第14話 文化祭・1日目(1)


 あのラッキースケベの後、恥ずかし気な乃亜達と別れ自分の教室へと移動した。


 最近実害がなかったからあまり気にならなかったけれど、僕のデメリットスキル同様、乃亜のデメリットスキルである[ゲームシステム・エロゲ]のデメリットをなんとかしないといけないとさっきのラッキースケベで再認識したよ。


 あ~誰もいない場所で良かった。

 もし教室であんな事が起こったら、昨日の二の舞を演じる事になっていたよ。


「おっす蒼汰。ようやく来たな」

「昨日の今日でよくもまあ平然と声をかけられるよね」


 昨日追い掛け回していた怒りはどこに消えたんだと言いたいよ。


「健全な男子なら一晩で怒りを鎮め賢者になれるからな」

「それ以上はいけない」


 教室で言う事じゃないよ。


「大樹は明日の午後が当番だったよね?」

「おうそうだぜ。蒼汰は今日の昼だよな」

「ちょうどお昼の時間だから来る人は少なそうだけど、早めに昼食を済ませておかないといけないのが面倒かな」

「ははっ、微妙に嫌な時間の担当になったな」

「……あのクジ、本当に公平なものだったの?」

「多分な。オレは知らねえ」


 そう言うなら大樹は何もしてないね。

 あれがもし仕組まれたもので大樹が関わっていたら、「日頃の恨みを込めてな!」って爽やかに言ってくるだろうし。


 まあ今更決まった事にグチグチ言っても仕方がないし、どの道どこかの時間は担当しなければならないのだから気にするだけ無駄か。


 そんな事よりも、今日と明日は乃亜達と目一杯この文化祭を楽しまないとね。


 ◆


 9時になり文化祭の開催を告げる校内放送と音楽が流れてきた。

 それと同時に外部からのお客さんも入ってきて、いつもとは学校内が違う賑わいを見せ始める。


「ねえソウタ。日本の文化祭なんて初めてだから一緒に回ってくれないかな?」


 さて乃亜達と合流するために移動しようとしたところでソフィアさんに話しかけられた。

 昨日オリヴィアさんに外国から勧誘のために来たと聞いているので少しドキッとしてしまったけれど、オリヴィアさんのように直接何かを言ってきたわけではないから、今は気にしないことにしよう。


 あ、そうだ。さっきのエッチなハプニングで忘れかけていたけど、ソフィアさんに[チーム編成]の件で謝らないといけなかったんだ。

 とりあえず文化祭は乃亜達と回るからそれを断らないと。


「あ、ごめんソフィアさん。実はもう予定があって一緒には回れないんだ」

「そうなの? 少しの時間もダメかな?」

「そうだね。先日ソフィアさんとダンジョンで会った時に一緒にいた子と文化祭を回る事になってるからさ」

「ああそう言えばあの子達3人共彼女だっけ。なら仕方ないね」


 納得したようにソフィアさんは頷きあっさりと諦めてくれた。

 勧誘目的で来たと聞いていたけれど、あまり無理やり接触してこようとしないみたいだ。

 昨日押し倒そうとはしてきたから、2人きりになるのだけはマズそうだけど。


「うん。それと昨日のこと、というか――」

「忘れて」


 コスプレさせた[チーム編成]のことなんだけど、と言おうとしたのを遮られてしまった。


「あれは勢い余ったというか、あまりにも女として見られていないことが悔しくて暴走しただけだから忘れて」


 僕が昨日のことと言ってしまったから、屋上で押し倒されそうになった件を弁解されてしまったよ。

 ばつの悪そうな顔で僕の顔を見ない様に横を向いていて、できればこの話題はあまり触れてほしくないようである。


「あ、うん分かったよ。それよりも僕のスキルの件について言いたい事があるんだ」

「あっさり納得されるのもそれはそれで納得できないけど、忘れてくれるならいいや。それでスキルの件って?」

「実はその事で謝らないといけないことがあって、ソフィアさんをコスプレさせた僕の[チーム編成]のスキルなんだけど、このスキルはパーティーを組んだ相手の所持しているスキルを知る事ができるんだ」

「なんだって? つまりソウタはワタシのスキルを知ったの……」


 ソフィアさんの雰囲気が変わった。

 まあ誰だって自分のスキルを勝手に知られたと思えば、いい気分ではないから当然かもしれないけど。


「いや知らないよ。あくまで調べる事ができるだけであって、勝手に知れるものじゃないんだ。

 ただその能力があるのを忘れていて、それを言わずに[チーム編成]のスキルを使ったから謝りたくて」

「そう……」


 ソフィアさんはそう言いながら、両手で僕の頭を挟むように押さえてきた。


「……本当にワタシがどんなスキルか知らないみたいだね」

「信じてくれるんだ」


 ソフィアさんは納得してくれたのか息を軽く吐いて僕の頭を押さえていた手を離してくれた。


「ああ。だってワタシのスキルを知っていて、たとえダンジョンの外で使われることはないと分かっていても、怯えもせずに大人しく頭を差し出したりしないから」

「え゛っ……。い、一体どんなスキルなの?」

「もちろん秘密だよ。でも今後なっていったら教えてあげるかもね」


 何だか急に怖くなってきたよ。

 仲良くの意味がなんだか意味深だし。


「それよりも行かなくていいのかな?」

「あ、うん。それじゃあお昼にまた」

「ああ。またね」


 僕はソフィアさんに見送られながら、自身の教室を後にした。

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