第24話 恩は感じなければ仇で返していることにならない?
サラの合図とともに宣言通り光の壁が消えたので、オリヴィアさんはすぐさま扉のあった方へと駆け出した。
判断が早い!
『フヒッ、ボーとしてていいのあなた達? あそこにいる子達はあなた達と違って第一の試練をクリアしたわ。あなた達と違って』
「「「な、なんだと……!?」」」
『フヒッ、今どんな気持ち? ここにいるほとんどの人間が自分よりも年下の子達がクリアしたことが出来なかったんだけどどんな気持ち?』
サラが先ほどまで石像だった人たちを煽り始めたんだけど!?
『こ、この試練では正確に言えば聖剣を持たないパーティーは次の試練へと進めないの。後は、分かるわね?』
「「「その聖剣寄こせやーーー!!」」」
うおいっ!?
全員漏れなく殺気立ってこっちを睨んでるんだけど!?
さすがに全員が僕らに対してこの態度なのは明らかにおかしいので、サラが何かしら精神干渉でもしたからなんだろうけど、石像から解放してあげたというのにこれは酷い。
『いくら何でも恩知らずすぎるのです! もう撃っちゃっても良くないのです?』
「それは勘弁してくれ。さすがにあれは魔女に嫉妬心を煽られたせいだと思いたい」
〔
『仕方ないのです。それならとにかく急ぐのですよ。〈
攻撃することを諦めたアヤメが素早く水鉄砲の【典正装備】から懐中時計、〔
たった数秒だけとはいえ、倍の速さでの移動はわずかではあるけど追跡者達から少し距離を離せたように見える。
〔
「リヴィーーーー!!!!!」
そう思えたのは一瞬だけだった。
「パティか。お前のユニークスキル、[トリックオアトリート]なら余裕で私達に追いつけるだろうな」
「あんたのその上からの態度が気に入らないのよ!」
いや、何のスキルか分からないけど、かなり距離が離れていたはずなのにもう背後にいるとかいくら何でも速すぎない?!
「スキル名から、単純にスピードを強化するスキルってわけではなさそうだけど……」
「鹿島先輩の言う通りだ。[トリックオアトリート]は触れた対象に
相手次第で自分へのバフか相手へのデバフか変わるスキルとは変わってるなぁ。
「私達に追いつくだけの速さを得たということは、手当たり次第にそのスキルを使ったな」
「だから何? あんたを
パトリシアさんの後ろから僕らを追いかけている人達は明らかに行動が遅くなっている集団もいれば、すでに息が切れている者達も大勢いた。
パトリシアさんのスキルの詳細を知らなければ、いきなり[トリックオアトリート]とか言われても何も言い返せずに5秒経ってしまいそうであることを考えると、あの人達はほぼ全員がデバフを食らって遅くなってしまっているんだろう。
『結果的にワタシ達の援護になっているのです?』
「視野が狭くなっちゃったんだなぁ」
お陰で助かってるからいいけど。
「さっきの試練であんたはうちの邪魔をして!」
「は? ああ、なるほど。あの試練で私が試練の相手になったのか? だが私はあの3人に嫉妬されるほど関わってはいないと考えると、パティが私に……? 何故だ?」
「分からないの? 常にうちの上に居続けるあんたに嫉妬しないわけないでしょうが!」
「別に何でもかんでも私の方が出来ていたわけではないだろうが。戦闘面では確かに私の方が上である自覚はあるが、それはお前よりも誕生日が早く、先にダンジョンに入ってレベル上げが出来ていたからだ。
言っておくが私だってお前の器用さに嫉妬しているし、鹿島先輩がいなかったら間違いなくさっきの試練の相手はお前だったと断言できるぞ」
「はあ? でも結局ソウタの嫉妬を超えるほどのものじゃなかったくせに何言ってるのよ!」
「鹿島先輩ほどの嫉妬とか普通の人間にできるか! だいたい貴様は――」
2人の関係がどんな関係だったかは傍から聞いている僕らではよく分からないけど、こんな場でなければ子供みたいな言い争いをし始めた2人を見ていると、喧嘩するほど仲が良いと言えそうではある。
たださり気に僕をディスるのは勘弁してください。
「うちがいきなり最初の試練で失敗したんだから、リヴィにこの先の試練がクリアできるわけない。
これ以上あんたをこの先には進ませないわ!」
「有難迷惑だ!」
なんか嫉妬というより、幼なじみが心配でこれ以上進ませたくないだけのような感じになってるんだけど、これ気のせいでもなんでもないよね?
とりあえずこの試練、パトリシアさんさえどうにかできればなんとかクリアできそうかな。
少し不安が晴れると、途端に他の事が気になり始めた。
外では
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