第19話 こんな勝ち方でもいいですか?
『今度こそ当てるでござるよ! 肉弾戦車!!』
「剣で戦えよ!」
男との戦いはありえないほど苦戦を強いられた。
男は戦いなれていないせいか、さっきまでは剣で攻撃しようと何度も突撃してきたけど、剣を振り下ろすタイミングが合わずに素通りしてばかりだったんだ。
そんな攻撃後の隙だらけな状態をオリヴィアさんが見逃すはずもなく、何度も聖剣で攻撃していたのだけど、男が傷つくたびに男が持つ鞘が光って傷を治してしまうため倒しきれずにいた。
そのためまずは男の持つ剣の鞘を奪い取る必要があると判断したんだけど、その判断が遅かった。
男が剣での攻撃を諦めて、攻撃手段をタックルだけにしたせいだ。
「剣で攻撃してくれば隙だらけだったというのに……!」
『いくら拙者がインドア派でも、ここまでボコボコにやられたら戦い方を変えるでござる』
持ってる剣はもはや邪魔だと判断したのか、剣を鞘にしまった男はひたすらタックルでオリヴィアさんに攻撃してくる。
冗談みたいな攻撃だけど、シンプルがゆえに厄介だ。
『動けるデブとは拙者の事でござるよ!』
『魔女の力で強化されてるだけなのに調子に乗り過ぎなのです!』
『うはっ。羨ましいでござるか? その嫉妬が拙者を強くするのでドンドン羨ましがって欲しいでござるよ!』
しかも口撃によって無駄に巧みにこちらの嫉妬心を煽って強化し続けるのだから厄介だ。
幸いにも僕にスマホを見せびらかした時ほどではないものの、徐々にその速さを増しており、今はアヤメが【ドッペルゲンガー】の時のようにオリヴィアさんに男の行動予測を伝える事でかわすことが出来ている。
けれどドンドン男が強化され続けていったら、予測が間に合わずにいずれ被弾してしまうだろう。
『さあいい加減拙者の攻撃を受けるがいいでござるよ!』
『そっちこそいい加減にするのです。〈
男の言動や行動にイラついたのか、ついにキレたアヤメが容赦なく〔
『せ、拙者、水も滴るいい男になってしまうでござる~~~!!』
『ちっ、うぜえのです。それに本来なら鎧ごと真っ二つになるはずなのに肉体は無事なのです』
アヤメの発言はどうかと思うけど今は置いておこう。
それよりもこの試練のルールのせいで男の身体に傷1つないことだ。
ただ代わりに鎧は上半身だけだけど破壊できているから無意味ではない。
『聖剣以外の武器では攻撃が効かないという話じゃったが、それはあくまでも中身の方だけだったようだの』
「なら僕らは鎧を破壊するために動く、と言いたいところだけどオリヴィアさん以外でまともな攻撃手段がアヤメの〔
[助っ人召喚]を使うという手もあるけど、あれは[動画視聴]で召喚回数増やすのを含めても1日2回しかなく、この先何があるか分からない以上温存しておきたいところだ。
「こうなったら仕方ない」
「鹿島先輩何故!?」
オリヴィアさんが
「[画面の向こう側]で避難していればやられる心配はないのだぞ! それに鹿島先輩がやられてしまえばバフがなくなって全滅してしまう」
「確かに危険だけど、変に時間をかければあの男が強化されていくだけだから。それに僕だって何の対策もなしに出てきたわけじゃないから安心して」
[カジノ]の景品で京都の
〔替玉の数珠〕:数珠が全て壊れるまでダメージを肩代わりする。
とはいえ、まともに攻撃をくらえば一撃くらいなら問題ないだろうけど、その後が問題なのでダメージは食らいたくはないかな。
もっとメダルがあれば良かったんだけど、少し前に[衣装ガチャ]のコインに交換するというのは必要経費だったから仕方がない。
『フレンドに攻撃するのは気が引けますが、最近キャラも装備も完凸していないフレンドでござるから構わないでござる』
……殺す!!!
『ご、ご主人さまの殺気が凄まじいのです……!』
『落ち着くのだ主よ。怒りに身を任せて冷静さを失い、変に嫉妬すると余計にあの者を強化することになるぞ』
アヤメがシロが何か言っているけれど、僕にはもう何を言っているのか認識できていなかった。
僕がやるべき事。
それは先ほどまで「やっぱり使うの止めようかなぁ」と思っていた
『グッバイフォーエバーでござるよフレンド!』
メチャクチャムカつくどや顔でショルダータックルしてくる男に対し、僕はアヤメから男の行動予測を伝えられることで、なんとか避けることができた。
お陰で攻撃をかすめる程度で済み無事だ。
だけどかすめるだけでもダメージが大きかったようで、〔替玉の数珠〕がメダル100枚分ほど破損してしまう。
しかしあちらが攻撃をかすめたということは、向こうも僕の攻撃範囲に入ったということ。
僕をなめきった事、後悔するといい。
『ぬ、ぬあ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!』
男は僕とすれ違った直後、膝から崩れ落ちて体を丸めて倒れてしまう。
『な、なんで!? 聖剣以外の攻撃でダメージなんて受けないのにどうして倒れているの?!』
サラがそんなバカなといった表情で目を見開いており、他のみんなもどうして僕とすれ違っただけで男が倒れているのか理解できずに困惑していた。
それはそうだろう。
ここにいる魔女であるサラ、オリヴィアさん、アヤメ、シロでは未来永劫本当の意味で理解出来るはずもない。
『フーー』
『フ?』
体を丸めながら絞り出した聴き取りづらいか細い声にサラが反応して聞き返すと、再び男は苦しそうな声で呟いた。
『フル◯ッキだお……!』
『は?』
僕の手には先ほどまで持っていなかった毛がピンク色の毛筆。
そう。僕が使ったのは【典正装備】、〔
「僕の〔
『まさか相手を瞬間的に発情させる効果!?
いえ、でもそれだけでこんな動けなくなるはずがないわ。
発情しているならそっちの女やわたしに襲いかかってきてもおかしくないのに』
「下半身の鎧が壊れてたらそうなってたかもしれないね」
限界まで張り詰めた局部を無理矢理鎧で押さえつけているんだ。
そこから発生する痛みはあくまでも
そしてそれは想像を絶する痛みに襲われて動くこともままならないだろうけど、女の君では理解できるはずもない。
この痛みが分かるのは男性だけなのだから。
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