第18話 こんなのが敵か……
目の前の男がソシャゲのフレンドだったと何でもっと早く気づけれなかったんだろうか?
まあその辺はどうでもいいとして、問題はあの男なんだけど……戦えるんだろうか?
「とてもじゃないけど剣を振って戦えるようには見えないな」
『拙者の見た目で判断したら痛い目を見るでござるよ!
さあ始まるざますよ、いくでがんす、フンガー』
「なんか変な事言い始めた!?」
『これがジェネレーションギャップ……!』
オタクっぽい見た目からして、おそらく何年か前にやったであろう100年前のアニメの再放送か漫画のネタなんだろうけど古すぎて分からなかった。
僕が理解していないことにショックを受けながらも、男はオリヴィアさんに向かって攻撃を仕掛けてくる。
『ぬはー!』
「気が抜ける気合の声だ、なっ!」
『ぬおっ!?』
オリヴィアさんは男が振り下ろす剣を易々と受け止める、どころか弾き返してしまっていた。
なんか相手が弱すぎないだろうか?
「ん? この程度なのか?」
『せ、拙者まだまだ本気を出していないでござるよ! というか魔女殿、どうなっているでござるか!?
全然体に力が入らないでござるよ!?』
明らかに見栄を張っている男は慌てた様子でサラの方へと視線を向けると、サラも困った様子で男を見ていた。
『こ、これは予想外ね。こういう試練に挑戦する人間は、大抵自分と同じように戦闘力があって自分よりも強い人間に対して嫉妬するのに、まさかこんなにも脆弱な人間に対して嫉妬しているだなんて』
僕だって嫉妬している相手が誰かなんて分かっていなかったんだから仕方なくない?
『とはいえ、それで試練を簡単にクリアできると思ったら大間違いよ』
なに? 正直オリヴィアさん1人でも余裕で勝てそうなこの状況で一体何をする気なんだ?
『“嫉妬”の魔女であるわたしがどんな風に嫉妬されているか見抜けないわけないでしょ。……なるほど、ソシャゲでキャラと装備を完凸できていることに嫉妬していると。
入口でもガチャとかなんとか言っていたから分かっていた事とはいえ、もっと別の事に嫉妬しなさいよ』
「なんで嫉妬する内容を指示されないといけないんだ」
しかし嫉妬している内容が分かったからなんだと言うんだろうか?
『あなた、スマホを取り出して自分の成果を思う存分見せつけてやりなさい』
『分かったでござるよ!』
は?
『いや~今回のイベントもイベ限キャラで50%強化、加えて装備完凸が5つもあるからシナリオもイベ限アイテム収集もすさまじく捗るでござるよ!』
「何を言っているんだあいつは?」
オリヴィアさんは首を傾げていて、スマホのとあるゲームの画面を見せつけてくるあの男が何を言っているのか分からない様子だったけど、僕はそれを解説してあげる事ができなかった。
「ガ、ガチャ~……!」
『ご主人さま、【Sくん】の波動が漏れているのですよ!?』
くそぅ、以前なら僕だって同じようにガチャを回しまくってそのくらい余裕でそろえていたのに、今じゃ装備1つ手に入れるのも苦労しているんだぞ!
なんて
『むほー! キタキタキターーー!! 力が漲ってきたでござるよ!!』
男はそう言うと再びオリヴィアさんに襲い掛かってきた。
先ほどとは比較にもならない速さで。
「くっ!?」
『ぬあっ!? あまりにも強化されすぎて素通りしてしまったでござるよ!?』
オリヴィアさんが慌てて聖剣で防御しようとしたけれどその必要はなかった。
男は強化された体に慣れなかったせいか、攻撃するタイミングを逃してオリヴィアさんの背後でつんのめっていて、こけないように慌てて腕を振っていたから。
「なっ、なんだこいつ!? さっきとは段違いに速くなっているぞ!?」
『フヒッ、驚いた? この試練ではあなた達がこの男に嫉妬すればするぼどこの男が強化されていく仕組みなの。
結界を通られたのには驚いたけど、今度はその嫉妬心が仇となったようね。
己の嫉妬に絶望するがいいわ!』
やはりというか、男がすさまじく強化された原因はサラに言われなくても予想できていた。
“嫉妬”の魔女なんだから、他の魔女達同様に“嫉妬”が試練に絡んでくるのは当然か。
「ごめん、完全に僕のせいだ」
『でしょうね! 弱かったさっきまでの内にとっとと倒しておくべきだったのです!』
『娘よ。今更そんな事を言っても仕方なかろう。それよりもこれ以上強化されない内に早く倒すべきじゃ!』
「ああそうだな。出し惜しみはしない。〈
オリヴィアさんはウサギを模したワッペン、〔
敵がありえないくらい強化されている、しかもその巨体からは想像もできない速さで突っ込んでくることに脅威を感じているからだろう。
メタボディに金属の鎧を纏っているせいで、まるでドデカい大砲の玉が飛んできているようなものなのだから。
『うひょ! うさ耳メイドでござるか!? 属性盛りまくってるでござるが、拙者そういうの嫌いじゃないでござるよ!』
……どこぞの性癖三銃士を彷彿するセリフだ。
こんなのが敵で脅威になるとか、ある意味最悪の試練だなぁ。
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