第41話 例のあいつ
――ウーウーウーウー!
「……んっ! な、なに?」
寝ていた僕は突然のサイレン音に叩き起こされ、訳も分からないまま布団から慌てて体を起こした。
『緊急連絡。緊急連絡。バリケードが2つ破られました。至急集合地点へとお集まりください。繰り返します――』
は?
…………あ、乃亜が言っていた緊急連絡か!
寝起きで頭が回っていなかったけど、バリケードが2つ破られた事を認識して一気に目が覚めた。
ヤバい、急いで準備しないと!
僕はすぐに着替えていつもの装備を身に着けると、すぐに部屋を出た。
「あっ、先輩。大変なことになったようですね」
部屋を出ると乃亜が同じタイミングで部屋から出て来た。
「……おはよ」
少し遅れて咲夜も出て来た。
…………ん?
「冬乃は? まさかまだ寝てるとか?」
僕は冬乃がいる部屋へと視線を向けるけど、その扉はまだ開く様子はなかった。
「さすがにこの騒音で寝てはいられないでしょうけど……。冬乃先輩、起きてますか!」
「ちょっと……待って」
乃亜がドアを叩きながら問いかけると中から眠そうな弱弱し気な冬乃の声が聞こえてきた。
「ごめん、遅くなったわ……」
「冬乃先輩、大丈夫ですか?」
「凄く、眠そう」
2人の言う通り、冬乃は体をフラフラさせながら部屋から出てきて、目も半分閉じかかっている。
戦えるんだろうか、こんな状態で?
「ふあ~、寝起きだもの仕方ないわ。しばらくすれば目を覚ますから大丈夫よ……」
「今3時だから、4時間ほどしか寝れてないのもその眠気の原因だろうけどね」
僕だって少し眠いし。
「とりあえず眠気覚ましにこれでも噛んどく?」
僕はそう言いながら[フレンドガチャ]で出た、眠気スッキリと書いてあるガムを取り出して渡す。
「何、これ?」
「食べたことない? 味は酷いけど、スッとするから眠気が覚めるガム」
「へぇ、丁度いいじゃない。貰うわ……」
「2人はいる?」
「あ、それではいただきます」
「咲夜はいい。前に食べたけど頭がツンっとするから好きじゃない」
咲夜は首を横に振って断ったので、僕ら3人だけ食べることにした。
「っ、ちょっ、何よこれ!?」
冬乃が思わず口に手を当ててジタバタしていた。
眠気がとれたようで何より。
この味は目が覚めるよね~。
「はい、ティッシュ」
あんまりにもジタバタしていて吐き出したそうにしてたので、[フレンドガチャ]からポケットティッシュを出して渡すと、冬乃が無言でそれを受け取って僕らに背を向けてガムをティッシュに吐き出していた。
「うぇ~、何この味……」
「言ったじゃん。味は酷いけど目は覚めるって」
「ここまで酷いと思わなかったのよ。口直しに何か頂戴よ」
「後でね。早く集合地点に行かないといけないから」
僕は今も繰り返し流れる緊急連絡を指すように人差し指で天井を指さすと、冬乃はため息をついて頷いた。
「もう、分かったわよ。それにしてもあんた達はよく平気な顔して、そんなの食ってられるわね」
「慣れてるから」
「そういうものだと思えば案外食べられますよ」
「慣れる気がしないわ」
「咲夜も同意」
眠気が完全に覚めた僕らは、ユニットハウスを出て急いで集合地点へと向かった。
しかし僕らが休息していた22時から3時までのたった5時間で何があったというんだか。
◆
初日と同じように白鷺三尉がステージのような場所に立っているが、その時よりも深刻そうな顔をしていた。
『冒険者の諸君。今年は異例の事態となった。
本来であればバリケードが1つも落とされることなく
さらに最悪な事に先ほど2つ目のバリケードまで破られた箇所に例の存在が出現してしまった』
拡声器ごしに聞こえてきたのは不穏な話だった。
例のって、このダンジョンが攻略不可能ダンジョンであることを考えるとまさか……。
『そう、【
まじですか。
そりゃそんなのが出てきたら、仮に1時間しか経ってなくても2つくらいバリケード突破されてもおかしくないか。
『冒険者の諸君には十分な休養を取ってもらいたかったが、異常事態につき緊急招集させてもらった。
そしてこれからの戦いは戦闘時間は前と変わらず1時間だが、間の休憩時間を30分として多くの冒険者が参戦できる状態を作りたい。
申し訳ないがこの地から魔物が他の地へと流れないようにするためにも、協力をお願いしたい。
また、こちらが指示した冒険者には【
【
『やっぱりわたし達、そっちに行かなきゃいけなくなるんですかね?』
『それは勘弁して欲しいわ。まあ前と違って、周囲の助太刀に期待できる分マシだけど』
『……そんなに大変だったの?』
僕らは〔絆の指輪〕を使ってコソコソ会話しながら、出来ればそっちに配属して欲しくないなと願った。
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