幕間 赤ちゃん~幼少期編
『今日は1日大変だった……』
昼休みに色々あったけど、なんとか学校が終わってアパートに帰ってきた僕は、畳に突っ伏して寝ていた。
ホント疲れた……。
あの後、トイレに行きたくなった時は大変だったな。
既に世話をしてもらった事のある冬乃に頼むか、大樹達に頼むかの究極の2択に迫られる事になるなんて。
結局冬乃に世話して貰ったんだけどさ。
「なんか我慢してそうな顔してるわね」
の、一言で即座にトイレに連れて行かれたから、選択する暇なかったけど。
すがるような気持ちで大樹達を見たけど、無情にもこう言われた。
「友人の下の世話をするのはちょっと……」
いや、気持ちは分かるよ。
でもさ。それならトイレから戻ってきた後、微妙に羨ましそうな表情しないでくれない?
てか、同級生の女の子に下の世話されたいのかよ、って凄く言いたいよ。
『明日もこんな大変なのか~』
「だったら学校になんて行かないで、乃亜さんのご家族の世話になれば良いじゃない」
乃亜の3人のお母さんの内2人は基本的には専業主婦の上に、乃亜の家は大家族なので家に誰かしらいるらしい。
だから、学校に行かないって選択も出来なくはないんだけど……――
『[ガチャ]のポイント、欲しいし……』
「じゃあ諦めなさいよ」
ちくしょう……!
「大変だったんですね」
「そんな事よりわたしおやつ食べたい!」
秋斗君は同情してくれるけど、夏希ちゃんにはそんな事扱いされてしまった。
いや、そりゃ自分に関係なければどうでもいいって思うかもしれないけどさ。
「こら夏希! 夕飯前におやつなんて食べようとしない!」
「え~。じゃあ早くご飯にしよ!」
「はぁ。この子は全く……」
やんちゃな妹に振り回される姉の図だね。
大変なんだろうけど、一人っ子の僕にはその大変さはよく分からないな~。
賑やかでいいとは思うけど。
その後、昨日と同じようにご飯とお風呂を済ませて就寝。
そんな感じで1日目がようやく終わった。
はぁ。あと1週間かー。………………すやぁ。
――ミシッ
◆
「きゃっ! え、蒼汰?」
「ふぁ、
朝、突然頭上から大きな声が降ってきたので、僕は慌てて体を起こそうとして異変に気付いた。
「喋れてりゅ?」
舌足らずでキチンと発音出来ていないけど、昨日までと違って喋れるようになってるよ。
「あ、
体を見るとまだまだ手足は短いけれど、少なくとも5歳くらいの体に戻ったんじゃないかな?
「ちょっと蒼汰。いくらまだまだ幼い体とはいえ、早く服ぐらい着たら?」
「あっ……」
体が大きくなっていたので感動していたけど、赤ん坊から一気に大きくなったんだから、そりゃ着ていた服は弾け飛ぶよね。
僕はすぐに[フレンドガチャ]から適当な服を取り出して着ると、丁度目が覚めたのか夏希ちゃんと目が合った。
「誰?」
「
「嘘!?」
「んっ……夏希、うるさいって誰!?」
一気に目が覚めたらしい秋斗君にも説明すると、一緒に朝食をとる事にした。
ふっ、哺乳瓶は卒業だぜ!
それに朝食後は1人でトイレにも行けるようになった!!
目覚めてはいけない何かに目覚める前に卒業出来て良かったよ。
……冬乃が若干寂しそうな目で見ていたのには気づかなかった事にしよう。
授乳プレイにハマったとか言い出さない限りは問題ないはずだ。
朝食を終えた僕らは早速学校へと行くと、校門前で挨拶運動だ。
昨日は抱えられた状態で道行く人に挨拶してただけで、校門前で挨拶できなかったから、ポイントが少なかったんだよね。
「おはようございましゅ」
「おは……ん?」
「おはようございましゅ」
「え?」
「おはようございましゅ」
「は?」
挨拶をしていると、誰もがみなこちらを二度見してくるのだけど、やはりこの姿じゃ疑問しかわかないよね。
きっとなんでこんな子供が、こんな所で挨拶なんかしているのだろうと思っているのかな?
「蒼汰、だよな?」
「あ、おはよう大樹、彰人」
「あはは。しばらく赤ちゃんのままかと思ってたら、まさかちょっとずつ成長していくなんてね」
「赤ん坊のままだと大変にゃんだから、
「お前、まさか今度はそのあざとさで女をひっかけようと……!」
「
全くそんな意図はなく、朝起きたらこうなっていただけなのに失礼な奴だな。
それに赤ん坊の時だって遠巻きにしか見てこなかったんだから、何も起こる訳ないじゃないか。
「鹿島がちょっと大きくなってる!」
「あ~ん残念。赤ちゃんの内に抱っこしておけば良かった~」
「まだ戻るのに時間がかかるって言ってたし、様子見してたらこんなに大きくなっちゃうなんて……」
そんな風に思ってたんだけどな……。
「今の内に撫でとこ」
「うわっ、見て見てこの小っちゃい手。やっぱりこんなに幼いと手も小さくて可愛いわね」
「はぁはぁ。あと少し成長してたら襲ってた」
なんかあちらこちら人形のように撫でまわされてるんだけど。
まあ触られるのはいいんだけど、なんか妙に息の荒くてヤバいのが混ざってなかった?
「……俺も少年になりたい」
「アイツが元に戻った時が楽しみだな……。みんなで
「ソウタ、マジ、ユルサン……」
なんで男子も女子もヤバそうなのが1人はいるんだよ、って、大樹じゃないか!?
地獄からのうめき声のような声の主は友人だった。
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