは納得しました。

 なるほど。冒険者からハーレムになるって方法があるんですね。


 その考えが頭の片隅に残ったまま高校生になり、16歳の誕生日を迎えた日のことでした。


「[エロゲ体質]? えっ、なんですかこれ?」


 この訳の分からないスキルが何なのかを家に帰るまでに身をもって体験させられることになるとは、この時は露程も思わなかったのです。


「わっ!?」

「ご、ごめんなさい!?」


 何もないところで躓いて男性に抱き着いたり、


 ――ドンッ


「ん、なにこれ?」

「きゃっ!」


 曲がり角で男の子とぶつかって押し倒した際に胸を触られたり、


 ――ヒュー


「あっ」

「っ!!?」


 突風が吹いて後ろにいた男子にパンツを見られたりしました。

 家に帰るまでの間に男の人とのエッチなハプニングが起きるようになってしまったんです。


「なっ、なんでわたしばかりこんなエッチな目に遭わないといけないんですかーーー!!!」


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