第46話 エンカウント
僕らは必死にバリケードの前を守り続けた。
1時間戦闘して、30分休憩を繰り返すこと8回。
1時間戦闘と言うとかなりしんどいように思えるけど、まともに戦ってる時間は休憩から戻って来て戦い始める最初の10~15分程度で、後は通常のスケルトンよりも強い個体が出た時だけ注意すればいいから、それほどみんなの疲労は激しくなさそうだった。
少し意外に思ったのは、時間が経過するにつれて通常のスケルトンに混ざって、ドンドン強い個体の種類も来る頻度も増えるのかと思ったのだけれど、今日の最初の戦闘の時とさほど変わらない相手しか来ないのはいい意味で予想外だ。
誰かが強い個体を率先して間引いているか、引き寄せているかしているのかもしれない。
そうでなければ僕らのような初参加で経験の浅い冒険者ではどうにもならないだろうから、あながち間違いじゃないと思う。
もしかしたら国に実力を見込まれて参加を要請された冒険者がいたりするのかも。
現に朝に現れた【
僕らのように自ら参加したんじゃなくて、国から直接雇われたのであれば能力を把握されているだろうし。
『そう考えると今後これ以上戦場に変化はないのかな?』
僕は休憩後いつもの戦法に持ち込めて余裕が出来たので、スキルで出したスマホを操作し続けながら自分の考えをみんなに話してみる。
『出来ればそうだといいわね。でも、変化がないと肉体的には疲労してなくても同じことの繰り返しだから、精神的には疲れてきたわ』
『それも後少しだよ。例年通りならあと3時間くらいだよね?』
『そうですね。今15時前くらいなので大体そのくらいでしょうか?』
『……でも、いつもと違うならもっと長引いたりしないかな?』
『咲夜先輩の言う通り、その可能性は十分あり得そうですね』
『乃亜さんは何か親御さんからその辺の話って聞いてないのかしら?』
『さすがに10年前のことまでは聞いてないですね』
10年前となると乃亜は6歳くらいだろうから、仮に当時聞いてても覚えてないだろうし仕方ないんじゃないかな?
『まあ、覚悟はしておこう。初めから今日の夜までかかると思ってたら幾分か楽だよ』
『逆にウンザリして疲れるわよ。いざそうなったら、心構えが出来てるから楽と言えば楽かもしれないけれど』
そんな風に、いつこの
「蒼汰!!」
「何?」
急に大樹に大声で名前を呼ばれたのでそちらを向くと、慌てた表情でこちらに駆け寄ってきた。
「気を付けろ蒼汰。なんかおかしい」
「えっ、何が?」
抽象的すぎて何がどうおかしいのかが全く伝わってこない。
僕は周囲を観察してみるけど、先ほどまでと特に変化はないように見える。
「あのスケルトン達をよく見ろ蒼汰」
「ん?」
そう言われて指で示された方を見るけど、そこには槍を持ったスケルトン達がこちらに向かって歩いてきているだけで今までと何も変化が無いように見える。
「あれの何がおかしいのさ?」
「槍を持ってるの
戦斧持ちや陰陽師リッチは前と変わらず斧と杖だけだったけど、他のスケルトンは剣か槍のどちらかを持っていた。
だけど今は剣を持っている個体は1体も見当たらず、槍を持ったのが粛々とこちらに向かって来ているだけだった。
「徐々に少なくなってくからオレも中々気づけなかったが、ここまであからさまに武器が統一されてたらさすがに気づく」
「でもなんで槍だけを持つようになったんだろ?」
「それは……分からねえが、こいつらをまとめる存在がどこかにいるのは間違いねえ」
「えっ?!」
スケルトンに思わず視線を向けるけど今もただ前進してくるだけで、何も指示など受けている様子は見えない。
本当にこれらを指揮する存在がいるんだろうか?
「こっちには来ねえかもしれねえが、今までの個体と違って強力なのが奇襲に来ると想定して――」
『ふふっ。その様に警戒せずとも奇襲などと無粋な事などせず、挨拶くらいいたしますよ』
突如スケルトン達が一斉にその動きを止め、その群れの中から現れた存在が感心したように声を漏らした。
「誰だ!?」
大樹が声の主の方へとその手に持つ大剣を構えながら問いかけると、それはゆったりとした動作で口元に手を当てて嬉しそうに笑っていた。
その存在が目に入った瞬間、それがなんなのか僕らは理解した。
『お初にお目にかかります皆様。私は長尾為景の娘にして、かつては川中島にて5回も信玄と合戦を繰り広げた、軍神や越後の龍などと称される――』
う、噓でしょ……?
『上杉謙信にございます』
なんでここに【
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます