第11話 新たな三馬鹿
≪乃亜SIDE≫
「は! 今先輩がある意味でとんでもない目に遭ってる気配が……」
「どこから電波を受信してますの?」
先輩限定の第六感が囁いたんです。ああ、先輩は今どこにいるんですか……。
「しっかりしてくださいまし。わたくし大して戦えないのですから、敵が出てきたらピンチなんですのよ?」
「自分で戦力にならないって言いきっちゃいますか」
「事実ですもの。パーティーメンバーがいなければ、わたくし鞭を振るって牽制するくらいしか出来る事ありませんのよ」
お嬢様口調の
わたしと同じで校長から招待された留学生です。
支配下に置いている男性の能力を向上させるユニークスキル、[女王の号令]を持っているけれど、
わたし同様パーティーメンバーとバラバラになってしまっているため、そのスキルは使えない。
そんな状況で1人この迷宮に放り込まれたせいで、わたしと出会う時まで今と違ってかなりビクビクしていました。
「死んじゃうわ……。わたし1人で寂しくむごったらしく殺されるんだわ……」
「あの……」
「ひぃ!? って、乃亜さん! よ、良かったわ。他の人と合流出来たわ!」
声をかけたらかなり驚かれましたけど、もう素が全面に出てて繕う余裕もなかったんですから当然ですよね。
それはさておき、彩羽さん同様わたしもパーティーメンバー、特に先輩と早く合流したいと思っていますが、今のところ先輩達はおろか他の人も見かけません。
まだこの迷宮を探索し始めたばかりなのもあるかもしれませんが、それに加えてこの迷宮がおそらくかなり広いのでしょう。
「先輩は彩羽さん以上に戦えませんから急いで合流したいのに……!」
「鹿島さんはわたくし以上に戦えないのですから、その気持ちは分からなくはないですわ。ただ急いては事を仕損じると言いますし、落ち着いて行動した方がよろしいかと」
「分かっています。とりあえず適当に歩いたところでスキルを使いますので、その間見張りをお願いします」
「分かりましたわ」
ちょっと広めな空間で見通しの良さそうな所に来たので、早速スキル[シーン回想]を使用する。
わたしや関係者限定ですがその場で起きた過去の出来事を見る事出来るスキルです。
正直ダンジョンで使う機会はほぼないだろうと思っていたスキルを、こんな形で使う日が来ることになるとは思いもよりませんでした。
「……あっ」
「どうしたのかしら? 誰か知り合いを見つけましたの?」
「先輩ではありませんでしたが、生徒会長の矢沢さんと彩羽さんのパーティーメンバーがあちらに向かって歩いて行ってるのが見えました」
「そうなんですの! それでしたらすぐに合流しましょう。人数が多い方が安全も増しますし、鹿島さんを探すのに人手が多い方がいいでしょうから」
「そうですね。それじゃあ行きましょう」
[シーン回想]を使ってる間はほぼ無防備なので、楯になって守ってくれる人がいると助かりますからね。
[シーン回想]で見えた方向へ歩いていくと、こんな場所で歌声が聞こえてきました。
間違いなく矢沢さんでしょう。
「歌っていると言う事はおそらく敵と戦っているはずです。急ぎましょう!」
「ええ、分かりましたわ」
この入り組んだ迷宮のせいで歌が反響するため明確な位置は分かりませんでしたが、時々[シーン回想]で向かった方向を確認することで、ようやく矢沢さん達のいる場所へとたどり着きました。
『~♪』
「世界一可愛いめ・ぐ・み!」
「お嬢より可愛いめ・ぐ・み!」
「下僕にして欲しいめ・ぐ・み!」
………うわぁ。
ミノタウロスを相手に戦いながら、ドン引く様な掛け声を出している首輪を着けている執事の男達。
Uターンしたくなりましたが、そんな訳にはいかないので仕方なく加勢しようと動こうとしたら、その前に地面に鞭を叩く音が周囲に響きました。
「あ、あんた達ーーーーー!!!!」
「「「げぇ、お嬢!!?」」」
「[女王の号令]! 〝目前の敵に特攻しなさい!〟」
「「「あーーーー!!!」」」
「ふん、ちょうどいい罰ですわ」
ミノタウロスが振りかぶる
罰にしては厳しすぎません?
「高宮さんに不川さん。来てくれて助かったよ。自分達だけじゃ遭遇したこのミノタウロスを倒しきれそうになかったからね」
「へ……?」
Aランクの魔物相当の力を持つ【
「あの執事の人達、実は凄く強いんですか?」
「いくらあの変態共でも、わたくしの力込みでBランクの魔物に大苦戦する力しかありませんわよ?」
「え、それっておかしくないですか? それじゃあまるであの【
「「「お嬢のおかげでさっきよりマシですが、我々3人だけではキツイです!」」」
執事の3人がミノタウロスの攻撃を避けたり攻撃を加えながら、器用に3人同時にこちらに訴えてきました。
「あ、すいません。すぐに加勢します!」
考えるのは後にして、今は目の前の敵を何とかしないとですね。
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